コックリ暗殺③

コックリ「さぁどうする?ワシは飲まず食わずでも死ぬことはないぞ……」


実験室が絶望に包まれる。そんな中、カズヒロはゆっくりとイスに腰かけた。


カズヒロ「でもまぁ、そんな深刻に考える必要もないかー。ここには男と女がいる。つまり子どもをたくさん作って、さらにその子どもたちが子どもを作って……って繰り返していけば、ここが新しい国になるわけだしー」


サエ「何言ってんの〜カズヒロ?そんなわけないじゃ〜ん!」


カズヒロ「オレたちは、この実験室という始まりの世界に生み落とされた、アダムとイブってことさ」


サエ「はぁ〜?マジキモッ!一人で死ぬまでマス掻いてろよ〜!」


言い合いになるカズヒロとサエの横で、トシキは机に頭を打ちつけ始めた。額から大量の血が流れ出る。


トシキ「死ねばいいんだ。それで解決だ。死は救済。死は救済。死は救済」


シゲミ「トシキくん止めて。あと2.5リットル出血すると本当に死ぬよ」


混乱する4人を嘲笑うコックリ。


コックリ「ケーッヘッヘッへッ!たった十数分でこの有様か……思ったよりも早く全員あの世に行きそうだな!ケーーーーッヘッヘッへッへッへッへッ!」


シゲミ「仕方ない。一か八か……油揚げにしてやるぅっ!」


シゲミがスクールバックに手を伸ばす。その時だった。


???「抜かりましたね!シゲミ!」


カズヒロが開けっぱなしにしていた実験室の入口から、円筒形の塊が3つ投げ込まれ、カランッという音を立てて床に落ちた。シゲミはその塊が何か一瞬で把握し、目をつむり、両手で耳を塞ぐ。

塊より0.5秒ほど遅れて何者かが実験室に侵入。カズヒロ、サエ、トシキの首に手刀を見舞い、3人を気絶させた。


直後、塊が大きな破裂音と、カメラのフラッシュの数倍はあろう光を放った。閃光手榴弾だ。


コックリ「ケーーーーッヘッヘッ……な、なんだこ……れ……」


強烈な音と光は、低級霊のコックリを霧散させるには十分なエネルギー量だった。


音と光が止み、絶望に満ちていた実験室に静寂が訪れる。シゲミは目を開け、耳から両手を離した。


???「あなたの暗殺スタイルは無駄な破壊が多過ぎます。だから自分の首を絞めることになるのです」


シゲミ「母上、なぜここに?」


床で気絶する3人を背に、腕組みしながら立つシゲミの母。


シゲミの母「あまりに帰りが遅いので、学校まで様子を見に来ました。そうしたら何ですか、コックリなんかに手間取っているなんて」


シゲミ「母上が来なければ、爆風で吹き飛ばしておしまいだった」


シゲミの母「友達を犠牲にしてね。どんな状況であれ、ターゲット以外を巻き込むなんて3流以下の暗殺者がすることですよ」


シゲミ「はいはい」


シゲミの母「そしてこれからは、C-4だけでなく閃光手榴弾も持ち歩きなさい。そこらの霊を撃退するには、閃光手榴弾で十分。周囲の物を破壊することなく、後処理も簡単」


シゲミ「母上のやり方は甘いのよ。幽霊を建物ごと吹き飛ばし、この世から完全に抹消する。それが私のやり方」


シゲミの母「手段に囚われているようですね。それで目的を達成できず、友達まで危険にさらしているうちは、我が家の跡取りに認定するわけにはいきません」


シゲミ「別にいいよ。それなら家の名前に頼らず、自分の力だけで仕事を受注するから」


シゲミの母「あらそう。とにかく、私は先に帰ります。お友達には、ここで起きたことは全て集団ヒステリーによる幻覚だったとでも伝えなさい。それから、今日の晩ご飯はあなたの大好きなエビフライですよ」


シゲミの母は実験室を後にした。


3人の体をゆすり、目を覚まさせるシゲミ。


カズヒロ「あれー?オレらコックリしてなかったっけー?」


サエ「途中から記憶が……てか首いた〜〜い!」


トシキ「ボクなんか頭から血が出てるし……シゲミちゃん、何か知らないかい?」


シゲミ「別に何も」


<コックリ暗殺-完->

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