第107話 奴隷の国


 ドワルゴン帝都である程度買い物をする。

 王城の方や貴族街は少し離れているのでこちらはいつも通りだ。

 奴隷達に聞いてこちらの奴隷商に行く。

「いらっしゃいませ!どのような奴隷を?」

「貴族から頼まれて」

「はい!分かりまし」

 首を切ると収納して持っているものを探ると違法奴隷の契約書が出てきた。

「…やはりここか」

(貴族用の奴隷商らしいからな)

 中に入って行くと大男や技量の優れた警備の奴らもいたが殺して行く。

 そして奴隷を開放して行くが犯罪奴隷までは面倒見る気はない。

 が一応面談だけやって行く。


「お、おれはどうなってもいいからこいつだけは助けてやってくれ」

「…とりあえず連れて行ってやる。が、何かしたらそれまでだ」

「わかりました!」

「お前名前は?」

「ブルゾです」

「…ブルゾ、犯罪奴隷でダメな奴はいるか?」

「…はい、そこにいる奴らはダメです。性犯罪者と元盗賊です」

「な!おまえ!ふざけるな!ぶち殺すぞ!」

「あいつらの名前は?」

「シャップ、バンズ、コロッテ、メガロ…」

 言って行く名前を確認して売買契約書と照らし合わせる。

「よし、合ってるな。ではこいつらは牢の中だ、で助ける奴はそいつだけか?」

「はい」

 と寝ている少女を見る。

「なら行くぞ」

 後ろで騒いでる奴らの声は聞くに耐え難い罵詈雑言だ。


「ペリアとリズ!2人は死の大地は知っているか?」

「「はい」」

「よし、ではこれを」

「ま、マジックバッグ」

「…これに金貨1000枚と地図が入っている。これでこいつらを全員死の大地まで連れてこい」

「死の大地まで…」

「分かりました!」

「何故そこなんですか?」

 とペリアが効いてくるので、

「そこに国ができてる。くればわかる」

 ペリアの頭を撫でる。

「わ、分かりました!」

 さて、もう一軒奴隷商があったようだがそこはノーマに任せるか。

「6台だ、無事に旅してこい!」

「「はい」」

 後ろに周り、

「ブルゾ!」

「は、はい!」

「お前は殿だ。ちゃんとこの旅を完遂させろ!」

 と剣を渡すと。

「は、はい!命に変えても!」

「よし!」

 6台の馬車はこの街の服屋で服と防具や武器を買い込むと門から出て行った。


 そこまで見届けると、俺はテレポートでセイクリッドに帰る。

「うわぁ!」

「…キン爺か」

「くっ!キン爺かじゃないです!いい加減王として自覚して下さい!」

「ハハッ!まぁいいじゃないか、あ、あと6台のドワルゴンからの馬車が来るから早馬で門兵に伝えといてくれ」

「ふぬぬ!自分で行けばいいでしょ!」

「あ、そうか!」

「いくな!あぁ、頭に血が上りすぎた」

「ヒール」

「回復魔法をかけるな!…はぁ、分かりました、誰かおらぬか?」

 なんだかんだでキン爺はよくやってくれている。


 それから一ヶ月後にドワルゴン帝国から早馬が来たらしいので行ってみる。

「ひ、ひぃ!」

「…なんだ、前のやつか」

「こ、これがドワルゴン王からの書状です」

「ん、…へぇ、二度と過ちは犯さないらしいぞ?」

「は、は、はい!そ、それでは」

 と馬に乗って逃げ出すように帰って行った。


 ノーマやエン達が帰って来て、城下も出来上がり白亜の城と周りを囲む壁ができている。港町の方は漁村といったところでまだまだだな。


 そんな時に早馬で門に8台の馬車が来ているとのことだった。テレポートで行ってみると、

「…ご苦労だったな」

「「「「はい!」」」」

 ペリア達だった。

「…随分と増えたようだが?」

「すいません、途中で盗賊に襲われて倒したら奴隷がいたので連れて来ました」

「そうか、契約書は?」

「ここに」

「…違法奴隷だな、解呪してやる」

「はい!」

 ペリア達が連れて来たのはエルフが5人とドワーフが4人に魔人が3人。いずれも違法奴隷だったので解呪する。

「…帰る当てはあるのか?」

「ありません」

「ふぅ、ならここに住めばいい。入るぞ」

「はい!」

 門を潜り抜けると、

「「「「「え?」」」」」

 みんなが門から入って立ち止まる。

「…俺の国だ。名はセイクリッド」


「ケント様は王様だったのですか?」

 リズが恐る恐る聞く。

「そうだ。皆ご苦労様。ここは盗賊はいない、奴隷はたくさん住んでるがな」

「で、では、私達も」

「あぁ、ここの国民になってもらう」

「あ、あぁ」

 皆涙している。

「ブルゾだったか?立派に殿を務めたみたいだな」

「はい!」

「それでいい、では皆はあの城を目指してこい。そこで待つ」

「「「「「はい」」」」」


 それから10日ほどしてからペリア達は城下町に入ったそうなのでノーマと一緒に迎えに行く。

「ノーマ、ここのルールなんかは頼んだぞ」

「はい!皆先ずはご苦労様、宿に行こうか!」

「ま、待ってください!私達は奴隷です。どうすれば?」

「王よ」

「わかった」

 奴隷は契約を交わして俺の奴隷となる。

「これでお前たちは王の奴隷、ここの国民だ」

「あ、ありがとうございます」

「…気にするな」

「では、まずは疲れを癒せる場所に行くぞ」

「あ、王様これを」

 それは渡したマジックバッグだった。

「それは皆で分けろ。これからの生活のこともあるからな」

「「「「はい」」」」

 と言ってノーマに連れられ宿に向かって行った。

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