第104話 できていく街


「そ、そんなん無理っすよ!」

 ダウンに話をするとそう返ってくる。

「いやお前なら大丈夫だ」

「まだいるでしょ?あっ!グリーさんは?その下なら考えますよ」

「グリーか…それもいいかもな」

「…ならグリーが隊長でダウンが副隊長な!」

「わ、分かったっす」

「俺はグリーを呼んでくるよ」

 とアシュレイは外に出て行った。


「で?実際警ら隊って何するんすか?」

「まぁ、街の警備だな。悪い奴がいれば捕まえて牢屋に入れるとか」

「兵士がやればいいじゃないですか!」

「まだそこまで人はいないのじゃ、今のおまえならやれる」

 とキン爺に言われると、

「えぇ!俺にそんなことできますかね?」

「グリーを連れてきた」

「な、なんなんすか?」

「…グリーを警ら隊の隊長に任命する」

「…は?え?なんなんすか?」

 困惑するグリーに、

「まぁ、そんな難しいことじゃない、悪いことしてる奴がいれば捕まえて牢に入れればいいだけだ」

「それって衛兵ってことですか?」

「まぁ、そうだが、もっと砕けた感じだな。世間に近い存在であって欲しい」

「わ、わかりました!」

 そうだ、衛兵はちょっと堅い感じがするが警ら隊になるともっと自衛的な感じで街に溶け込んでくれるといいな。


 警ら隊員はグリーに任せると言って募集したところ結構な応募があったようで人気職となった。

(まぁ、街の治安を守るのが主だからな)


 そしてグリーと組んでたイサムだが、ミイとスィとパーティーを組んだようで毎日楽しそうに狩りに出かけている。


 最近ではホビット族の奴隷が店を出したらしく、馬車の改造をお願いしている。もちろんそんな面白そうなことにガンツや親方が黙ってることはなく、ホビット族のランドと言う男と共に馬車の改造を覚えている。

 ランドのおかげで宿屋にはシャワーが設置され、女将も喜んでいた。


 どんどん発展していくセイクリッドにノーマが連れてくる住人達。ガンツや親方が指導して街は作られていく。新しく店や家が建っていくのをみると城下街としてふさわしい街並みになってきている。


 外壁もある程度目処が立ってきたのでガンツと話をしていたもう一つの街、港町の計画を実行していく。

 海洋都市から連れてきた奴隷は大体が港町出身なのでそこで船を使い新鮮な魚が食卓に並ぶようになってきた。


「おう、このスルメって奴はなかなか味わい深いですな」

「酒の当てにさいこうだろう?」

「わしらにはなかなかハードな食いもんじゃな」

「だが噛めば噛むほど味が出てくるのぅ」

 とボン婆とオン爺は互いに酒を酌み交わしながらスルメを食べている。


 港町ができるのにそんなに時間はかかっていない。まだいまは漁村だがな。まだ住む人間が少ないのでそこまででかくないが、いまは港を整備しているところだ。


 それと並行して親方達がここにくる途中にまた街を作っているちょうど港町とセイクリッドを直角に結んだくらいのところに作ってくれているので宿場町にはちょうどいいだろう。



 セイクリッドも人が入って来れるようにするにはもう少し時間がかかりそうだな。


 エンとダラーは相変わらず荷物をある程度捌くと商店を営んでいるコビーと言う名の商人に任せて、自分たちはチェスやトランプを積んで出ていく。

 ノーマも一緒だな。

 大体が欠損奴隷を連れてきては俺が治して町民として登録をしている間にニーズを聞いて周りコースを決めて回ってくる。

 流石に護衛は2人ついてもらっている。

 元冒険者のゴイスとラッパだ、自分達はこれしかできないと言って喜んでやっているので大丈夫だろう。


 人が増え物が増え、街も増えたある日、

 ドワルゴン帝国からの使者がやってきた。

 テレポートで門まで行くと横柄な態度だな。

「ここがセイクリッドね?ふん、まぁまぁのもんじゃないか!だが帝国に楯突くとは」

 とドワルゴンからの使者が言っているのが聞こえる。

「…なんのことだ?俺はここの王だが?」

「は?王自ら出てきたのか?なら話が早い、チェスとトランプ、あとリバーシと言うものの製品を作るのをやめてもらおうか?」

 横柄な態度は変わらないか。

「何故だ?発案者は俺だ」

「…このままだと戦争になるぞ?」

「…望むところだ」

「ふ、ふん!わかった!このことは王に伝えるからな!」

「あぁ、こちらもそれ相応の対応をしよう」

(思ったより早かったな) 


 テレポートで城に戻りアシュレイとキン爺に話をする。

「ついに来たか!ここはどうしますか?」

「そうだな、相手の出方を見ようか?」

「俺は門を固めよう」

「…そうだな、だがどちらにせよ進軍してくるとなると魔王国を通ることになるから一言言っておかねばな」

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