第101話 忘れてた


「あとはお前だけだ」

「わ、ワシは男爵だぞ!」

「俺は王だ」

「は!何が王だ!せ…なんとかなんて国は聞いたことがないぞ!」

「…まぁ知名度はないがあるから仕方ないだろ?」

「こっちはラダマン王国の男爵様だぞ!お前なんか死刑だ!大人しくお縄につけ!」

「お縄についてるのはお前の家臣みたいだが?」

「な、なにやってんだよ!しかも足が!お前らどうした!」

「助けろよ!」

「早く俺の足が!」

「足ぃー!」

 止まない声に、

「あ、後で治してやる!それよりこいつだ!」

「はぁ、もういいか」

 アダマンタイトソードを足に刺してからヒールをかける。

「いだあぁぁぁぁぁぁぁい!!」

 もう一本!足に刺すヒールをかける。

「ああアァァァァだどど!」

「ほら、まだあるから」

 ノーマに剣を渡すと、

「はい!この馬鹿が!」

 と腕に刺すのでヒールをかける。

「いっぎぁあぁぁぁぁ!」

 まぁ、刺されたまんまじゃ痛みが回復しないだろうな。

 色んなものを垂れ流しながらこちらを怖がっているので、

 もう一本剣を出してやると失神した。

「さて。まずは欠損してるやつから助けようか」

「は、はい!」

 馬車に行くと今にも死にそうなやつなどがいたのですぐにリジェネレーションを使う。

「ゔぁぁぁぁぁあぁぁ」

「がんばれ!よくなるからな!」

 ノーマは声をかけ続ける。

「あぁ、僕の足が」

「…腕ある」

「よかったな!よかった!」

 ノーマは三台もの馬車で帰ってこようとしていたのか、2台の馬車をそのままにしてきたがみんながなんとかしているだろう。

「助かりました!ありがとうございます!」

「グリー、よく耐えたな!俺は誇りに思うぞ!」

「は、はい!」

 アシュレイに言われ涙を流すグリー。

 さて、どうしてくれようかな?

(悪いことしてそうだし色々と探してみるか)

「…こいつの家を探ってみよう」

「あぁ、こいつやばいことやってそうだからな」

「「はい」」


 と、こんだけ色々やっててバレないもんかね?

「横領に違法奴隷の売買契約書、こいつらの悪事の捻り潰しにって。悪い奴だな」

「…こいつの資産は全部貰ってきたし、奴隷も俺たちについて来るそうだ」

「いまのでメイドや執事たちは逃げちゃいましたし、こいつの家族もここにしょっぴいてきたので」

「んじゃブラックホール」

 屋敷ごと消し去った。

「「「ひ、ヒイィィィィ!!」」」

 家族と盗賊は見ていたので次は自分かと逃げようと芋虫のようにはっている。


「…そろそろ起きろよ?」

「グギャ」

 剣が勿体無いので全て抜いてクリーンをかける。

「ひ、ヒール!ヒール、ヒール!」

「おお、がんばったな!」

 アシュレイが笑うと。

「あ?あ、アシュレイ様?」

「そうだがなにか?」

「な、な、なぜここに?」

「最初からいただろ?」

 て言いながら後ろを指差す。

「へ?ん?なにもないですよ?」

「気づけ馬鹿」

「はい?ん?え?お、俺の屋敷が!」

「「「「あははははは」」」」

 久しぶりに笑えるな。

「な、何笑ってる!笑い事じゃ済まないぞ!」

「あっ!これは取ってきたから大丈夫」

「…ん?ば、ばかな!それは!」

「グリー、早馬頼めるか?」

「はい!王城にですね!」

「頼むな、そのあとは俺らに合流で」

「はい!」

“ザグ”

「ヒール」

「ウギャアァァァァァ」

(ただの鉄の剣があって良かった)


 そこまで王城から遠くないからな。

 馬車があったのでそれを貰って、アシュレイが御者をする。

「…それじゃあせいぜい足掻けよ」

「いぎぃぃぃぃ!」

(ハーゲン男爵は怒りを露わにしていたがどうだろうか?根性出してあの剣を引き抜いてあそこから抜け出せるかな?)


 俺たちはゆっくりと、セイクリッドに帰る。途中で奴隷屋にも寄ってグリーとも合流し、誰も死なずに済んだことに感謝しながら。

「…結構溜め込んでたな」

「どれくらいだ?」

「金貨10万枚はあるぞ」

「な!溜め込みすぎだろ!」


 魔王国でついでに建材を買って、ノーマが奴隷商に顔を出し欠損奴隷を連れて来ると回復させてやる。


 セイクリッドに帰ってきたのは一ヶ月ほど経ってからだった。グリーに先に行ってもらい。俺たちは旅をしながらゆっくりと帰る。


 城が近づくと馬車が猛スピードでこっちに向かって来る。

「早く帰ってこい!馬鹿王!」

「…え?」

 ルビーが涙目だ。

「何があった?」

「奴隷が可哀想でしょ!それに心配してたんだから!」

「悪い今すぐに!」

 アシュレイが飛ばしてくれ、城に着くとすぐに欠損した人達に回復魔法をかける。

「…ふぅ!」

「旦那様!いくらなんでも遅すぎます!」

「…悪かった」

 ルビーも追いついて叩かれるが、まぁ俺が悪いからな。

「…すまなかった」

「もう!馬鹿馬鹿!早く帰ってこい」

「そうです!心配したんですからね」

「…分かった、もうしないよ」

「お前は馬鹿じゃ!テレポートが使えるじゃろ?」

「…使ったことないから忘れてた」

「アヒャヒャ!これだからこの王は!」

「「忘れちゃダメでしょう!!」」

「…悪かった」

(使ってない魔法なんて忘れるだろ?)

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