第99話 魔女王と4人


「…さて行こうか!」

「ど、どこに?」

「あはは、魔王国にチェスを届けにね」

「王自らですか?」

「…だめ?」

「ふぅ、この王は疲れるのじゃ、誰かおらぬか?」

「はい」

 とメイスンが現れると出発の準備をしだす。

 ガンツが作った王専用の馬車に乗りこみ、魔王国へと行くが、こんなに護衛はいらないんだが?

 アシュレイ他、6名の護衛がついている。

 今回はルビーとリシェルも一緒だ。

「もう何度目よ?」

「…いや、だってなぁ?」

「いやワシに聞くな」

「チェスを渡しに行くんでしょ?」

「…そうだよ、あとは建材を買って、布も頼まれたな、ボタンやビーズも」

「なんで王様が頼まれてるのよ!」

「…ん?収納に入るから?」

「ふぅー、まぁ、私も欲しいものがあるから買ってもらうからね!」

「あ、それ私も!」

「「ねー」」

 とルビーとリシェルは言う。

「妃同士が仲良いことはいいことじゃ」

「…まぁな」


 そして10日目にはようやく国境に辿り着く。

「ここに門を早く作らねばな!」

「そうね、誰かが入ってくるとも限らないし」

「俺たちの出番も増えるって事だな」

 とアシュレイが言う。

「…じゃあ先にこっちに壁を作ってもらうか」

「その方がいいと思います」

「よし帰ったらそう指示を出してくれ」

「分かりましたぞ!」


 それから3日で魔王国に辿り着き魔王城に行くと、早馬を出したからすんなり入れてもらえた。

「久しいのう、もう王になったのじゃ対等でないとな」

「…そうだな、今日はいいものを持ってきた」

「ほう、いいものとな?」

「キン爺」

「は!」

「これは、チェスというものか?」

「そうだ、俺の国で作らせた王族用のチェスだ」

「緻密な造形ですごく良く出来ておる」

「…だろ?俺の国の彫刻師が作った!最高傑作だ」

「ハハハ、良きものをもらった、今日は宴をしようではないか!」

「…ありがとうな」

「何がじゃ?」

「魔王国での俺の行いはいいものと言えなかった。それに目を瞑ってくれて助かった」

「よい、それにこの国の膿みも出せたしな!」

「ハハッ」

「ククッ」

「では今夜の宴の前に街をぶらついて来る!」

「分かった、こちらは準備をしておこう」


 外に出たらすぐにルビー達と別れて建材を買いまくる。俺についてきたアシュレイは山になった建材を取り込む俺に呆れ果てている。

「お前は規格外だと知っているがやはり驚かされるな」

「…まだまだ、これでも足りないぞ?」

「まぁ、そうだな」

 と次の建材を買いに行く。


 ルビーと合流して布もまた山の様に収納すると、2人が欲しがっていたものを買いに行く。

「…あぁ、指輪を買い忘れていたな」

「だと思ったわよ」

「ケント様、買ってくださいます?」

「あぁ、買おう!作ってもらうか?」

「「はい」」

 ルビーは名の如くルビーをあしらった指輪で、リシェルは黄緑のペリドットの綺麗な指輪にしてもらい、俺は二つの宝石のついたシンプルな指輪にしてもらった。

 

 魔王城に戻ると2人はドレス姿になり、俺は白のタキシードだ。晩餐は滞りなく進み話も弾む。今度はまだこちらの国ができていないためもうちょっと先になるが女王も蘇った死の大地を見たいと言っているので招待すると言っておいた。


 イサムは元気かと聞かれ、最近会ってないなと思いながら帰ったら日本人の様子を見に行こうと思った。


 晩餐も終わり客室で寝る。

 客室も作らねばな…作ってありそうだな。


 朝起きて魔女王に挨拶をして帰りに指輪を受け取ると、城でつけてくださいと言われ収納に入れておく。


 まずはクオンに会いに行くと繁盛している様で、

「おう!ケント!今忙しいんだ!またな!」

「おう!またな!」

 いい感じで仕事を見つけたみたいだな!


 次はセイランに会いに行く。

 こちらも忙しそうだな。

「あっ!ケント!布出してよ!」

「…あぁ、忘れてたよ」

「もう!忘れないでよね」

 山の様な布を出すと、

「キャーーー」

 とうれしい悲鳴をあげて布を確認していく。

「ありがとうケント!」

「…どういたしまして」

 こっちも大丈夫そうだな。


 で、イサムはどうしてるのかを探しに行くと…いた!ダウンと2人で狩りをしている。イサムは冒険者になった様だ。

 でかいファングブルを2人で倒してグータッチしていた。

「…よう!2人とも元気か?」

「うっす!ケント様こそ忙しそうですね」

「ダウンはまた呼ぶよ、今はイサムと2人で活動してるのか?」

「まぁ、時間があえばですね」

「僕も結構強くなったんですよ!」

「そうみたいだな、筋肉ついてきたんじゃないか?」

「やっぱり?もう、大変だったんですから!筋トレばっかりしてましたよ」

「…ハハッ!その成果が出てるからいいじゃないか」

 と和やかに話を切り上げて最後にカオルのところに行く。


 一軒家でカオルは花に水を撒いていた。

「…俺の考えてたスローライフだな」

「フフッ!誰かのおかげでこういう暮らしができてるのよ?」

「いいなぁ、最初はこういうのを夢見てたんだが、いつの間にか王様になってしまった」

「そう言う星の元に生まれたのよ」

「一回死んでるがな」

「フフフッ」

「ハハッ」

 日本の4人はそれなりに充実している様だ。

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