第98話 娯楽


「よっしゃ!行ってきます!」

「…気をつけてな!」

「はい!」

 ノーマは1人護衛をつけて馬車に乗り今度は海洋都市に向かっていった。

 一応金貨千枚は持たせたから大丈夫だと思うが、心配なのはしょうがない。

 まぁ、人国に行くよりは遥かに安全なのでそれはいいことだな。


 と思うと入れ替わりでエンとダラーが帰ってきた。

「王様!ただいま戻りました!」

 2人とも日に焼けているのは外でちゃんと仕事していたからだろう。

「遅かったじゃないか!大丈夫だったか?」

「えへへ、心配性ですね!大丈夫です!」

「俺がついてるんで!」

 とダラーが言う。

 2人は人国から海洋都市を回って帰ってきたそうだ。

「そういえば、お願いしていたと言っておったが?それは手に入ったのか?」

 とキン爺が言うと、

「言われてたものもちゃんとありますよ!」

 箱にいっぱいのマジックバッグ。

「…凄いな」

「はい!片っ端から集めてきました、どうせ開かないのだからって安く買い叩いてきましたよ!」

と胸を張る。

「ありがとう!」

「「えへへ」」

 それから色んなものを見せてくるエンとダラーに今度はこちらから売りに出す商品を渡す。


 まずは定番のリバーシだな。これはことのほか食いつきが良かった。

 次はチェスとトランプ。

「あっ!これは見たことありますね!」

「チェスとトランプでしたか?」

「そうだ、これも元は俺がドワルゴン帝国で作ってもらったものだからな」

「そうだったんですね!高かったですよ?」

「俺は広めてくれっていったんだがな…」

「…まぁ人ですからね」

「その分こちらから売りに出せばいいんですよ!」

 とダラーの一言が嬉しく思う。


「…そうだな。娯楽の少ない世界だから売れると思うぞ?」

「い、いくらで売るつもりですか?」

「チェスはそれなり、リバーシは銀貨だな。トランプも銀貨だ」

「えぇ!トランプが金貨1枚でしたよ?」

「それは高すぎる。広めるなら銀貨1枚だな」

「そ、それは量産ができると思っていいのですか?」

 不安そうなエンに、

「あぁ、もう量産してるからケイトの工房に行けば受け取れるぞ?」

「おおっ!」

「リバーシは銀貨30「50で!」じゃ、じゃあそれで」

「はぁ、多分50でもすぐ売り切れちゃいますよ?」

「いいんだよ、1人一つにすれば転売も防げるだろ?」

「はい」

「チェスは時間がかかるから金貨で」

「分かりました!金貨2枚で売りに行きますね」

「…もっと「ダメです!」そうか」

「王様は安くしすぎですよ!」

「王よ、我もそう思うぞ?」

 とキン爺にもダメ出しされたので、

「分かった、その辺の金額は任せよう」

「ありがとうございます!」

 早速工房へ行くと、

「おっ!やっと来たね!出来てるよ!」

 と木箱が山になっている。

「王様の版画ってやつは凄いね!一気にできちゃうから作りすぎちゃって!」

「…そうか!どれくらい作ったんだ?」

「うーん、木箱一個に500入ってるから3000はあるよ!」

「さ、3000!…売るのも大変だな」

「リバーシは?」

「それはまだ500だね」

「500!?」

「チェスは?」

「チェス!あぁ、私はチェスを作るために生まれてきたのかもしれない!」

「…そんなにか?」

「勿体ぶらずにどれくらいできたんじゃ?」

 キン爺が聞いている。

「まずは王様に献上する様のが五つ!」

「うおっ!これは凄い」

「緻密な造形ですな」

(これは飾ろう、書斎かな?)

「で、貴族用が100」

「…おぉ、かなり出来がいいな」

「と、庶民用が500」

「シンプルでいいじゃないか!」

「ふぉぉぉぉぉー!!」

 目がドルになってるエンとダラー。


 これは売れるな。

「よしっ!行くよダラー!」

「あいよ!姉貴!」

「待て待て、遊び方はわかるのか?」

「あっ!教えてください!ダラーは積んで行って」

「一日で覚え切れるか?」

「覚えますとも!」

 と本当に覚えたらしく弱い俺に勝っていく。


 ダラーが急いで詰めていき、覚えたので!と時間がもったいないと言いながら出て行った。


 俺は収納に入れた未開封のマジックバッグを一個一個解呪しながらキン爺と一緒に宝物庫に並べて行く。

 キン爺だけじゃ手が足りなくなって、メイスンとスミスも手伝う。

 やはり金貨は多く、多いもので10000枚の金貨が入っていてビックリした。

 それと魔導書や金銀財宝とはこのことか?と言う様なもの。魔剣や聖剣なども多数あり、宝物庫は一気に埋まっていく。

「はぁ、はぁ、まだあるのか?」

「…まだあるぞ?」

「宰相は歳だからね!私はまだまだ大丈夫ですよ!」

「私もまだ大丈夫です」

「な、なにをー!我は金獅子と恐れられた勇敢な「はいはい!やりますよ」…」

 スミスに嗜められ動いているキン爺。

並べられた財宝に一応クリーンを使って、マジックバッグにもクリーンを使い、宰相、執事、メイド長には持っていてもらうと言うと3人とも目がマジになって自分の好みのものを探し出し大事にすると言ってくれた。


 これで娯楽の普及と宝物庫の整理、そして3人への褒美にもなったのだから言うことはないな。

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