第90話 セイクリッド


 3日かけていつもの道に辿り着いたがまぁ、獣道なので草がまた生えているな。

 ウインドカッターでまた慣らして行く。

「魔法!」

 ギルは魔法を見るのが初めてなのかそれとも使う人が少ないと思っているのか?

 ボン婆によると風に適性があるそうなので、魔導書を貰って使えるようになったらしい。

「ウインドカッター」

 慣れてないからなのか根本から刈り取ることができなくて苦戦している。

「まぁ、練習だ、あとは俺が慣らして行くから先に進むぞ」

「はい!」

 道を切り開くのに一日かかってやっと俺たちの領地に着くと。

「「「「おおぉぉぉぉぉぉぉ」」」」

 ギル、エン、ダラー、オン爺が声を出している。

「ここで新たな国を作ってる最中なの!王様はケントね」

「フオォォォォ!!」

「ど。どうしたの?」

「すっっごい感動してます!こんな素敵なところに、国を作る手伝いができるなんて!」

 とエンは感動しているようだ。

「まぁ、色々あったから感動するのもわかるわよ」

 遠くから見ても城が出来上がってきているのがわかる。

 真っ白な城だ。魔王城とは真逆だな。

(まっすぐ向かって10日はかかるんだから広さがわかるよな?)


 遠くから馬車が来る。

 乗っているのはパールとメリッサ、リルルにネアノアか!合流するとネアノアの方に乗り込む。

「元気だったかー?」

「じぇんきー」

「元気ー」

「そうか!それは良かった」

 ボン婆とオン爺も乗ってきて2人でネアノアと歌を歌ってネアノアが踊っている。

「帰ってきたな」

「「「お帰りなさい!」」」

 パールとメリッサ、リルルが言ってくれる。

「あぁ、ただいま」

「えへへ」

 と隣に座るメリッサ。

 頭を撫でてやる。

「ちょっと!私は御者をやってるのよ!頭撫でてよー」

「…はいはい」

「えへへ」

 と頭撫でるだけで喜んでくれるんだからいいな。


 野営をするのも慣れだな。

 飯は買ったものをみんなに渡して食べるとお腹が膨れた子供達は寝てしまうので俺とダウンで交代で夜の番をする。

 まぁ、きたところでファングウルフ程度だ。こちらとしても毛皮が必要な時期になってくるから願ったり叶ったりだ。


 ようやく中心部に着くと、ガンツたちが待ってましたとばかりに素材を出せと言う。まぁ、頑張ってくれてるんだし俺ももうひと頑張りするか!

 今までの倍の量にビックリしているがにやにやしているガンツ達。

 そしてエンとダラーは早速必要なものをリストアップして行く。ここにはまだ売るものがないからな。買い付けに行くだけだ。そのうち色々作って売り歩くことになるだろうな。

 ギルはでかい城の前で何か呟いている。

「どうした?」

「え!あ、あぁ、ケント様が椅子に座っているのが見えたんで立派な城になるんだなぁって」

「そうか、もう完成した城が見えたのか」

「はい!大成功ですよ!」

「ハハッ!」

「ウフフ」

「なになに?2人で笑って!」

 ルビーやリシェルが来て説明をするギルにやはり笑って返す2人。


 クオンとセイランに食糧庫ができたことを知らされ、そこに食料を詰めて行く。食糧庫は地下で氷魔法で氷が作ってある。まぁ寒くなってきてるからそこまで冷蔵しなくてもいいかもしれないがな。

 ルビーやリシェルが買ってきた服をトパーズやマリン、ウリンが気に入ったのを着てファッションショーのようなことをしている。


 ネアノアやメリッサなんかは小さい子たちを集めて色々と教えている。


 レアルとケイトの姿が見えないと思ったら工房を建ててもらったみたいでそこでまずはチェスを作ったらしい。

 しかも凝った作りのチェスだな。

 第一号だから飾るようなのだそうだ。


 ミイとスィはファングボアを狩ってきたみたいで子供達から絶賛されて照れている。

 そう言えば冒険者だったな。

 俺がダウンを連れ回してるからなぁ。


 そう言えばイサムは?と探してみると再現をどうにか昇華出来ないかと試行錯誤しているらしい。

 再現ねぇ、なかなか難しいが、やはりここは短剣術の技の再現なんかがいいんじゃないか?

「分かりました!その方向でやってみます」

 とダウンを探しに行った。


 随分と大所帯になってきたこの国は名前がまだないのでその辺も決めていかなければならないな。

 

「…と言うわけで、この国の名前を決めたい」

「それ賛成!」

「いつまでも死の大地じゃアレですからね」

「ここはケント様の名前を」

「…それは嫌だ」

「えー、ケント国でいいじゃないですか!」

「それ以外でお願い」

「じゃあ、ケント王国」

「王がついただけ」

「ちぇんとー」

「ノア?」

「じゃあ大本命!聖なる地ケント」

「あぁ、聖なる地、聖地でホーリーグラウンドでいいな」

「えー!長いです!」

「じゃあホーリーで決まりだ。これからはホーリーでよろしく」

「他の言い方は?」

「んじゃセイクリッド?」

「そっちで!」

「分かった、セイクリッドね」


 こうして俺たちのこの場所は『セイクリッド』となった。

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