第89話 人材確保2


 地下に行く俺たちは冷たい石造りの牢に向かっている。

「手前にいるのが借金奴隷です」

「そう、随分と大勢いるのね」

「今年は雨が少なかったですから食い扶持減らしに売られるのが多いんです」

「はぁ、子供の借金奴隷はいくらくらい?」

「大体銀貨50から金貨1枚ですね」

「何人いるの?」

「いまで二十人前後かと」

「いい?」

 と俺に聞くルビー、答えは決まってるだろ?

「…しょうがないだろ」

「全員買うわ」

「はい!ありがとうございます」

 奴隷商は黒服に指示を出して子供の奴隷を連れ出して行く。

「そしてここからが犯罪奴隷ですね」

「はぁ、柄の悪そうなのばかりね」

「まぁ、犯罪奴隷ですからね」

「よし!切り上げよう!」

「それがよろしいかと!」

「待って!私を買って!」

 と声がしたのでそこに行くとシルバーの髪をショートにして少し吊り目の獣人の女がいた。


「ふぅ、何故買わないといけないの?」

「私には予知能力がある!だから今日貴方達がくるのも知ってた!私は犯罪奴隷だけど…なんでもします!だから買ってください」

「ギルと言います。借金奴隷でしたが、主人に傷をつけたとのことで犯罪奴隷になりました」


「…いいんじゃないか?」

「はぁ、あんたのことだからいうと思ったわよ」

「じゃあ」

「私は反対ね!人を傷つける奴隷はいらない」

「そ、それには訳が…」

「ふぅ、訳くらいは聞いてあげるわ」

「その、ご主人の坊ちゃんが私を手籠にしようとして引っ掻いてしまい…」

「はぁ、出して!買うわ」

「ありがとうございます」


 それを聞いていた他の犯罪奴隷が喚くは叫ぶわ。

「…五月蝿い」

「外までの辛抱よ」


「ありがとうございます」

「ギルね!私達を裏切ったらただじゃ済まないわよ?」

「分かってます!」

「予知能力は使えるの?」

「たまにですけど、でもあと10分はこの奴隷商にいてください!」

「どのみち契約もあるからいるはずよ」

「はい!必ずいいことがあります!」

 俺たちはエンとダラー、子供の奴隷21人の契約とギルの契約をする。

 まぁ、10分は経ったんじゃないか?

「い、いま入荷した奴隷の中に農業の得意なものがいました!」

「…当たったな」

「…本当ね」

「やった!」

 とギルは嬉しそうだ。


 農家の食い扶持減らしに売られたのはお爺さんだ。

「わしは農業しかできんでな?他はさっぱりじゃぞ?」

「それでいいのよ」

「そうか、また農業ができるならありがたい」

「…名前は?」

「皆んなからはオン爺と言われ取った」

「ならオン爺な」

「ほんと、子供と年寄りに優しいんだから」

(それはしょうがないだろ)


 宿に帰るとリシェルとルビーとウィンとボン婆は服を買いに行ったのでダウンとエン、ダラー、オン爺とギル、あと子供達とで飯を食う。


「うまうま」

「ほら口」

「あはははは」

 と笑う子供達。

 しょうがないにしてもこんな子供が牢に入っているのは許せないな。


 服を買いに行って帰ってきたら子供達の着替えを全員でやる。もうオムツも取れている子達だが、自分で着替えられない子が何人かいるからな。

 オン爺やギルも率先して着替えさせている。貫頭衣がやはり奴隷に着せられているので服はやはり大事なのだ。ウィンは脱ぎ捨てられた貫頭衣を集めてゴミ箱に捨てている。


「な、なんじゃこれは?」

「ワシが選んだんじゃ!着れば慣れる」

「…また派手なのを選んだな」

「おい先短いんじゃ!派手なカッコもまた一興ってな」

「はぁ、まぁ、着るしかないか」

 とオン爺は着ている。案外似合うが、キン爺といい、俺の知ってる爺さん婆さんは派手だな。

「似合うじゃないかい!」

「そうか?あははは」

「よし飲むぞー、オン爺」

「なに?酒を飲んでもいいのか?」

「…好きにしろ」

「な?無愛想だがいい男じゃろ?」

「ククッ!ほんとにな!ワシの子供もこれくらい懐が広ければ良かったがのぉ」

「まぁ、いい男ってのは色々あるさ」

「そうじゃの!さて飲むとするか」

 と2人で真ん中に座って飲んでいる。

 子供達は腹が一杯になったら眠ってしまった。

 俺たちは冷たいエールで乾杯をする。

 エンとダラーは飲めないらしくジュースだ。ギルは美味そうにエールを飲んでいるし、まぁ、自由が一番だな。

 エンはルビーに色々聞いている。やはり商売のことが気がかりなんだろう。ダラーは逆にダウンに今度稽古をつけてもらいたいと喋っている。ギルとウィンはなんだか話し込んでいるがまぁ、いいだろ。


 次の日は朝からオン爺に起こされて農具を買いに行く。

 お爺の朝は早いな!

 農具や種籾などを買い付けて宿に戻るともう出発だった。オン爺と俺はサンドイッチで朝飯を取り、馬車に揺られながら酒を飲んでいる。

 ボン婆は酒を樽ごと何個か買ったらしく、ルビーにお礼を言っていた。樽で買うのか、酒造ができる人間も必要になってくるな。


 子供達もおとなしく馬車に揺られている。


 みんなのところに帰ろう。

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