第84話 死の大地


 死の大地までは5日かかる。

 それに行ったからと言って物資があるわけではないのでここで買って行くしかない。

 とりあえず木材、石材、鉄なんかを片っ端から大量に買って行く。

「ケント様、こんなに買って大丈夫ですか?」

「ん、問題ない」

「えー、もう金貨10万枚ほど買ってますが?」

「まだ余裕はあるから大丈夫だよ?それより他にいるものはあるか?」

「他には大丈夫だと思いますが」

「あ、風呂買わないと」

「それも作りますから」

「おっ、そうか」

 ならとりあえずはこれで大丈夫か。

 しかし大量に買ったな。

 馬車の4台目についていた鉄柵なんかも材料として入ってるし、日用品なんかはルビーとリシェルに任せてある。

 あとは飯だな、肉や野菜をこれまた大量に買って行く。

 俺たちの後には店じまいする店が何店舗もあった。


 次の日にはある程度ルビーやリシェルと確認し合いそしていよいよ出発となった。

 死の大地までの道はなく、草原を突っ切って行くしかない、途中山越えもしなければいけないのだ。


 急遽馬車を改造して先頭の馬車には草が倒れるようにガードが取り付けられている。魔女王がいる城下町から南に数キロ地点から草の中に入っていく。


「なかなかいいですねこれ」

「そうだな、馬の前についてるから馬の負担も減るな」

 草を倒しながら進むが、やはり途中休憩は挟まないと馬の負担になっているようだ。

 いっそのこと魔法でなんとかしてしまうか?

 背丈ほどある草なので前に出てウインドカッターを一直線に飛ばして草を刈ってしまう。途中までだが少しひらけた。

「私達の出番ですね!」

 ミイや風に適性のある仲間たちが先を歩きウインドカッターで草を刈って行く。

 交代でやっているのでそれなりに時間はかかるがそれでも一日の距離にしたらだいぶいいペースだな。

 2日目になるとガンツ達が手押しの除草機を作ったのでダウンやガンツ達がそれを押しながら進んでいく。なかなか大変な作業だが、昼からはまたウインドカッターで遠距離まで草を刈ってしまうので疲れたガンツ達は休憩している。


 道を作りながら進んでいるので時間はかかったが8日目にしてやっと草のない場所に出た。

「「「いやっほい!!」」」

「…よし!ここからが死の大地か」

 本当の荒野という感じの大地が広がっている。死の大地の中心部に馬車で移動する。


 かなり広いな。下手したら魔王国より広いんじゃないか?起伏もなく川だったようなくぼみが一本通っているが、周りを囲む山も木が一本も生えていない。


 10日ほどかけてようやく中心部らしい場所に来るとここに昔、城があったんだと推測される場所があった。


「何百年…いや何千年かもしれないですね」

「そうだな、城の残骸が物語っているな」

「どれ、魔法陣を書いて行こうかね」


 ボン婆は呪文を唱えると魔法陣が浮き出てきて光出す。

「ふぅ、アヒャヒャ、久しぶりに本気で魔法を使ったよ」

 とシンに支えられながらなんとか立っている。

「ここの中央に魔石を置いて」

「…あぁ」

 俺は魔石を中央に置く。

「さぁ。あとは魔石に手を置いて古代魔法を唱えるだけだよ!気合い入れな!!」

「…わかった」

 自分の鼓動が聞こえてくる。今になって怖気付くのか?いや違うだろ!これは武者震いみたいなもんだ!俺が死の大地を蘇らせるんだ!


「ライフリジェネレーション!」


 魔石を通して膨大な魔力が吸い込まれて行く。

「くっ!」

「わ、私も!」

 と背中に温かいものを感じる。ルビーの手からも魔力が流れてくる。

 そっと手を置かれ今度はリシェルから、

「大丈夫です!成功しますよ」

「うおぉぉ!」

 ルビーはもう魔力欠乏で倒れている。馬車に横にさせるダウン。

 こちらはやはり凄い勢いで魔力がなくなっているのが分かる。

 仲間が俺の背中に手を置いて行く。


 ボン婆以外が全員倒れている。ダウンが必死になって馬車にみんなを寝かせて行く。

 

 俺はそれどころではない。

 必死に送り続けている魔力を止めることはできない。これは流石に無謀だったかと思ったが魔石のエネルギーがようやく回り始めて大地を生き返らせて行くがまだ足りない。


『はぁ、見てられないよ!しょうがないなぁ!ちょっとだけだよ!』

 と背中に温かい手を感じる。

 クソ女神の声だ。

 そこから一気に魔力が上がって行くことかわかる。

 死の大地は草原へと変わっていき、小川が流れ出している。

 両手を魔石につけて出力を上げて行く。


 山々に緑が茂り死の大地が復活して行くのが分かる。

 もう一踏ん張りだ。

『フンッ!我も少し手をかそう』

 テスカトリポカの声もした。

 

 ようやくスローライフが送れるんだ。


 流れて行く魔力を補っているかのように背中から熱い魔力が入ってくる。

『よし、こんなものでいいだろう』

『そうね、あとは自分の目で確かめてみることね』

 ありがとうと心の中で答え、後少し、もう少しと魔力が尽きるまで流し込んでいった。

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