第82話 目指すは


 ゆっくりと降りていくと貸切状態だからみんな好きなところに座っている。

「ケントはここ!」

 とルビーとリシェルの間だ。

 ガンツ達は降りてくると目をひん剥いて驚いていた。

「こ、これ全員仲間ですか?」

「…そうだ、適当に座れ」

 と言って座らせると、

「…はぁ、んじゃ、仲間も増えたから各自自己紹介はしてくれ、新しく入った仲間は積極的に動いてな!ガンツ達はボン婆のとこに行けば火酒があるぞ?」

「か、火酒?!飲んでいいんですか?」

「俺たちは仲間だから別に禁止してることはない。それじゃあいただきます!」

「「「「「いただきます」」」」」

 ワイワイガヤガヤとみんなで飯を食べる。

ボン婆のところに早速いってるガンツ達やマリンウリンに絡まれてるサイアヤ姉妹、セイランに映像化された物を必死にスケッチブックに描くケイトがいた。

 楽しい夕食も過ぎてネアノアも眠くなって来たようだから上に上がろうとすると、

「ケント様!俺たちを助けてくれてありがとうごぜえやす」

「「「「ありがとうございます」」」」

「…気にするな」

 と言って別れた。

 次の日は、今度は尻尾の解体作業だから王城近くにいる。風がいい気持ちで草原は揺れている。


「おう!宿を貸し切ったそうだな」

「アシュレイ、そうだ、奴隷が増えたんでな」

「また増えたのか?幸せな奴隷達が!」

「幸せかどうかは知らんがな」

「お前は他の奴隷を見てないからな」

「まぁ、昨日は見なくてもわかるくらい酷かったがな」

「治せたのか?」

「あぁ」

「それはよかったな」

「…まあな」

「酷いことするのは貴族がほとんどだ」

「そうなのか?」

「使い物にならなくたっていい、そんなこと思うのは金を持ってるやつだけだ」

「腐ってるな」

「だがそれを貴族だと思わないでくれ」

「分かってるよ」

 風が強く吹く。

「お前はどんな国を作るのかな」

「さあな」

「ククッ!尻尾の解体だから早いもんだな!」

「そうだな、終わったら帰るのか?」

「あぁ、お前からの誘いを待つことにする!」

「わかった」

「キン爺あたりもそろそろ退職するだろうな」

「好きにしてくれ」

「ハハッ!わかったよ」

 と言って解体している方へ歩いて行った。

 今日中に解体は終わるだろうな。


 次の日は頭を出して終わりだ。

 アシュレイの見送りにみんなで行くと、

「増えたな!お前らケントを頼むぞ!」

「はい!」

「ではな!」

「あぁ、またな!」

 と言って別れた。


 そしてそのまま馬車の買い付けに行く。

 同じような馬車を買うとガンツ達が改造すると言って宿屋に運んだら三人で色々やっている。

 ケイトはチェスのコマにハマって作っている。サイはまだアヤのそばにいるので見に行く。

「アヤはまだどこか調子が悪いのか?」

「この子は元々魔力が多くて調子が出ないんです」

「そうか、マナドレイン」

「あ、アァァ!もう大丈夫です!」

「そうか、良かったな!」

「ま、またお願いしてもいいですか?」

「あぁ、分かったよ」

 と元気なアヤが見れた。


 さて、ガンツ達の改造が終われば明日にでもこの街を立つとしよう。

「と思うのだが?」

「分かった!じゃあ買い物し隊集合!」

 集まった中に元気になったアヤがいて安心した。

「今日でこの街ともおさらばになりそうだから買い物行くわよ!」

「「「「「はい」」」」」

 と言って出て行った。

 ダウンやクオン達とガンツを見に行くと魔改造していたので、明日に間に合うか?と聞いたら間に合うそうだ。

 そのままクオン達を置いて王城へ出かける。


「それじゃあ覚悟は決まったみたいだな」

「…そんな大層なもんじゃないがな」

「では次会うときは王同士ということか!」

「そうだな」

「楽しみにしておくぞ!」

「あぁ、わかった」

 と言ってルフェアと別れる。


 さて全ては明日から始まるな。


 宿に戻り夕飯を食べているとやはり話は死の大地に集中する。

「いろいろ買い揃えないとね!」

「まだ買うのか?」

「日用品に木材、石材、鉄、なんかの材料系はいくらあっても困らないわよ?」

「…まぁそうだな」

「死の大地を人が住めるようにしてもどれくらいの広さになるかわからないわけだし、ほんと未知数だからね」

「…」

「その辺考えて色々買って行かないと」

「まかせる」

「分かったけど持つのは私じゃダメよ?」

「そうだな、収納がなくちゃな」

「そういうこと!」

「材料系はガンツに行っておいてくれ」

「分かったわ!ガンツ!」

「へい!ルビーさん」

 とガンツは覚えているようだ。


 そして次の日は街を出る。

 馬車三台で外に出ていく。

 目指すは魔王国、まずは魔女王に許しをもらわないとな。

 

 橋を軽快に走る馬車は次の村を超えてその次の街までやってきた。

 ここで今日は一泊だ。

 ガンツやサイ達も慣れてきたので夕食は盛り上がった。

「アヒャヒャ!それ飲め歌え!」

「ッカァー!これこれ!火酒はこうじゃないとな!」

「ウフフ、美味しいお酒ですねぇ」

「お姉ちゃん、弱いんだから程々にしときなさい」

 と怒られているサイ。

 ダウンは相変わらず肉料理を独り占めしたがるし、クオンやイサムがそれを止めている。

 トパーズとパールはそれを見て笑ってるし、ミイやスィは呆れて他のものを食べている。

 そうみるとここで静かに食べてるネアノアはお利口さんだな。

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