第76話 友
ここは海か?
もがいても、もがいても水中から出られず逆に沈んでいってしまう。
「プハッ!はぁ、はぁ、はぁ、ゴホッガハッ」
「や、やっと起きた!」
こ、ここはギルドか?
「もう!無理はしないでよ!」
涙目のルビーにリシェル、リルルがいる。
「…なんとかなったな」
「なんとかなったじゃないの!リルルがいなかったら危なかったんでしょ?」
「あぁ、リルルには助けられた」
「アシュレイ様もケント様に頼りすぎです!」
「それは本当にすまない」
「…いや、あれはそういう」
「黙ってて!ケントなしで戦ってたら絶対全滅してるじゃない!」
「本当にその通りだ」
「…やめろ」
「ケント…」
「俺は友だから助けたいと思った。ただそれだけだ」
「ケント殿…」
「ふ、ふん!私はケントが一番大事なの!」
「私もです」
「…悪かったよ」
「私からもすまなかった」
「も、もういいわよ!」
「それよりも銛ですよね?」
そうだった、あのでかい銛だ!あれがなければ穏やかだったはず。
「あれはおそらく海洋国家の軍が使ったのだろう」
「は?じゃあ自分で自分の首を絞めたんじゃない!」
「これは国家間の問題として国王に早馬を出している」
(どうして水竜を怒らせたんだ?あんな銛でどうこうできるわけがないだろ?)
「ガーハッハッハッハッ!水竜退治見事であった!してその水竜が見当たらぬが?」
大男が入って来て何か喚いている。
「誰だ?」
「辺境伯だ。辺境伯?あなたが銛を?」
アシュレイが進んでいき聞いている。
「ん?銛…あぁ、銛を撃ったのを忘れておった!」
「…殺す」
立ちあがろうとするのを止めるルビー達。
「やめろ!ケント!」
「な、なんだこいつは?」
「ランクSの冒険者だ。人斬り、聞いたことはないか?」
「ふーん、こいつがねぇ?そんなに強そうには見えないが」
「行け!ケント殺しちゃっていいわよ!」
ルビーが退くが俺の方がヤル気がなくなった。
「グガハァ!!!」
「アシュレイ?」
「我が友を侮辱することは断じて許さん!お前は会議にかけられる!そこでその態度ができると思うな!!」
「いつつ、何熱くなってんだよ!オマあっ!」
「…動くと斬る」
「わ、わしは」
「辺境伯だろうが関係ないんでね」
「アシュレイ殿?」
「いっそ斬られた方がマシだと思うが縄をもってこい」
「え?」
縛られた辺境伯は牢屋にぶち込まれたらしい。
海洋国家も君主制になっておりその後、人国の国王からの手紙に書いてある通りだと認識したそうだ。
そして俺たちは辺境伯を連れていくこととなった。
前のアシュレイの馬車に乗っているそうで泣き喚いているそうだ。
自分がやったことは間違っていないと言っていることから事の大きさを知らないのだろう。
次の街にはいつ着くのだろうか?三日目の夜に聞くと、明日には着くそうだ。
「…そうか、獣人国では散々だったから海洋国家では少しはねをのばしたいもんだな」
「明日街に着いたら俺たちも疲れているので二日は滞在する予定だ」
「…ならいいな」
少し肌寒くなって来るが、焚き火を囲んでいるからかあったかい。
「すまなかったな巻き込んでしまって」
「…友の助けはするもんだ」
「ハハッ、俺も何かあればすぐに駆けつける!約束だ」
「…あぁ」
酒を酌み交わして月を見る。
今宵の月は綺麗なもんだな。
買い物し隊に習ってだが、露店をまわるとマジックバッグがあるもんだな。二つはゲットしたのでこれで全員分を集めたことになる。
やはり海にはいろんなものが漂着するようで、ミスリルソードやオリハルコンダガーなどメンテナンスすれば使える武器も購入した。
「わしはこっちじゃ!」
「良かった欲しいのが被らなくて!」
とボン婆とパールはマジックバッグを大事そうに抱えている。
「…いい酒は手に入ったのか?」
「バッチリじゃ!ジンにウォッカなんかも手に入ったぞ」
とシンのマジックバッグから自分のに酒を移している。
「南の国じゃから甘いカクテルなんかもいいぞ」
「…それは飲みやすそうだな」
「今日の酒は美味いぞい!」
「…そうだな」
宿に帰ると夕飯時はボン婆が楽しそうにバッグを自慢している。
(そんなに欲しかったなら言えばいいのに)
また女心とか言われそうなので言わないがな。
アシュレイは領主の館に行っている。
辺境伯領を見ていてもらうためだ。
しかし竜はもういいかな?
水竜で懲りた。
リルルがいなければ今頃死んでいた。
クオン達やダウンも心配してくれていた。
それにしても辺境伯にはやはり縁がないのか?一癖どころじゃないぞ?
もっとまともな人事をしてくれてもいいと思うがな。
今夜も夜遅く迄、飲み明かした。
次の日も休みだからみんな思い思いのことをしている。
ボン婆はシンと酒を探しに行ったし、セイランに付き合って服を作ってる組と買い物をしに行ってる組。俺たちは外に出て干してある果物や南国特有の果実を食べたりして楽しんでいる。
喫茶店に入りパフェを頬張るネアノアにメリッサとリルル。
今回は俺たちに着いて来たようだ。
「美味っ!」
「うまうま」
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