第74話 ジヤーンケーン


 露店を回って喫茶店に入る。

 いつもの様に皆好きなものを頼むとマジックバッグの封印を解いていく。

 一つ目は魔導士のマジックバッグだった様で金貨数枚と魔導書が出て来た。

収納に入れてこれはポーチタイプなので女の子用かな?

 二つ目はヒップバッグの様な形のマジックバッグ。中身は何かの書類関係だな。奴隷商だったやつのものらしいが、古いものだな。

 とりあえず収納してイサムに渡してやる。

三つ目のマジックバッグもやはりヒップバック型のもので。解呪してみると金貨や宝石がどっさりはいっていた。


 これはダウンに渡してやる。

「いいんですか?」

「お前も長いからな、風呂道具でも入れとけよ」

「は、はい」

 二つポーチ型のが余ったからカオルと誰かに渡すことにする。

 あとはこのダガーだが、これはメンテしないと使えないな。

 黒くなってはいるがミスリルダガーだからな。

「今日の収穫は結構あった」

「そりゃそうですよ!いいなぁ鑑定」

「俺の服も全部入るしな!」

「ぼ、僕も!ありがとうございます!」

「…ハハッ」

 あとはこの金貨は全て俺のものなるのだが、本当に溜まる一方だな。

 収納に入ってるから関係ないがな。


 喫茶店でゆっくりしてる。

 外が騒がしくなって来たと思ったら、

「あー、男どもはこんなとこにいた」

「ルビー?」

「私達が買い物してる間に何してるのかと思ってたら」

「喫茶店は俺らがよく使う時間潰しだぞ?」

「いいよね?喫茶店って!」

 と静かな雰囲気が一転して賑やかな雰囲気になる。

「ほい、カオル!」

「え、なにこれ?」

「どっちか選べ」

「ん?じゃあこっち」

「わかった。あと残り一つだ」

「私が欲しい!」

「私だって!」

「もうそんな言い方するから!じゃんけんで決めましょ!」

 ルビーが仕切る。

「な、なに?」

「…ん?マジックバッグだ」

「えっ!あ!本当だ!凄い!もらっていいの?」

「…要らないな「いる!ありがとう」…おう」

 と喜んで自分のものを入れているカオルに、あっちはとんでもない熱気だなぁ。

(って、ボン婆はいいだろ?)

「…ボン婆は「わしも欲しい!」…分かった」


 流石にボン婆が欲しがるとはな。


「ジヤーンケーン ポン!負けた人は下がってね」

「く、悔しいのじゃー」

「シンがいるからいいだろ?」

「ふん!女心のわからんやつじゃ!」

 と喋ってると、

「あれ?お前らがつけとるのは?」

「こ、これはダメだぞ?」

「だめだぞ!」

「俺は渡さんからな!」

「ひどーい!男組は全員揃ってるじゃん!」

 とブーイングの嵐だが、耳をぺたんとつけてダウンですら防御の姿勢をとっている。


「いいでしょ?少人数だから?それよりも次よ!ジヤーンケーンポン」

「いやったー!私の勝ちー」

 と喜んでるのはマリンだ。

「まぁ、収まるとこにおさまった感じか」

「よし!ケント!行くわよ!」

「…どこに?」

「目星はつけてあるから!」

「だからどこに」

 とつれていかれてしまう。リシェルも一緒にデートかな?


「ここで待ってまーす」

 とほかのみんなも喫茶店で待つそうだ。


 連れてかれたのはバッグを露店で売ってるところだった。

「はぁ…それはいくらだ?」

「ん?これは開かないから銀貨一枚でいいよ」

「…わかった、あとそれとそれ」

「はいはい!おまけしてやるよ!」

「ありがとよ」

 と金を払うとまた次のところに行く。


 これを三件ハシゴした。

 計7つのマジックバッグを手に入れたが、解呪して中を見ると人骨が入っていたり、ポーションが山の様に入っていたりと様々だ。

 まあ、金貨は必ず入っているからいいがな。


「あと持ってない人手をあげて!」

 ボン婆、アンバー、レアル、トパーズ、パール、リルル、メリッサとちょうどじゃないか。

「え?ネアノアは欲しいのか?」

「欲しい」

「あのお星様のやつ」

「あー、また今度じゃだめかな?」

「いやー」

「だめー」

 と頑なにじゃんけんしたそうだ。

 

「よし!じゃんけんだ!」

 ルビーが言うと燃えている女達がいた!ボン婆も燃えている。

 

「ジヤーンケーンポン!!」

「はい負けた人は下がってねー」

 ボン婆が1人脱落した。

「なんでじゃー!わしは長いんじゃぞー!」

 と喚いている。

 シンは…渡す気はない様だ。

「ジヤーンケーンポン!」

「嘘だ!もう一度!もう一度!」

「ダメよパール」

「あぁ、嘘だ!」

 と次はパールが泣き始めた。

 あとはもうないと思ったが、デザインの問題でじゃんけんは続く。

 

 ようやく決着がついたが、ネアノアは欲しいのをゲットしたらしい。

 まぁ2人だしな。あとの5人は壮絶なバトルの末勝ち取ったマジックバッグに名前をつけていた。

 あと二つなんだがないんだよな。

 まぁ、そんなに出回るものでもないしこんなにあったのが幸運だったんだ。


 宿に帰るとボン婆とパールはヤケ酒している。まぁ、そのうちまた見つけるとしよう。


 次の日の朝、第三師団と合流して海洋国家に向かう。

 アシュレイは前を走る馬車に乗っている。その後を続けて走っている。

ようやく国境に着いたのは夕暮れでだったので国境近くで野営することになった。

「ケント、今回の参加本当にありがとうな」

「ハハッ、どうせ通る道だからな」

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