第66話 新たな旅立ち
「う、うぅ、」
「今更後悔しても遅い!こいつらは借金奴隷になっちまってるから解放もできない」
何でたかが金で子供を売るんだよ!そんなの間違ってるって誰か声をあげなかったのか!
「だから俺は言ったんだ!天罰が降るって!おい聞いてんのか村長!」
「ワシは知らんぞ!ワシは知らん!」
ダウンが言って帰ってくるまでこんなところにいなきゃいけないのはとても嫌な気分だがしょうがない。
「アンタ、私達は裁かれるのはしょうがない、さっき村長に楯突いてた男は無実だからやめてくれないか?」
「はぁ、全員罰は受けてもらう。異論は認めない。あいつだけが無実って言うのなら、村人の中にもまだ何もしなかったのもいるだろ?そう言うやつまで無実になっちまう」
何もしなかったのも罪だ。
「そうか、そうだな」
それから4日でダウンは戻って来た。
「またクアラドルかよ!」
「またとは何だ!ちょうど出ていく時にカチあったんだからしょうがないだろ!」
「まぁ、いい、話は?」
「聞いた。この村の住民は全員牢屋行きだ。そして盗賊に落ちた奴らも全員牢屋行きだ」
盗賊は恩赦だな。普通なら鉱山奴隷だ。
「この村は?」
「街から移民を連れてくる。まぁ、何とでもなる」
「そうか」
「あぁ。これから取り締まりが厳しくなる。これ以上恥を晒してたまるか!」
怒りに震えているクアラドル。
「ワシは知らんぞ!わしは!グハッ!」
クアラドルに殴られる村長。
「民を守るための村長がなんたることだ!恥を知れ!」
「う、うぅ」
盗賊、村人合わせて四十数名は王都に連れて行かれた。
全員が居なくなり寂しい村に残るのも嫌なので旅立つことにした。次は4日もかかるのでみんな気が重いが、何とか旅立つ。
「はぁ」
「しょうがないですよ!元気出しましょう!」
「そうだな」
後ろではボン婆が歌を歌っている。子守唄なのかネアもノアもメリッサまで寝ている。
子は宝と言うではないか!それをあいつらは…
もういい、終わったことだ。
野営をしてると女盗賊のどこかホッとした顔が目に浮かぶ。
「何またしけたツラしちゃってんのさ!」
「ルビー」
「こういう時は飲むに限る!」
「アヒャヒャ!そうじゃの、これも経験じゃ」
「…そうか、だがもう経験したくはないな」
「わたしだって二度と経験したくないね!」
「…そりゃそうか」
そりゃ誰も経験したくないだろう。
飲んで忘れるのもたまには良いか!
「酒をくれ」
「あいよ!」
「飲め飲め!」
と夜は深まっていった。
朝起きると横にはルビーがいてビックリして反対を向くとリシェルだった。
すぐに起き上がりテントから出るとテントの中からクスクスと笑い声がする。
「…はぁ、おちょくられてるな」
だがおかげでだいぶ楽になったな。
野営も3日目になるとマリンウリンがアクロバットの練習をしたり、クオン達が稽古に熱を入れたりとやることがなくなって来た証拠だな。
まぁ、明日には着くからそれまでの辛抱だ。
俺はあれからずっと考えている。
言うとこの幸せな旅が終わりそうな気がして、でもそろそろ一区切りつけなきゃいけない問題だ。
パールがひっついてくる。酔っ払っているようだ。
「わらしはケントにひろわれてよかっら」
「…そうか」
リシェルは隣でゆっくり飲んでいる。
長いこと一緒にいる仲間だ。
ルビーに会って、リシェルを助け、それから本格的に旅が始まったんだ。
俺は2人を選べないな。
それに奴隷だ、奴隷達も沢山いる。
さあ、まだ急ぐべきではない。いや、心の中では決まっているのだ。それを口にできないでいるだけ。
俺はよくばりだな。
朝起きるとリシェルが挨拶してくる、でルビーが起きてくる。
「…あはは、俺は2人とも好きだ」
「「え」」
「欲張りだな」
「いいえ!」
「もう!待ってた!」
と2人とも抱きついてくる。
俺は幸せ者だ。
それから2人を離して旅の支度をする。
2人は嬉しそうに朝飯の準備をしている。
「…さて、次の街に行こうか!」
「「はい!」」
馬車の中ではクオンが揶揄ってくる。
「あれはないんじゃないですか?」
「…俺は口下手だ」
「それでも」
「わたしは嬉しかったんですからいいんです」
「そっすか!良かったっすねリシェルさん」
「はい!」
「アヒャヒャ、こりゃ良い酒の肴じゃ」
「いいね!」
「あーあ、良いなぁ2人とも」
と後ろから聞こえてくるが俺は聞こえないふりだ。
こうしてリシェルが隣にいることも緊張しているのに!
「…よし!街だ!」
「そうですね」
新しい街にはどんなことが待ってるのかな!俺の心は脈を打っている!顔は赤いだろう!それでも人生ってのは楽しいな!!
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