第47話 テスカトリポカ
立ち寄った村でエルフ族の民族衣装に着替えると、その上から装備を着る。着心地は悪くない。
これで目立っていた俺たちも、少しは馴染んだんじゃないかな?
「よく似合ってますわ!」
「…まぁ、着られてる感はあるがな」
「そんなことないです、ちゃんと似合ってますよ!」
と力説するが、やはり美男子ばかりのエルフに比べ筋肉質になった俺は違う様に感じる。
それよりもエルフの酒はワインに似た酒なんだな。果実酒とでも言えばいいかな?
宿で出された酒を飲みながらボン婆は美味いと言いながら飲んでいる。まぁ、果実感がたっぷりだから飲みやすいが酒精は強そうだ。
そしてルビーによればこの国にも突然現れた人間がいるそうだ。ということは6人のうちの誰かだろう。
犯人じゃないことを祈って旅を進める。その男は都にいる様で噂を聞く限りじゃ、ちょっと碌でもないな。
自分の力を使って女を手籠にしようとし、牢屋にぶち込まれているそうだ。
嫌な予感がするがまぁ、会えばわかるだろう。
と思っているとすれ違う馬車の中から悲鳴が聞こえた。
俺は降りて走り馬車の前に立つ。
“ブヒィィィィ”
「なんだ!お前は轢かれたいのか?」
「…ちょっと荷を見せてもらおうか?」
「チッ!轢けぇーー!!」
繋いでいる縄を斬って馬を逃すと動けなくなった馬車。
「な、なんなんだよ!商売の邪魔する気か?」
「真っ当な商売ならな!」
「ケント!こいつ隠れ奴隷商よ!」
「チッ!こんなとこで捕まってたまるか!」
と逃げ出す男の足を斬ると、
「ウギャアァァァァァ!」
「…お、俺はちゃんと正規の値段で買ったんだよ!」
「本当か?証拠を見せろ!」
「ない!あるわけないだろ!」
「やはり闇か?」
「そ、そうだ!こいつらをやるから見逃してくれよ!」
「ふざけるなぁ!」
首を刎ねて収納すると、馬車から出て来たのは10人くらいの奴隷達だった。
「ど、どうだ?」
「遅かったわね、奴隷紋がついてるわ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!これ以上は」
「そうね、人数が人数だし、とりあえず次の街までいきましょうか!」
「そ、そうしよう」
助かった!やはり奴隷が増えるのはきびしいからな。
荷物はもちろん俺の収納の中に入れ、荷車も入れる。
鍵束はルビーが持って、裏で、手錠を外している、
俺はこの奴隷商が持っているものを探る。金貨なんかは貰っておく。あとは契約書と積荷の中身、中身は食料と衣類が少しあるな!
衣類を出してアンバーに持たせると馬車の影に持って行く。
着替えて来た子たちは後ろの馬車に乗ってもらい、馬車を収納したら出発だ。
流石に少し手狭だから、迷惑をかけるが仕方ない。
「ええ、もういいわよ!」
「全部で…9人か…」
「怪我をしている子がいるから10人ね」
「わかった治すよ」
見に行くとまだ若い子だが足を切られている。
「フルケア」
「う、あ、ああ、ありがとう…」
「さて着替えさせるわね」
「分かった」
「見る気?」
「…違う」
とみんなの方に行く。
「わ、私たちどうなるんですか?」
「…それは」
「お願いします!捨てないでください!」
「…」
「お願いします!!」
「待って、これはもうケント様ではどうにも出来ないの」
「…そんな」
「みてわかるでしょ?私達も奴隷よ」
「なら私だけでも!」
「なんであんたなのよ!」
「ウェェエェェン」
「…あ「何言おうとしたの?」ルビー」
「もうあなたじゃ限界でしょ?」
「だが」
「神がいるのであればテスカトリポカね」
(テスカトリポカ、日本で聞いたことあるな)
「祀っているところは聖教国にある筈よ」
「よし、そこに行こう!リシェル?知ってるか?」
「私は存じ上げません」
「わ、私知ってる、私の村」
「…じゃあ決まりだ」
俺たちはその子に従って馬車を進める。
聖教国の都を後にしてまだ南の方にある様だ。
人骨などが祀られた奇妙な村の前に立つと全身が凍っていく様な感覚が襲ってくる。
「…俺1人で行こう!」
「私も行きます」
とついてくるのは道案内をしてくれた子だ。
「人間がなんの用じゃ?まさか神に背こうなどと言う罰当たりなことではないよな?」
「…神と話がしたい」
「お婆様!お願いします」
「ふん、神と話か、そんなことができるのかね…」
とその場を退くと俺はその場に胡座を書いて座ると見られてる妙な気分になる。
(テスカトリポカよ…少し話ができないだろうか?)
『汝、なんのためにここに来た?』
(俺は奴隷を解放したい!そのための力をくれないか?)
『奴隷は供物と同じ、汝にそれを満たすことができるのか?』
(わからない…だが、今奴隷になっているのは騙され、無理やり奴隷になった者たちだ!)
『それでも我が供物を横取りすると申すか?』
(それでも俺は助けたい)
『では、汝の『ちょーい待った!』な、バカ女神』
(お前…なんで?)
『テスカトリポカ勝負よ?こいつとダーツ勝負をしてちょうだい?』
『意味がわからぬ、なぜそんなことをせねばならぬ』
『そうね、私も私の神力を賭けるわよ!これでどう?』
『…釣り合いが取れるな、汝と勝負しようぞ』
『よっしゃ!あとは頼んだわよ?』
「…バカ女神…分かった」
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