第38話 セイラン


「とりあえずセイランは俺と一緒に来るか?」

「うん!やっぱり同郷がいて良かった!」

「知り合いですか?」

 ダウンが聞いてくる。

「同じ国の出身だ」

「へえ、ダウンって言います!よろしく!」

「うん!よろしくね」

「奴隷紋はついてないな?」

「うん抵抗してたらつかなかったから盗賊もおかしいって言ってた!」

「…そうかよかったな」

「へへ、なんか泣けて来ちゃった」

 と泣き出すセイランを連れて馬車に戻ると、ルビーに事情を説明する。

「そう!よかったわね!同じ国の人がいるなんて」

 と喜んでくれ、セイランともすぐに仲良くなっていた。

 馬車は走り出す。盗賊は繋いでいるから走りだな。後ろでダウンが見張ってるから逃げられないし走るしかないのだから全力で走っている。

 中ではセイランに質問攻めをしているみんながいた。まぁ俺に聞くよりも返事が返ってくるから聞きやすいのだろう。


 次の街まではまだかかりそうだな。


 野営の準備をしていると盗賊がうるさいな、

「しょんべんくさくて寝れねえよ!」

「知るかよ、クリーン」

「あ、ありがてえ!」

「っとに」

「腹も減った」

「うるせぇよ!土でも食ってろ!」

 とダウンが来て助かった!

 飯は出来たものを収納から出してみんなで食べるだけだが、まともに食事をしていなかったのだろう。セイランは泣きながら食べている。

「う、、うまいヨォ」

「…それは良かった」

(セイランは若い様だけどどうして死んだんだろう)

「なぁ、言いたくなければいいがどうしてこっちに?」

「あっちで銃乱射事件が起きて」

「…俺もだ、じゃあ他にも?」

「私が最後見た時は犯人が撃たれてたわよ」

「そうか、あと何人いるんだ」

「わからない、でも私達だけじゃない気がする」

(そうだな、それも探しながら旅をしていこう)

「悪かったな、それに服は大丈夫か?次の街までそれじゃしんどいだろ?」

 まだ、日本の服を着ている。

「そこは私が貸してあげるから大丈夫」

 とルビーが胸を張っている。

「そうか、よろしく頼むな」

「任せといて!」


 夜の番を交代でしている。盗賊は眠りこけているな。流石に走り疲れたのだろう。


 するとセイランが隣にやって来た。

「…いくつだ?」

「へ?歳?21だよ」

「若いな」

「ケントさんは?」

「ケントでいい、32だ」

「うそ、見えないね」

「…まぁな」

「って違う、こんな話をしに来たわけじゃなかった。私達死んだから帰れないよね?」

「たぶんそうだろうな」

「だよねー」

「…こっちも案外悪いやつだけじゃない」

「それはこの人達を見てればわかるよ」

「知らない間に増えてしまったがな」

「あはは、すごいよね、しかもみんな強そうだし」

「…セイランは何をもらったんだ?俺は収納、剣術極、鑑定、回復魔法だ」

「私はダーツが得意じゃなかったの、で当たったのが料理、裁縫、映像化の三つよ」

「映像化?」

「こんな感じ」

 と手のひらにチェスの駒を映像で見せる。

「凄いな、しかも料理に裁縫か、日本のものが作れるじゃないか」

「そ、そうね!そんなことができればいいわね!」

「醤油や味噌も欲しいと思ってたからな」

「そうね、それは作りたいと思う」

「それに俺以外に会えて良かった」

「助けてくれたのがケントで良かったよ」

「…旅する目的が増えたな」

「え?」

「俺はスローライフができる場所を探してたが、他の日本人を探すのも一緒にできるだろ?」

「へぇ、スローライフね!いいじゃん!」

「こいつらとゆっくり暮らせればいいと思ってな」

「あはは、私もそれに入る」

「あぁ、よろしくな」

「うん!じゃあおやすみなさい」

「…おやすみ」


 次の日も盗賊は元気に走っている。

「オラ!置いてかれたら引きずられるぞ!」

「ひぃー」

 途中休憩を挟みながらようやく街が見えて来た。

 門兵に盗賊を着き出すと盗賊達は泣いて喜んだ。

「地獄だったんだ!早く捕まえてくれ」

 よっぽどきつかったのだろうな。

「よくやってくれた!賞金首がいないか確かめてからの報奨金になるがいいか?」

「…あぁ、それでいい」

「じゃあギルドカードを、、、Sランク…本当にいるんだな」

「…いいだろ?」

「わ、悪いな、つい見入ってしまった。明日取りに来てくれるか?」

「わかった」

 門の中に入るとギルドに行って討伐金を受け取りそれから宿に向かう。俺とダウンで2人部屋、ボン婆、シンで2人部屋。

 セイラン、ルビー、リシェル、ネアとノアで4人部屋、残りのミイ、スィ、アンバー、レアルで4人部屋だ。

 多くなったもんだな。


 もう夕方なので買い物し隊は、セイランの服だけ買いに出かけた。買い物の本番は明日らしい。

 帰ってきたら夕食だ、テーブル席を二つ使い飯を食う。

「おう!女が多いんじゃねーか?俺様がアァァァァァァァァ」

「女将フォークが一つダメになったからくれないか?」

「て、テメェ!グハッ!」

「こいつは俺で十分っす」

「…任せる」

「おっしゃ!やる気でた!」

 と言って外に連れ出して行く。

「銀貨でいいか」

「あいよ!十分さ」

 と笑う女将に銀貨を渡す。

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