第37話 女神の被害者


 買い物に行くと蜂蜜やお菓子が結構並べられていた。

「きゃー、甘そうで美味しそう!」

(なんて女どもは言っているが、まだ俺の収納の中にはブンブンビーの蜂の巣が丸っと入っているんだがな)

「香水もいい香りね」

「あ、これなんていいんじゃないですか?」

「私はこれが好き」

 とそれぞれ好きなものを買っている。

「ボン婆はいいのか?」

「あたしゃ、香水よりミードのほうがいいねぇ」

「ハハッ、変わらないね」

「いいだろ?変わらなくて」

「そうだな」

(ボン婆が香水なんかつけたら派手な格好だし目立ってしょうがないだろうな)

 シンも興味がない様でボン婆と2人でミードを見ている。レアルもそうだな。


 まぁ、ここなら綺麗に蜂蜜を出してくれるだろうと養蜂している場所に向かう。

「…すまないがブンブンビーのはちのすがあるんだが、蜂蜜を取り出してくれないか?」

「な、そんなのとって来たのか?!おお!やらせてくれ」

 人よりでかい蜂の巣を出すと流石にびっくりした様で、

「こりゃすげえ、蜂の子もあるな!よし、2日くれ、あとビン代とかももらうぞ?」

「あぁ、上手いこととってくれよ」

「まかせろ!こっちはプロだからな」

 と言ってサムズアップする。


 宿に戻ると自分好みの香水をつけたルビー達だが、香りが渋滞しているな。

 鼻が痛くなるというと

「分かってない!そこは褒めるの!」

「…俺だけじゃないぞ?」

 ネア、ノア、ダウンにボン婆まで鼻を押さえている。

「クッ!もう!落としてくるから!」

「…悪いな」

(俺だけ怒られるのは微妙な気がするがいいか)

 夕飯どきにあの香りはきついので良かった。夕飯にも食用花などが出たが食べる気はしないな。

 ミード酒の飲み比べをしているボン婆におすすめを聞いて飲んでみると、意外とあっさりしていて飲みやすく美味しい。

 

 飲みやすくてついつい飲み過ぎてしまったが、まぁ、たまにはいいだろう!

「昼まで寝るなぁ!」

「…ん、もう昼か」

 ここは風がよく通るから涼しくてつい寝過ごしてしまった。

 ダウンも一緒みたいで寝ていたところを起こされてムスッとしている。

「…今日はどうするんだ?」

「もう昼だから何も予定が立てられないじゃない!」

「悪かったよ、でもたまにはいいだろ?」

「…まぁ、そうね、でも寝すぎは良くないから起きて起きて!」

 と起こされて窓の外を見ると賑わってるなぁ。


 まぁ、何もないが外をぶらつこうと全員で街をぶらつく、ほんとに花と蜂蜜の街だなぁ。

 ネアとノアに蜂蜜で作った飴を買ってやり、それを見ながら散歩だ。武器や防具もみるが今の武器防具の方が性能がいいからな。


 結局は何も買わずに宿に戻ると、はちみつを依頼した主人がきていた。

「ミード酒を作りたいんだが蜂蜜を分けてくれないか?」

「…まぁ、そんなに使わなければいいが」

「四分の一使わせてもらいたい!」

「じゃあその分を蜂蜜でもらおうか」

「それなら!うちの蜂蜜は美味いぞ!よっし!これで新しいミード酒が作れる!」

 と言って出て行った。


 次の日には大瓶に18本の蜂蜜と6本の養蜂場の蜂蜜を受け取る。

「ほ、本当に他はいらないのか?」

「あぁ、あとは好きに使ってくれ」

「蜂の子が上手いのに」

「…俺は苦手だしあの大きさだからな」

「まぁ、好き好きだからな」

 と言って代わりに蜂蜜の瓶はタダになった。


 つぎの街はどんなところだろうと出発する。

 

 と、久しぶりに盗賊が出て来た。

「へへ!女ばっかりじゃねぇか!」

「こんな上玉ばっかの馬車を見逃す手はねえ」

「…どうする?」

「やっちゃいなさい!」

 と中からルビーが言うので10人はいる盗賊相手にダウンと2人でかかっていく!

「おっ!おとこふたりでなにがテキブハッ!」

「ふん!」

 とダウンも拳でなんとか殺さずに生け取りにしていく。俺は雷魔法で感電させているだけだがな。ミイやスィ達が縄で縛って行き、立たせると13人もいたのが分かった。

「多いな、アジトはどこだ?」

「ひ、ひぃ!あ、あっちの裏の方に」


 盗賊が言う様に見てみると岩陰になっているところに小屋が立っている。

 中に入って行くと、懐かしい据えた臭いで吐き気を催すが、それ以上に全員で出て来た様で盗賊がいないのにビックリした。

 そして捕まっているのは1人、あらかた物色してから出してやると、

 茶髪にピアスをつけた日本人顔の女だ。

「あ、あなた日本人?」

「…な、あんたは?」

「私は星野青蘭ホシノセイラン日本人よ」

「…何故こんなところに?」

「私もわからないうちに捕まってここに入れられてたの!」

「俺はケント、32歳の日本人だ」

「上の名前は?」

「…それはもう捨てた」

「そう、貴方も死んだの?」

「あぁ、死んで陽気な女神にダーツを」

「一緒!なにあれ?ほんとムカつくんだけど!」

「それはわかるな」


(あの女神はクソだからな)

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