第33話 ワイバーンステーキ
「んじゃ、買い物でもしに行きましょう!」
「…元気だなぁ」
「元気も元気よ!日頃の鬱憤も晴らせたしね」
(リシェルやルビーはそんなに溜まるものがあったんだろうか?)
ミイやスィ、ダウンに至るまで機嫌がいい。
(シンまで機嫌がいいのは皆溜まっていたのか?)
買い物はやはりドワーフが多いからなのだろうが金物がやけに多かった。
そして掘り出し物もそれなりにあって、ミスリルナックル、ミスリルダガー、精霊の弓、なんかが結構安く売っていたので買ってダウン、ルビー、リシェルに渡す。
シンは俺と同じ片手剣なのでミスリルソードを買って渡した。
なぜこんなに安いかと聞いたところ魔法を使う人間が帝国は少ないからしくどちらかというとアダマンタイトで作って魔法付与されたものが高価になるらしい。
所変われば品変わるでやはりこっちに来て良かったと感じた。
夕方まで色々と見て周り、宿に戻って飯を食う。食っていると朝いた奴らが入ってくるなり女将が請求書を渡していた。
女将に食い下がる男達とは別に親方はこっちに来て頭を下げて、
「すまんかったな、気分を悪くさせて」
「…気にするな」
「お前がいいやつで良かったよ」
「…さぁ、気まぐれだ」
「そうよ!いってやんなよ!」
「ケント様はSランク冒険者だぞ!」
親方と周りは一瞬で凍りついた。
「…まぁ、気にするな」
「い、いや、本当にすまなかったな」
「んじゃ酒でも奢ってくれ」
「よ、よし来た!こっちに酒を!」
「あいよ!あんた達、謝らなくていいのかい?」
ダダダっと走ってくると土下座で、
「「「すいませんでした」」」
と謝ってくる。
「ハハッ、別に俺は気にしてない」
「キー!私らが気にしたのよ!」
「そうですよ!バカにしまくってたんだから!」
「…昨日のことだ、忘れてやれ」
「「「ありがとうございます」」」
と土下座のままだ。
「頭を上げて席につけよ」
「「「はい!」」」
女将が酒を持ってくる。
「あいよ!親方の奢りだろ?一番いい酒さ!」
「女将!?ま、まぁ、いいか!さぁ飲んでくれ」
と酒を酌み交わし飲むと流石一番いい酒だ、酒精が高い。
「…カーッ!」
「あははは、ケントのそんな顔初めて見たよ!」
「これは効くなぁ」
「どれどれ…ッカァー!こりゃきついね」
とボン婆も唸るほどだ。
「あはは!美味い酒だな!」
と親方はグラスに注ぐと一気に飲み干す。
「…普通の酒をくれ」
「ハハッ、あいよ」
女将は普通の酒を持ってくると、
「気持ち良く飲める酒が一番美味い酒だからね!こいつらは酒精が高いのがいい酒と勘違いしてるのさ」
「ダハハ、そりゃねえぜ女将!俺らにゃこの酒があってるんだ」
「そうかい。あんまり飲みすぎると奥さんに叱られちまうよ?」
「ダハハ、まぁ、今日はしょうがねえ!」
「まぁ、そうだね」
と笑いながら女将は持ち場に帰る。
(うー、普通の酒がまだいいな)
そんなに強くはないからチビチビと飲む。
「ランクSが来たってのは風の噂で聞いていたがあんたがそうだったとはな」
「…たまたまだ」
「そうか、何か面白え素材は持ってねえのか?」
「ん?」
収納を探してみる。
「ワイバーンしかないな」
「おぉ!ワイバーンか!滅多に取れねえじゃねえか!あいつら肉も美味いんだよ!」
「そうなのか?解体できるか?」
「任せろ!」
というので席を立って外に出てワイバーンを出すと。
「うお!収納持ちか!にしても立派なワイバーンだな!よしっ!ちょっと中で待ってな!おいおめえら」
「「「へい!!」」」
外では何かワイワイやっている。俺たちはそれを肴に飲んでいると、
「あんたあのワイバーンの肉売ってくれないかい?」
「あぁ、料理してくれ、代金はいらない」
「よし来た!あんた!ワイバーンだよ!」
遠くにいる旦那に行っている様だ。
しばらくするとワイバーンの唐揚げなんかが料理として出て来た。
「…美味いな」
(肉が柔らかいが歯応えもちゃんとあるし、味も濃くて美味い)
「肉肉美味い」
「うまうま」
とちびっ子も喜んで食べている。
親方達が戻って来て、肉を食べ酒を煽ってから。
「あの素材で防具作ってやるよ!格安でな!」
「それはいいな!この防具もまだ使えるが」
「黒狼の防具だな?それよりも格段に固くなるぜ?」
「そうか、頼むよ!何人分作れる?」
「まぁ、胸当てで5人ってとこかな?」
「付与もできるか?」
「任せろ!じゃあ、3日は待ってくれよ?」
「あぁ、よろしくな!」
「よし!女将!ワイバーンステーキだ!」
「あいよ!」
この日はワイバーンの肉でみんな満たされた。
(こんなに美味いなら今度から見かけたら狩らないとな)
ルビー達も美味そうに食っている。
「酒を飲めぇ!肉を喰らえぃ!」
と歌っている。
(いい夜だ)
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