第32話 酒場喧嘩
「出発じゃー!!」
ボン婆の掛け声で馬は走り出す。
「…難しくないか?」
「あはは、結構コツが入りますが馬同士の相性もいいみたいですし大丈夫です」
リシェルが御者をやっている。
中ではネアとノアが踊っているしボン婆が楽しそうに歌っている。
(ハハッ!買って良かったな)
護衛はいまはダウンとミイだ、後ろ向きで座っている。
空は快晴、絶好の旅日和だな。
やはり馬車での移動は早くて、思った以上に進んでいる様だ。国境が見えてきた。
「ギルドカードを、ら、ランクS!あ、あなたがあの」
「…なんだ?」
「いえ、それでは良い旅を!」
「ありがとう」
と隣国に入国する時もランクSで驚かれたな。
入国も無事終わると近い場所に街があるので今日は短い距離だが無理せずに宿に行く。
(こっちの街は工場というかそう言う建物が多いな)
街並みは綺麗に揃ってはいるが煙突から煙が出ている。
「ケント様、飯に行きましょうぜ?」
「あぁ、行こうか」
下に行ってみるとルビー達が席を取っていた。
「こっちこっち!」
「…もう頼んだか?」
「軽くね、それよりも凄いのが酒の種類が多いのよ!」
「ウヒャヒャ!いい街じゃ!」
(ボン婆は飲み過ぎ注意だな)
「…あんまり飲みすぎるなよ?」
「分かっとるって」
メニューを見ると裏面全部酒だった。
適当に頼んだやつを食っていくが酒のつまみになりそうなものばかりだな。
ガヤガヤと酒呑達が集まってくる。
「ウヒャヒャ、この雰囲気も楽しいのぉ」
飯を食い終わりネアとノアを抱いて上に上がろうとすると声がかかる。
「おいお前!そんななりしてその子達に何しようってんだ?!」
「…はぁ、寝かせるんだから邪魔するな」
「はいはい、ケントは行っていいから!あんたねぇ!」
ルビーに言われる様に部屋に戻ると2人を寝かしつける。
窓の外にはまだ灯りが見える。
眠くなって来たのでそのまま寝てしまった。
「ケントー」
「チェントォォ」
「ん…あぁ、おはよう」
「おはよざいます」
「ます」
2人の頭を撫でて起きるとダウンがボコボコの顔で寝ていたのでヒールをかけてやる。
「ダウン?何があった?」
「…あ、おはようございます」
「何かあったのか?」
「それが腕っぷしに自信があるやつらしく喧嘩になりまして、最後はブチギレたボン婆が魔法を使おうとしてみんなで止めて」
「…はぁ、喧嘩ねぇ」
「はい…スンません」
「他の奴らは?」
「部屋にいると思いますが」
「…見てくる」
(俺のこと言えないだろ)
ボン婆の部屋に行くとシンが起きていてボン婆は寝ていた。シンは怪我してる様でヒールをかけてやりボン婆は無傷だな。
(ミイとスィはあっちの部屋か)
もう一つの部屋に行くと4人とも怪我をしていたのでエリアヒールを使い治してやる。
「ん?ケント?」
「あ、ケント様」
「…喧嘩?」
「すいません!ちょっとカッときて」
「あいつらが悪いのよ!ケントの悪口を肴に飲み始めたから」
(それはまぁ、なんと言うか)
「まぁいい、下で飯食うぞ」
「「「「はい!」」」」
全員で下に行くと、
「おうおう!お前がケントか?お前のせいでうちのモンが怪我して今日は使いもんにならねぇじゃねぇか!どうしてくれるんだ!!」
複数人の男どもが包帯巻いて後ろに並んでいる。
「…あ?喧嘩だろ?こっちも怪我してたんだから喧嘩両成敗だろ?」
「どこが怪我してんだ?」
後ろを見るとファイティングポーズをみんな取っている。
「…はぁ、俺が魔法で治してやった」
「じゃあうちのも」
「そりゃあんた方の領分だろ?俺には関係ない」
「チッ!金払うから治してやってくれ!」
「…なんで喧嘩になったのか聞いたのか?」
「あん?そんなの知るか!」
「あんたんとこのがうちのケントの悪口を酒の肴にしやがったからだろうが!」
とルビーはまだ喧嘩腰だ。
「で?ケントってのがあんたか…はぁ、どっちみち仕事になんねえから悪いが治してくれないか?」
「はぁ、エリアヒール」
痛みがなくなると今度は罵声が飛んでくるが、
「うるっせぇえええ!てめぇら頭冷やしやがれ!」
と治したのにぶん殴るとはどういう了見だ?
「金貨1枚でいいか?」
「…別にいらん、それより追加では治さんぞ?」
「ありがてぇ!おいテメェら!礼をちゃんとしろ」
「…ありがとう」
とまばらに聞こえるとまた鉄拳制裁がはいって、
「「「ありがとうございました!!」」」
「悪いな!じゃあ今晩また邪魔するぜ!」
と言って男達は帰って行った。
(また来るのか?)
まぁ、いいと下で朝食を食べていると女将が出て来て、
「へぇ、良い男じゃないか。あんたならあいつらまとめてのしてただろうに」
「…喧嘩は自粛中だ」
「ハハッ!良いねぇ!そういう男はモテるよ」
(結局何が言いたいんだ?)
「んじゃこの請求はあいつらに渡すかね!」
(請求書かよ、まぁ、別に良いけどな)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます