第27話 往生際が悪い
男はまだ食い下がる気だな。
「ティムが前金で払ったものがあるだろ?」
「な、テメェには関係ないだろ!」
村人のユーゴだったか?が口を挟む。
(前金なんて話は聞いていない)
「…相手になるぞ?」
「な!あんただって冒険者だろ!金をもらわないとやっていけないだろうが!」
「俺はここに立ち寄っただけだ。別に金はいらん」
「じゃ、じゃあ、俺らが貰っても」
「…お前は馬鹿か?」
「ケント様!こいつは俺が!」
「黙ってろ!」
(こいつは自分のことしか頭にないのか?腹が立ってきたな)
「はい!」
「冒険者なら筋を通せ!前金はもらってるんだ、ここまで来る報酬には見合ったんだろ?なら大人しく帰るのが筋だ」
「ふ、ふ、ふざけんなよ!何がランクAだ!そんな前金ごときで納得できるか!」
そいつは剣を抜いた。
「こいつに払った額は?」
「金貨1枚です」
「十分じゃな」
ボン婆が後ろで頷く。
「か、金がいるんだよ!お、お前らも手伝え!」
他の冒険者に助けを求め出す。
「やばいって!ランクAに勝てるわけないだろ!」
「俺はやらねぇぞ!お前だけで何とかしろ!」
仲間はいないらしいな。
「ち、ちくしょう!あ、あんたさえこなけりゃあと金貨1枚は出てたのに!」
前金で金貨1枚に成功報酬でもう1枚?
「は?ティム?」
「いや、そんな話はしていない!あと残りは銀貨50枚だったはずだ!」
ティムはそう叫んだ。
「おい、どっちが本当なんだ?」
「そいつの言う通り銀貨50枚だよ」
仲間がそう言うとワーウルフを指差す。
「…あぁ、こいつを売るつもりだったのか?」
黒いワーウルフ、高めで売れるだろうがこれは俺が倒したものだ。収納に入れる。
「な、し、収納持ち!おい!返せよ!」
(なぜ返すになるんだ?馬鹿すぎるだろ?)
「…お前みたいなやつにはやれないな」
「く、くそっ!」
「もういいだろ?帰るぞ?」
仲間がひきづって帰ろうとすると、
「…お前のせいだ!金出せ!」
ティムに向かおうとするのを見て全員が動く。
「な、な、なんでだよ」
全員が戦闘体制だ。首には俺の剣が薄皮一枚で止まっている。
「…もう喋るな。帰るなら斬らない」
「く、クソォ!」
と言って項垂れた男を連れて男達は去っていった。
「あ、ありがとうございます。これ少ないですが」
「いらん!獲物だけで十分だ」
「あ、ありがとうございます」
「ケント様!あいつら村の前で隠れています!」
「…ふぅ、そんなことだと思ったよ」
(とりあえず明日だな)
「みんな、とりあえず野営の準備して寝るぞ」
「「「はい」」」
“カラッカラカラ!”
「な、なんだ!」
さっきの男達だ。足元に音のなる罠を仕掛けておいた。
「はぁ、お前ら強盗か?」
「な!だ、騙しやがったな!」
「勝手に引っかかっただけでしょ?」
ルビーに言われて顔を赤くする。
もう周りはだいぶ明るくなっていた。
「…もう容赦はしないぞ?」
「お、俺らはもういい!逃げるぞ!」
「あ、お前たち!く、クソォ!」
「…本当に勝手な奴らだな」
“トス”
逃げた1人に矢が刺さる。
「お、俺らは関係「あるだろ?」ちっ、ちくしょう!お前のせいだからな」
全員が動けなくなると縄で縛る。
「な、なぁ、これはやり過ぎじゃないか?」
「はぁ?あんたら私たちを殺そうとしといてよく言うわね」
「お前のせいだぞ!」
「ゴラフ!恨むからね!」
「お、俺のせいだけじゃねーだろ!お前らだって乗ってきたじゃねーか!」
こいつらは兵士に連れて行く。
「…世話になった」
「いえ!こちらこそお世話になりありがとうございました」
「本当にありがとうございます」
「あんたらまたウルフが来たらサッサっと冒険者ギルドに言いなよ!」
「「はい」」
ゴラフとか言う冒険者達は縄に繋がれたまま馬車に繋いで走らせる。
「ひぃ、ひぃ、ひぃ」
「オラ走れ!転けてもそのままだからな」
とダウンが声をかけている。
二晩野営してようやく次の街に辿り着いた。
ここが辺境伯領なのか?
門に並ぶと兵士が寄ってくる。
「どうしたそいつらは?」
「あ、こいつら盗賊紛いのことをした冒険者です。私達を殺して金を奪おうとしたんで捕まえました」
「はぁ、何だってお前らそんなことしたんだ?」
「ひぃ、ち、違う!やろうとしたのはこいつだけだ!」
「!ふ、ふざけるな!お、お前らも一緒だ」
「まぁいい渡してくれ、あっちで話を聞くから。これを持って明日にでも来てくれるか?」
「はあい!」
(こう言う時はルビーが頼りになるな)
これで荷物は減ったからあとは宿だなぁと考えていると、
「さっきの!お前らは冒険者に何をした!」
「は?いやいや、冒険者は私らも冒険者なんだけど?」
「あいつらは金を払わない村から金を貰いにいっただけだと証言してるぞ?」
「…はぁ、これ」
「ん?ら、ランクA?な、ならあいつらが嘘をついていると?」
「…嘘はついていないが言ってないことが多すぎる。モンスターに襲われた村を救ったのは俺たちで、あいつらは後から来た」
「な!あいつら馬鹿にしやがって!わかった!絶対吐かせてやる!すまんな」
「…あぁ、わかったならいい」
(本当に往生際が悪いな)
ようやく俺たちの番になって、中な入るとすごい混雑ぶりだな。
馬車を宿屋に預け、部屋を取ると外に出る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます