第26話 ワーウルフ


 魚醤はあったが臭みが強くてとても食べれたもんじゃなかった。やはり塩焼きや干物なんかで食べるのが良さそうだ。

「…仕方ないか」

 あとはツミレ汁なんかも良さそうだが。

 と台所を借りてツミレを作る。

 味噌も醤油もないから塩味だが結構いけるな。

「ケント様美味しいです!」

「こりゃいいのぉ!食べやすいぞ」

「ほんとだふわふわしてる」

「魚の味が濃いですね」

 と大好評だった。


 ここから向かうは辺境伯領だ。

 ここはまだいいが、辺境伯領では戦争ではないが隣国との小競り合いが多いそうだ。

「どうする?やめるか?」

「なあに、ちょっと立ち寄るだけじゃろう」

「そっすよ、辺境伯は強いんで有名っすから大丈夫っす」

 ということで辺境伯領にいくこととなった。

 

 野営を2回して何事もなく辿り着いた村は、異変があった。

 怪我人が多く外にいてピッチフォークと呼ばれる牧草などに使う柄の長い湾曲した刃先があるフォークを構えていた。

「何があった?大丈夫か?」

「…エリアヒール」

 怪我人が多いところで使ってやる。

「か、回復魔法?あ、ありがとうございます」

「しかし、これは酷いな」

 村はどうにか原型を止めているだけであちこちに爪痕が残っている。

(これは何の爪痕だ?魔物の襲撃?)

「この村にいてはいけない。すぐに離れて下さい」

「…何があった?魔物か?」

 村人は言いづらそうに、

「…最初は家畜が盗まれるだけのよくある話だったのですが」


 どうやら家畜を守るために村人が戦ったのはワーウルフだったようで、人間の味を覚えたワーウルフはこの村を襲うようになったそうだ。


「私達は最後まで戦います!ですから、あなた方は逃げて下さい」

「…はぁ、ボン婆?やるか?」

「あーはっはっは!ワシに最初に聞くことかね?」

「…フッ!お前たちやるぞ?」

 やる気のボン婆を見て皆がやる気になっている。

「「「「おー」」」」

「「うおー」」

「ネアとノアは家で待機だ。隠し玉だからな」

「「おおー」」

 と言うと2人揃って空き家に入って行く。


「ほ、本当に助太刀に?」

「まぁ、もうじき日も暮れるしな?なら迎え撃つ」

「よしっ!俺たちだってやるっすよ」

 とダウン達もやる気だ。

「…ワーウルフは何匹だ?」

「ワーウルフは1匹だ、あとはファングウルフの群れだ」

「…ならいけるな?」

「「「おう!」」」


(村人達の傷は回復したが10数人で村人が勝てるわけないだろ?)

「なぜ、冒険者に依頼を出さない?」

「ここにはギルドがないのと、依頼を出しに行ったやつが帰ってこない」


(どこかで命をなくしたか、盗賊、魔物?それか逃げたかだな)

「逃げるような奴じゃないから多分もう…」

「これが終わったら辺境伯領に行く、途中で会うかもな」

「…あぁ、ティムって野郎だ」

 会えればいいがな。

「さて、魔物なら遠慮は要らんわな」

「…そうだな」

 ボン婆も杖を取り出している。


 夜も更けてきてオオカミの遠吠えが聞こえた。そろそろだな。

 村の四方には松明を付けてある。

 が、

「グアッ!」

「なっ!」

 誰かやられたのか?

「ライトォー!!」

 ボン婆の声で目を瞑る。

 眩い閃光が辺りを照らすと黒いワーウルフがそこにはいて目がやられたようだな!


「オラァ!」

“キン”

『ガアァァァァ!』

 ダウンが攻撃したが跳ね返される。

 闇雲に暴れ回るワーウルフ、他のファングウルフは目をやられミイやスィ、リシェルなんかに倒されているのであとはこいつをどうにかすればいい!


「…アクセル」

 アクセルを使いワーウルフの懐に入ると胸を刺し、押し込む。

「ガアァ…ぁぁ」

「…これでおしまいだ」

 と剣を捻る。

「ガアッ!」

「グッ!」

 俺の頬に傷が付きワーウルフは逃げた。

「ケント様!」

「大丈夫だ。ヒール」

 自分の顔にヒールをかけ、血痕を辿るとワーウルフがいた。


 もう息はないようだ。


「よし、終わったぞ」

「「「「うおぉぉぉ!」」」」

 皆は勝鬨を上げる。

 涙を流すものが大半だな。


「おいおい、何だこりゃ?終わってんじゃねーか!」

 大男が門から入ってきた。

「ティム!連れてきてくれたのか!」

「ユーゴ!ま、まさかもう終わったのか?」

「あぁ、喜べ!ワーウルフは討ち取ったぞ!」

「あ、あぁ、良かった!」

 どうやら冒険者を呼んできたみたいだな

(しかし一歩遅かったな、だが筋は通したんだからいいんじゃないかな)


「おぉ、いい獲物じゃねーか!これをもらってくぜ!なに?!」

「…それはお前が触っていいものではない」

「て、テメェ何なんだ!こっちはランクCだぞ?」

「…俺はそんなことは聞いていない」

「ケント様はランクAだ!」

 ダウンが横から口を出す。

「な、なんだと!い、いや何でもない!俺たちは金を貰って帰るとするよ」

「…は?成功報酬だろ?なぜ倒してないお前らがもらうんだ?」

「か、勘弁して下さいよ!俺たちだってきたじゃないですか!」


(男は下手に出ているが金をもらうのは筋が通ってないだろ?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る