第28話 メンテナンス


 外に出ると混雑している、中でも冒険者が多いのが目に映る。

「ここは辺境だから魔物も強いのがでるんですよ!」

「…ほぉ、そう言うものなのか?」

「はい!魔の森が近いですから冒険者も稼ぎがいいんです」

「なのにあいつらはわざわざあの村まで」

「多分ここじゃ稼げなかったんじゃないですか?魔物が強くて勝てないとかで」

「…ふうん、そうなんだな」

 ボン婆とルビーは早速買い物に出かけたみたいだ。

「お前らも好きなもの買ってこいよ」

「…へ?金貨でええ?こんなに要らないっすよ!」

「ケント様は?」

「俺はネアとノアのお守りだな」

「私達もご一緒しますから一緒にいきましょ」

「…分かった」

 みんなで買い物をして行くがダウンやミイ達が頑張って警護してくれているからこんなに自由にできているんだ。

「…悪いな」

「何言ってんすか!ネアとノアはもう妹みたいなもんですからね!」

「…そうか」

「うっす!可愛いもんですよ」

 と優しく撫でるダウンに気持ちよさそうにしてる2人。


 街を散策する、やはり辺境伯領良さげな武器も売っているな。そうだ、ミスリルソードをここで磨いてもらわなければな。


「…これをメンテナンスしてくれ」

「は?こんなガラクタ…ではないな、どこでこれを?」

「…その情報は必要か?」

「いや、必要ないな!じゃあメンテナンス費用で金貨10枚だ」

「…わかった、これでいいだろ」

「よっしゃ!やる気が出てきた!綺麗にしてやるからよ!」

 よし、これで新しい武器も手に入るな。


 そのあとは露店を周り色々と物色して行く。やはりそこまで掘り出し物はなかったがダウンに力の腕輪を、ミイには素早さの指輪、スィには魔力の指輪があったので買って渡した。

「ありがとうございます!」

「こ、これはそういう?」

「…大事にします」

 と三者三様の対応だったが別に気にする必要はないだろう。

 ボン婆達を見つけたが何やら値切っていたので無視することにした。


「こりゃ、待て待て!無視する気かい?」

「…気づかなかった」

「嘘つけ!あれが欲しいのじゃ!」

「ん?あれは小盾か」

(ミスリルだな)

「いくらだ?」

「金貨10枚から負けてくれんのじゃ」

「はぁ、じゃあそれ買うよ」

「毎度!ばあちゃんには負けそうだったぜ!兄ちゃんきてくれて助かったからこれおまけだ」

 とくれたのはミスリルのボール?

「そっちを私にくれ」

「…あぁ、小盾は?」

「ケントが必要じゃろ?」

(まぁ必要だな)

「…ありがたくもらっておくよ」

「いいってことよ!」

 とボールに魔力を通して遊んでいるのを珍しそうにネアとノアの2人が追いかける。


「ミイ、さっきの武器屋でこれをメンテナンスに出してきてくれないか?」

 と言って金貨10枚を渡す。

「分かったよ!行ってきます!」

「…気をつけて」

「は、はい!」

 ダウンはネアとノアにかかりっきりだし、何故か腕にしがみつくスィがいるしな。

「スィ?動きづらいのだが?」

「ケント様をお守りするんです!これくらい近くにいないと」

「…まぁ、いいか」

「やた!」

 

 そうしながらボン婆達とも一緒にまわってると今度はルビーがいた。

「お!ケント!スィ!あまり引っ付くなよな!」

「ぶー」

「ダメですよ?一番奴隷は私ですから!」

「いてててて」

 とスィの耳を引っ張り剥がすリシェル。

 すかさずその場所をリシェルが取り引っ付いて離れない。

 

 まだ露店を見て周り気づくと夕方になっていた。

 宿に戻り風呂がある宿だったので大浴場にダウンと一緒に入る。

「…それは痛くないのか?」

「あぁ、奴隷紋ですか?痛くないですよ!」

 と言われるがやはり左胸についているのは目立つな。

「ほかのやつもそこなのか?」

「いえ、場所は色々違うみたいですね」

(そうか、あまり人に見られたくないだろうな)

「いまは、自分以外はわかりませんが、ケント様の奴隷だと言う証で嬉しいと思ってますよ?騎士の忠誠みたいじゃないですか!」

「…それは言い過ぎだ」

(まぁ、ダウンが良ければいいけどな)


「…上がって飯でも食うか」

「ですね!今日の飯も美味いといいですね」

「あぁ、そうだな」


「あっ、こっちこっち!勝手にもう頼んじゃったからね」

「あ、いいっすね」

「…そうだな」

「ご飯ご飯!」

「うまうま」

 2人の頭を撫でてやる。

 押し付けるように膝の上に乗ってくる。

(こんなに可愛いのに奴隷なんて可哀想だな)

 2人にも奴隷紋がついているのだろう。


「ここは高級店だぞ!何で奴隷が一緒の席で食べてるんだ!胸糞悪い!」

「…あ?」

「ケント!ダメだよ!」

「つまみ出せ」

「「はい!」」

“ガタッ”

「ケント!」

「…あ?」

「そこの、グアッ!」

「テメェ、グハッ!」

「…弱えな」

(俺の仲間を何だと言ったんだこいつは?)

「やべえっす!ケント様がキレてるっす!」

「あーぁ、わしゃ知らんぞ?」

 酒を煽るボン婆。

「な!お前俺が誰だか知らんのか?」

「…知ってどうする?あ?俺の仲間を侮辱してんじゃねぇぞ?」

「おい!お前ら立て!」

「あ、足がうごかねぇっ!」

“ドン”

「グアッ」

「ほら。お前もかかってこい」

「くっ!俺はこの辺境伯領の領主の息子!コバッ!」

 頭を肘鉄で撃ち、そいつは倒れた。

「な!あ、あんた、やり過ぎだろ!たかが奴隷ゴバァ」

「奴隷なんて俺には関係ないんだよ!」

 3人を掴んで外に放り投げる。

 スッキリしたら腹が減ったな。


「…よし、食うぞ」

「「「「はい」」」」

「「はぁーい」」

「あんたどんどんキレやすくなってない?」

「…さぁな?」

「あたしゃ、グッときたけどね」

「まぁ、ケント様ですから」

「ケントが負けるなんて想像がつかないかな?」

(好き勝手に言って…まぁ、負ける気もしないけどな)

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