第21話 帰還


「うおぉぉ!」

「…まだ盛り上がってる」

「しょうがないさ!撃退しかできなかったんだ!倒せたのはもちろんケントのおかげだよ」

(だが危なかったな、というかデカすぎる相手は初めてだ)

「よう飲んどるか?」

「キン爺飲み過ぎだろ?」

「ワシが生きてるうちにあの地龍が倒せるなんてこんなめでたい日は、、、ない!」

 相当やっているようだな。

「ほらこれやるからあっちで分けなよ」

「お!肉串じゃないか!まだ隠し持っておるの?またもらいにくるからの!」

 キン爺はまた若者の中に入ってどんちゃん騒ぎだ。

「本当にありがとう。ケントがいてくれてよかったよ!」

「…まぁ、倒せてよかった」

 ライル師団長と酒を酌み交わす。

 みんなが寝静まるとさっきまで戦っていた場所を見る。丸く凹んだ所が地龍の倒れた場所だ。

 ここからでもその大きさがわかる。


「横いいかな」

「…どうぞ」

 キン爺が横に座る。

「ふぅ、デカいもんだな」

「あぁ、月明かりでクレーターのようだ」

「ケントはどこから来た?」

「…さあな」

「ワシにも教えんのか?」

「…俺にもわかんないんだよ」

「そうか、ではやはりこの世界ではないのだな」

「…フッ」

「ハハハ」

「…何故わかる?」

「そりゃクレーターなんて言葉聞いた事ないからじゃ、それに奴隷にも優しく、そして何より強い」

「…神が与えてくれた力だ」

「そうか、そりゃ地龍如きに負けておられんな」

「なぁ、キン爺は俺と似たようなやつを知らないか?」

「噂はないな、だが伝記になっておる。その者、強く優しく勇ましい。男、女、奴隷、にいたるまで平等に分け隔てないその姿は神そのものだ、とな、だがただそれだけしか残っておらん。今のお前に似ておらぬか?」


「…俺はそこまで優しくない、悪は悪と感じるし罰するべきだと思っている」

「ハハハ、そりゃそうじゃ、悪いものは罰し、良いものは救うで良いと思うぞ?じゃないと人ではない。とんでもない悪党か神じゃろう」


 その後もキン爺と話をする。息子さんの話も聞いたし、俺も何故かこの世界に来る前の話をした。

「そろそろ寝るか」

「…そうだな」


 そして朝が来るとみんな二日酔いで頭を抑えながら帰路につく、2日かけての凱旋だ。

 王都に帰り着くと皆が手放しで喜んでくれる!

 俺は端っこで小さくなっているが、キン爺に腕を引かれ歓声を受ける。

(俺はこういうのは苦手だな)

王城まで行くと王都から王城までの長い道に広い敷地があるがそこに地龍を出すように言われる。

 血まで薬になるそうでみんなタルを持ってスタンバイしているので収納から出すと、皆が必死になって樽に血を汲んで蓋をしては次と血だらけになりながら頑張っている。

 よく見なくてもやはりデカいな。

 闇魔法を教えてもらって良かった。


 収納してくれと言われ収納すると、皆血だらけだが笑っている。タルが足りなかったようだ。

 そして王にまた会うと今度は2万枚の金貨を渡された。そしていつもの宰相とのやり取りの後逃げるようにまたさっきの場所に行く。

 結局3回も繰り返してようやく血が落ち着いてきたようだった。

 地龍もこれだけやって貰えば倒された甲斐があっただろう。

「よし!解体して行くぞ!」

「「「「オォォォォォ!!」」」」

 解体にはギルドからも人が出てきて解体して行く。皮を剥ぎ取り肉を切り分け骨に至るまでまるまる4日はかかったな。


「ケント!ありがとうな!」

「…いや、俺は何もしてない」

「収納してくれてただろ?」

「…あぁ、それくらいお安いご用だ」

「ハハハ、またな!」

「…おう」


 そして、やっと宿に帰るとルビーが飛びついてきてキスをする。

「プハッ!やっと帰ってきた!」

「な、な、何でそんなことするんですか!」

「したかったからに決まってるでしょ?」

「ケント様私も!っうわ!」

 とリシェルを押し除けてきたのは、ボン婆達だ。

「ケントーー!帰ってきたのじゃな!」

「…あぁ、待たせたな」

「今回は長かったな」

「…あぁ、シンも金は足りたか?」

「あれだけあれば足りるに決まってるだろ?」

「ケントォォ」

「チェントォォ」

「ネアにノアも元気だったか?」

「「げんきぃ!」」

「…そうか、それはよかった。それよりルビーはそろそろ離してくれないか?」

「いいでしょ別に」

 まぁいいか、リシェルがすごい顔で睨んでるから頭を撫でてやる。

「健人様の手…」

 とそのまま握られて、できれば離して欲しいのだがな?

「昼飯食べたいな」

「はい!すぐに!」

 とリシェルは注文をしに行くとみんなで下に降りて行く。

「ケントが帰ってきたことにカンパーイ」

「「「カンパーイ」」」

「ハハハ」

「美味しい?」

 とネアに聞かれる。

「あぁ、みんなと食べると美味いな」

(そりゃ男に囲まれての食事も楽しいが女の子に囲まれていた方がそりゃ嬉しいだろ?)

 

 そのあとやっと久しぶりに1人で寝れた。

 

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