第19話 魔法屋


 支払った金はまだあと4日分もある。

「なぁんか買い物も飽きたわね」

 とルビー、ボン婆も、

「そうじゃの、いい酒もあまりないでのぉ」

(結局金貨1枚の酒を買っておいて言う言葉かよ)

「…まだボン婆に教えてもらってない魔法はあるか?」

「おう、そうじゃったの!儂ができんのはその教えてない魔法じゃ。重力魔法、空間魔法、時魔法、あとは古代魔法じゃ」

「…重力はなんとなくわかるけど」

「そうじゃの。魔術書が売っとるはずじゃで買いに行くか」

 と言うことでみんなで買い物に出かけると魔法屋というところがあった。

「いらっしゃいって、多いわね」

「邪魔するよ」

「え。ボン婆??」

「なんじゃ。メリッサじゃないか?」

「わぁ、久しぶりねぇ!」

 知り合いだったらしい。

「なになに?どうして王都へ?」

「儂達の村が潰されてのぅ、奴隷として売られそうなところを助けてもらったんじゃよ」

「え?村がなくなったって?み、みんなは?」

「儂とシン以外は」

「そ、そんな」

 メリッサは泣き出してしまった。それを優しく頭を撫でるボン婆。


「し、失礼したわね。もう大丈夫。それよりあの小さかったシンがねえ」

「何年経ってると思ってるの?」

「そうよね。私も歳をとるわけだわ。あ、そう言えば魔法屋に用があってきたんでしょ?」

「おう、そうじゃったの!これはケントじゃ儂らを助けてくれた、今は仲間じゃな」

「へぇ、いい男ね」

「こりゃ!ダメじゃぞ?で、ケントは全属性持ちじゃ」

「…へ?うそよ?そんな人いるわけないわ?!」

「ケント、手を持ってみてくれんか?」

「…あぁ」

「…うそ、本当にそうなの?凄いわね貴方!」

「そうじゃろ!って、手を離さんかい!」

 と言って手を離される。

「あぁ、それで魔法屋ね?」

「そうじゃ、魔法書はあるかい?魔導書でもいいんじゃがの?」

「うちは品揃えがいいのよ!魔導書は時魔法まで置いてあるわよ?」

「おお!いいじゃないか、あと覚えてないのが重力、空間、時魔法、古代魔法じゃ」

「いいの?あまりマケてやれないけど?」

「金払いもピカイチじゃぞ?」

「じゃあ、重力が金貨15、空間と時魔法が20枚よ。全部で金貨55枚もするのよ?」

「…これでいいか?」

 金貨を55枚支払うと、

「…私の旦那にならない?」

「ダメに決まっとるじゃろうが!」

 ペシっと手を叩かれるメリッサ。

「じょ、冗談よ!今持ってくるわね」


 三冊の魔導書が置かれた。

「これは魔導書じゃで、適性があれば開くだけで覚えられるぞ」

「あぁ、一度生活魔法の魔導書は読んだことがある」

「それはよかった、じゃあ読んでみるがいいのじゃ」


 まず重力から順に捲っていく。

 パラパラと全て捲り終わるとパタンと閉じて消えてしまう。

 三冊全部終わったので頭の中はパンク寸前なのかキシキシ痛むな。

「本当に全部覚えちゃったのね」

「わ、私に火の魔導書下さい」

 とまだ火の魔法が得意ではないルビー。結局、火の魔法を覚えるために買っていた。


 少し落ち着いてきた。

「大丈夫かえ?まだゆっくりしとくがいいのじゃ」

「そうよ、三冊いっぺんに、それも難しい本だからね?」

 と言われて早く言って欲しかったと思うところもあるが、まぁ、痛みがなくなってきたのでなんとかなるか。

 ルビーも魔導書を読んだようで多少混乱しているようだ。

「「大丈夫?」」

 ネアとノアが?膝に乗ると頭をさすってくれる。

「…あぁ。大丈夫だ」

 ようやく頭がスッキリしてきた。

 重力で使えるのは重力弾、グラビディ、ウェイトライト、の三種類。

 空間魔法は、収納、断絶、テレポートの三種類。

 時魔法は、アクセル、ストップ、の二種類。

 そして空間魔法と時魔法を覚えた俺だけが使える時空間魔法が、少し先の未来が見えるビジョン、空間を停止させるスペースタイムの二つの魔法。


「…凄いな」

「そりゃ凄いさね」

 ボン婆も興奮している。


「はぁ、私もこの店がなかったらついて行ってるとこだよ!」

「あんたは魔法屋頑張んなよ!」

「まぁね!」

 魔法屋から出るとみんなでワイワイしながら街を練り歩く。

 

 都会なだけあっていろんなものが売っているがガラクタも紛れ込んでいる。

 

(これは黒鉄の剣より遥かに強いのか…)

「おぉ、兄さんお目が高い!そりゃ掘り出しモンだよ」

「…いくらだ?」

「そうだな、金貨100枚ってとこかな」

「ではよしておこう」

「そりゃないぜ!じゃ、じゃあ、金貨20枚でどうだ?」

「あまり値切ってもな…これでいいか」

「毎度!ありがとう!ありがとうございます!」

(ミスリルソードか、後で武器屋にだすか)

「あー、そんなもの買って!ボロじゃん!」

「…これでいいんだ」

「あっそ、あ、これよさそう!」

「それはガラクタだ」

「な、なんでわかるのよ?」

「鑑定があるからな」

「な、鑑定持ってたの?なら早く言ってよ!」

「じゃあその剣は?」

「…ミスリルソードだ」

「うぉ!まじで?」

 とそれから見るもの全て鑑定させられる。

「はぁ、そんなに掘り出し物はないのね?」

「…まだよかったじゃないか」

「あぁ、これ?デザインが趣味じゃないけどいいものだしね」

 ルビーはベルトを買った、単純にスピードが上がるダブルベルトだ。

「にへへ」

 案外気に入ってるじゃないか。

 いまは邪魔だからミスリルソードはとりあえず収納に入れておく。その内武器屋に出さないとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る