第12話 魔法使い


 買い物を済ませた俺たちは、また下で夕飯を食べる。

 ネアやノアもご飯がちゃんと出てくるまで我慢し、がっつくことも無くなったな。

「美味いか?」

「「はい」」

 と和やかな食卓だ。

 こいつらとどこか田舎でスローライフもいいかもな。

 まぁ、まずは都会を見てからだな。


 次の日には馬車に乗って王都に向かう。

「…またか」

 馬車がまた立ち往生しているので、

「おい!何があった?」

 と声をかけてみるが応答はなし。

「…はぁ、いってくる」

「お気をつけて」

 とリシェルが言う。


 前を見に行くとやはり殺されていた。

「…出てこい!」

「チッ!やっぱりもうちょっと離れてからの方が良かったんじゃねえか?」

「しょうがないだろ、後ろの馬車の方が速かっただけだ」

 4人の男女が出てきた。護衛か?

「お前もさっさと行けばよかったのに!」

「…通れないだろ?」

「そりゃごもっとも!んじゃ死んでく」

 飛んできた矢に頭を射抜かれる。

「なっ!」

「こっちも1人じゃないんでね」

「さっさと殺すぞ」

「…はぁ!」

(護衛が何でこんなことを?)

 と思いながら俺の目の前の男は首から上が飛んで落ちる。

「この!」

 腕を切り無力化する。

「テメェ!」

 また矢が飛んできて頭に刺さり倒れる。

「…お前たちは護衛だろ?何でこんなことを?」

「はぐっ!こ、こいつの金払いが悪いからよ!だから全部奪ってしまおうってわけさ!」

 と女盗賊?は腕を庇いながら言い放つ。

「はぁ、そんなことか」

 女の腕を治すと縄で縛り上げる。

「あんた腕がいいね!私を仲間にしないかい?」

「…間に合ってる」

 収納で死体を収納して行く。

 女はルビーが口枷をして馬車に乗せる。馬車ごと収納しようとしたがまだ誰かのっているようだ。

 中身を収納して行くとこれもまた鉄格子つきの馬車だった。鍵を出して開けると年老いたお婆さんと若い女だ。

「…なぜ捕まった?」

「…」

「まぁいい。外に馬車があるからそこに乗ってくれ」

「わかった」

「ありがとよ」

「いいよ婆さん、気にすんな」

 2人を出すと馬車を収納する。

 馬を逃す前に、

「おい、そういえばあんたら帰る場所はあるのか?あるなら馬車を渡すが?」

「ないよ、村は全部焼かれちまってねぇ」

「私達がその村の生き残りだ」

「…そうか、王都まで行くが乗って行くか?」

 お婆さんは頷くと馬車に乗り込んでいく。

「ありがとう」

 と一言言うと気の強そうな女は婆さんの後を追って中に入っていった。


 馬は逃がすことにしてまた馬車に乗り込む。

 間からルビーが顔を出してきて、

「多分魔法使いの村の人達じゃないかしら?魔法使いの村は結構あるからね」

「魔法使いか、じゃあ教えてもらえたりするかな?」

「無理じゃない?適性がないと」

「…そうか」

 後ろではお婆さんがネアとノアと3人で遊んでいるようで何かの歌を歌っている。

 リシェルとそれを聞きながら馬を走らせる。

 にしても盗賊崩れが多すぎるな!本当にこの世界は大丈夫か?


 次の街が見えた頃にはもう夕暮れ時だ。間に合わないと思い馬車を止めて野営の準備をする。

 馬を繋いで餌と水を与えるのはリシェルがやってくれているので、俺はルビーと料理を収納から出して並べて行く、焚き火をし、火を絶やさないように薪をくべていると婆さんが横に座って俺の手を取る?

「ふぅ、たまげたね、全適性持ちだね」

「…それは何だ?」

「魔法のことじゃよ、あんたはいい男だから教えてあげようかね」

「…まぁ、教えてくれるなら」

「そうかいそうかい、ならまずは火の魔法と行こうかね」

「それよりも他の奴にはないのか試してくれないか?俺だけに教えるよりもいいだろ?」

「あんたは独占欲がないのかい?まぁいい、見て回ろうかね」

「いや、みんな並んでくれ」

「あら、優しいねぇ」

 そうして婆さんの魔法の診断が始まって、ルビーは火に適正が、リシェルは風、ネアは氷と土、ノアは風と雷に適性があると言われた。

「じゃあ先ずは火からだからルビーとアンタだね」

「俺はケントだ、婆さんは?」

「あたしゃボン婆と呼ばれていたよ。そしてあの子は」

「私はシン、火、水、土、風の四つの魔法を教えてもらった」

 シンはきつそうな感じだが金髪の髪をショートカットにしている。服はリシェルのが合ったみたいだ。


「では教えて行くよ?」

「…あぁ」

「はい」

 結構ハードな教え方だな。腹を殴られここに集中!なんてザラであまりにも出来が悪いと頭を叩かれる。

「あたしゃ厳しいからね」

 ボン婆さんは笑いながら飯を食べネアとノアに囲まれて寝てしまった。


 まぁ、街のすぐそばだから野党もいないだろうが、一応警戒のため寝ずの番だ。

 ルビーはその間もずっと魔法の練習をしている。

 リシェルもシンに教わっているようで熱心だな2人とも。

 夜が明けてうっすら霧がでている。

 少し肌寒いくらいの朝だな。

 火に薪をくべて暖をとる。

 まぁ、急ぐ旅でもないからまだ寝かせといていいだろうと思ったらボン婆さんが起きてきた。やはり硬い馬車の中で凝ったのだろう、体を動かして体操をしている。

「…元気だな」

「あたしが元気な間に覚えてもらうからね!」

「…はいはい」

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