第10話 後衛


「リシェル!」

「はい!」

“トス”と頭に矢が刺さり倒れる魔物。

「…凄いな」

「百発百中ね」

 今はリシェルがどれだけ戦力になるかをテストしているところだ。だがまだ一本も無駄打ちしていない。

「リシェル凄いわね!これならすぐにでも戦力よ」

「は、はい!ありがとうございます」

(まさかこれほどとは思わなかったな)

 魔物は全て一撃で倒せている。

 これで後衛は強化された。


 3人になって御者が出来るのがルビーとリシェルなので俺も習いたいと馬車を買うことにした。ただの荷馬車だが人が乗れる椅子が左右についている。いわゆる客車だ。

 揺れてしまうのはしょうがない。

 クッション代わりに藁を買って布を被せて留める。これだけでもだいぶ違うだろう。


 御者も同じように座る場所に藁を敷いて布で覆った。

 

 さて、そろそろ出発しようか。

 御者はリシェルで俺が横にいて教えてもらう。間から顔を出してるルビーが可愛いので頭を撫でてやったら引っ込んだ。

 やはり安易に頭を撫でてはいけないらしい。


 門を出て道なりに進む。

 

 やはり歩くのよりとても早いな。

 この世界の乗り物はやはり馬車一択なのでもうちょっと発展しててもいいと思うのだが。


 急に前を走る馬車が速度を落とした。

 こちらも落とすしかなさそうだ。

「…なんだ?どうかしたのか!」

 と前に話をするが返事がない。

 一応警戒しててくれと言い剣を抜き前に出ると御者に矢が刺さっていたので警戒すると、矢が飛んできたので斬り落とす!

他にも護衛らしき人物が3人倒れている。

「出てこい!」

 すると弓を構えた男が4人ほど出てきた。

「なんだ?盗賊か?」

“ヒュン”

 と言う音と共に男が1人倒れると、男達が慌て出す。

“ヒュン”

 とまた音を立てて飛んで来る矢はリシェルだろう。

「ま、まて!俺たちが悪かった!」

 と弓を捨て出てくる2人。

「何のために襲った?」

「こ、こいつは違法奴隷を取り扱ってるやつだ!それを殺して何が悪い!」

「俺にも矢が飛んできたが?」

「そ、それは」

「お前たちのやってることは盗賊と同じだろ?」

「ち。ちがう!」

 男達は焦っているようだ。


「そ、そうだ!積荷を見て見るといい!」

 積荷を改めて見ると外からは荷物が積んであるようにしか見えないが、どかして行くと半分から奥は鉄格子がついていて、奴隷の子が2人いた。

「…分かった、が、奴隷をどうするつもりだ?」

「そりゃ俺らが売って」

「馬鹿!」

「あ、」

 すぐさま首を切り落とした。

「ち、違うんだ!です!こ、こいつはそうかもしれないが!」

「お前も一緒だろ?」

「ち、チクショ」

 首を落とした。


 これで、全員がただ奴隷を欲しがっていただけの盗賊ということだな?

 いや護衛の人間は関係ないか。

 収納でひとまとめにして草原に捨てる。金はいらないだろうともらっておく。

 ギルドカードを見ると商人の方は商業ギルドのランクBの商人だった。鍵を見つけたのですぐに他の荷物は収納して鉄格子を開けてやるが、出てこようとしない。

 幼い子2人だけだ。

「ルビー?この2人をそっちに乗せてやってくれないか?」

「…わかったわよ、てかまた奴隷が増えてるじゃないのさ!」

「…こ、これは不可抗力だ」

「まあ、それは認めるけどね」

 ルビーに連れられて出てきたのは獣人の女の子2人だ。2人とも怪我をしているのでヒールで治してクリーンをかけてやると、尻尾が2尾の猫獣人?猫又?


「あんた達は珍しいから捕まえられたのね?家はどこ?」

「家なくなった」

「私達帰るとこない」

「あー、こんなこっだろうと思ったわよ」

「…あんまり騒ぐなよ。ビックリしてるだろ?」

 俺の後ろにすぐ隠れている。

「しかも懐くのはやっ!あんたタラしすぎて本当に嫌になるわ!」

「それよりそっちに乗せよう。早くしないとまた馬車が来るだろ?」

「…わかったわよ、早く乗りなさい」

「「はい」」

 俺は馬車も収納して、馬は逃した。


(これで痕跡は無くなったな。それにしてもどうするべきか)

 リシェルの横に座ると出発だ。

 間から顔を出してくる2人の頭を撫でてやる。

 ゴロゴロと喉を鳴らすのはやはり獣人だからなのだろう。

「それより奴隷契約するわよ!」

「え?じゃあルビーが」

「あたしがやってどうするのよ!ケントが面倒見なさい!」

「…ダメ?」

「そうよ!それにあたしよりケントに懐いてるんだから!」

(はぁ、仕方ない)

 俺は後ろに行くと、奴隷契約書を出せと言われて収納に入っていたので出す。

 ルビーはやり方を知っているらしくテキパキと奴隷契約を済ませる。

(はぁ、3人も奴隷はいらないよ)

「あんたが自分でしたことなんだから責任持ちなさい」

「…分かった」


 とりあえず次の街に寄ることにして先を急ぐ。それなりに御者の仕方も覚えてある程度なら練習をさせてもらった。


 猫又の2人は銀髪がネア、茶髪がノアだ。

 2人とも猫耳と尻尾以外は人間だ。

 希少らしく連れ去られたらしいがもう家はないそうだ。可哀想なことをする。


「ちょっと!ネアは熱があるわよ?早く回復!」

「…あぁ、ちょっと待ってくれ」

 まだ子供だし少しのことで熱が上がってしまうみたいだな。

「フルケア」

「ご主人様ありがとう」

「ありがとうございます」

(とりあえず名前で呼んでもらうようにしよう)

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