第7話 猩々


「あぁ、使いを斬っちまった!もうこの村はもう終わりだ!」

「何だよ!はっきり言いなよ!」

 ルビーが詰め寄ると、

「あの狒々は使いなんだ、あれの上がまだいる」

 男は泣き叫ぶ。

「そうなのか?」

(あの上がまだ、それでこんなに怯えてたのか)

「だが負けるのか?何人連れ去られたんだ?」

「俺だって何とかしてえよ!だがあいつを見ると体がすくむんだ」

 それは体がすくむかもしれないが助けを呼ぶなりできただろ?しかし、この狒々だけでも相当でかいぞ?

“ヒュン”

「い、家の中に!」

“ゴッ”

 と言う音と共に男は頭に石がぶつかり意識をなくした。

「ルビー!早くそいつを連れて中に入ってろ」

「はい!」

 俺は剣で何とかしようとするが、

“キンッ”と音がして剣を伝わって重い衝撃が走る。

(猿知恵だな!石を投げてくるなんて原始的だ。けどこちらもやられっぱなしじゃいけないな!)

 石が降り注ぐ中走り回り狒々に近付いて斬る。

「つぎ!」

「おらぁ!」

 次々と狒々を殺して回る。こいつら屋根に登って持っている、俺はジャンプして屋根によじ登ると屋根を伝って狒々達を斬っていく。

(まだか!まだ大物が出てこない)

 焦る手に汗をかき剣が滑らないようにキツく握りしめる。

『グギャアアァァァ』

 ひどい鳴き声だな。

“ドスン”

 でかい猿と言うか猩々しょうじょうだな。

(こいつさえやれば、後の狒々は逃げ出すだろ!)

「うおりゃぁぁぁ!」

“キン”

 と爪で刃を受け止めると指を弾いて腹を撃つ!

“ザアァァァァア”

「ゴボッ。はぁ、はぁ、ヒール」

(ヤバいな!どうにかして気をひかないと)

 懐に入るために模索する。何かないか?


「ヤアァァァァァ!!」

(え?ルビー!?だが今だ!)

「うおぉぉ!」

 首を狙いにいくが、

「ウゴッ!」

 猩々はわかっていたように首をガードする。

「…悪いがそれはゴブリンだ!馬鹿野郎」

 俺は後ろから首を斬り裂きそのまま首をもう一度斬り裂いてトドメを刺す。

(ゴブリンの死体も使いようだな)

 一番最初に収納に入れたものだ。


『ウギャアァァァァァ』

 あとは烏合の衆だ。それよりルビーは?

「ゴボッ…くそ!」

 腹に何かを食らったのだろう血を吐いている。

「大丈夫か?フルケア!…助かったよ」

「ゴフッ!え、えへへ、どう致しまして」

 痩せ我慢だろう、俺の胸に倒れてきた。

「…寝ててくれ!こいつらを駆逐する!」

 その場にルビーを寝かせ狒々共を倒していく。もう大物は片付けたからな!


 狒々の死体が15体に猩々の死体が1体。

 全て収納に入れて、男の下に行く。

「ど、どうなったんだ?」

「…猩々は倒した」

「そ、それじゃあ」

「あぁ、もう隠れないで済む」

「あ、ありがとう」

「…だがな。一つ、倒せないなら人を呼べ、それくらいの知恵はあるだろう?人は考えることを諦めたらそこで終わりだ」


 男は悔しそうに頷く。


 猿によって支配されていた村は十何人かの生き残りによって再建されるだろうが、また同じ事が起きた時にどうなっているかはわからないな。

 

「私も頑張ったでしょ?」

「…無策で突っ込むな、合わせる方が大変だ」

「もう!せっかく頑張ったんだから褒めてよね!」

「…あぁ、予想してないパスだった!」

「あーぁ。どうなっちゃうのかね?あの村」

「自分達だけで何とかすることを覚えなくてはな」

 あの男が考えることをやめなければ大丈夫だろう。

「よし!目指すは王都!」

「…ふぅ、そうだな」


 目指すは王都…はいいけど、


(結構長そうだな)


 歩いているとやはり次の街に着く前に夕方になってきた。

 テントを張ったまま収納してるからペグを打つだけでOKだ。

 まず火をつけると絶やさないように薪をくべ。買っておいたサンドイッチのようなもので夕食は済ませる。

「本当いいよね、収納って」

「まぁな、ルビーは何のスキルを持ってるんだ?」

「ちょ、そう言うことは聞いちゃダメなんだからね?まぁ、私にはいいけどさ」

「…そうか」

「もう、私は隠密と短剣術と探知かな?まぁ、他にもできるけど」

「だから猩々の時にもあんなとこまで行けたのか?」

「そう、バレないように行くコツは結構大胆に動かないとね」

「ほぅ、それは初めて聞いたな」

「でもケントもやってたじゃん!ゴブリンの死体を自分の代わりにするなんてさ」

「咄嗟に思いついたことだ」

「へぇ、そうなんだ?慎重派かと思ってたけどけっこう大胆だよね」

(大胆と言うよりも行き当たりばったりのスキル頼りだな)


「もう寝ろ、夜中交代な」


「ふぁーい!」


 夜中に交代して寝ていると、

「ケント!誰か来る!」

「…誰だ?止まれ」


 影はぴたりと止まると、

「悪い悪い!女1人だから大丈夫かなぁって思ってさ」


「悪いが俺と一緒なんでその必要はない!」

「チッ!男が一緒とはついてないな」

「…はぁ、今帰れば命は取らないが?」

「あははは!俺にそんな脅しは通用しない!」

「…そうか」

 剣を抜き構えると、

「へぇ、おっさん結構やる方だねぇ、でもそれじゃ俺には勝てないかな?」

「…やってみなくちゃわからんだろ?」

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