第6話 キン爺


 俺たちは歩きで山道を登っていく。

 途中ファングウルフが出て来たがまぁ、気にせず斬り殺す。

 途中休憩を挟みながらゆっくり山道を登って行く。

「はぁ、はぁ、ケント、もう少し」

「…あぁ、悪かったな。ちょっと考え事をしていた」

「ふぅ、今日はいい天気すぎるね」

「あぁ、いい天気だな。空が青い」

「ケントもそんなこと思うんだね」

 ケラケラと笑うルビー。

(俺はどんな人間に思われてるんだ)

「ウフフ、嘘よ!それにしても本当綺麗なブルーね」

「…そうだな」

(誰かとこうやって空を見るのはいつぶりだろう)

 山道を歩いていくとあの小屋が見えてくる。ちょっとしたトラウマだろう。

(あいつらのせいで吐き気がする)

 後少し登ると今度はまっすぐな下り坂だ。

 次の街も少し先の方にちょっとだけ見えている。

 そんな景色に感動しながら下り坂を下っていく。

 もう五頭族がいなくなったということが知れ渡ったのか行き交う人が多いな。


 すると向かいから金色の鎧を着た人間が馬に乗ってやって来ている。

 そして何かを叫んでいるがよく聞こえない。

「どなたか!どなたか、五頭族退治をした人はおらぬか?」

「あれケントのことじゃない?」

「そうみたいだな」

 手を挙げるとこちらに寄ってくる。

「騎乗しての挨拶申し訳ない。貴方が五頭族を?」

「…あぁ。倒したが?」

「持ち物の中にこのような物が入っておらぬか?」

 俺は頭の中で検索してそれを取り出すと。

「く、やはりアースは散ったか…すまぬな時間をかけさせ。これは買い取る金貨「要らん、それは返す」か。かたじけない」

 金色の騎士は馬で来た道を戻る。

 それは多分。誰かの形見で合ったのだろうな。


 さて。気を取り直し旅をすすめる。


 夕暮れ時には着いた次の街もそれなりの大きさだな。

 宿に泊まるとルビーと飯を食う為下に降りる。

「おっ!あなた方は!」

「おっさん!その鎧脱げよ?金ピカですげー目立つぞ!」

「だーはっはっは!わしのトレードマークじゃからな」

 とんだトレードマークだ。

(それをトレードマークと呼べる根性が凄いな)

「おっさん面白いな!ケント、ここで飯食おうよ」

「…べつにいいぞ」

 俺たちはテーブル席に陣取ると早速注文しておく。

「先程は失礼した。私は王都直轄部隊の第二部隊所属、キン・アンダーソン」

「俺はケント。でこっちがルビーだ」

「皆からはキン爺と呼ばれとるでそれでいい」

「はい!キン爺は何でこんなとこまで?」

「五頭族を討ち取りに行った息子が心配でのぉ。お暇を貰いここまで来た次第だ」

「…そうか」

「だがわしの息子は勝てなんだな。親より先にいくとは親不孝者が」

(そこは何とも言えないな、俺も親不孝者だ)

「まぁ、なんだ!討ち取ったのがケントで良かったよ!だって他の冒険者なら返して貰えないよ?」

「そうじゃったの。ありがとう」

「…別に、もうちょっと早ければ良かったな」

「そう言ってくれるだけでありがたい」

 涙を流すキン爺にかけてやれる言葉がない。

 その日はキン爺に付き合って飲んで別れた。


 次の日の朝にはシャキッとしたキン爺がいた。息子さんにも会ってみたかった。

「じゃあまた、王都に来たらわしを訪ねるのじゃぞ?」

「あぁ、そうする」

「またね!キン爺!」

「さらばだ」

 颯爽と馬に乗って走り去っていく姿はとても昨日泣いていたキン爺には見えなかった。


 街で少し買い物をしてから次の街へと向かう。目指すは王都、何故かは知らない。

(王都に行けば何かあるのかもな)

 と漠然と思っているだけである。


 山道はなく平坦な曲がりくねった道を進む。

 相変わらずルビーは元気だなぁ。

(あんなに人生諦めたって顔してたのに)

「なに?なんか付いてる?」

「…いや、別に」

「なーによ!喋んないから私が喋ってるんでしょ?」

 だから別にと言ったのだが、

「これから行くところの情報よ、まぁ、ただの村らしいけど最近になって人が減ってるらしいから気をつけろって言ってたわ!」


 人が減ってるらしい?どう言うことだ?外に出たのか?それとも何か起きているのかだが、

「まぁ、ケントがいれば大丈夫でしょ」

「…人任せはどうかと思うぞ?」

「な!ちゃんとあたしも働くわよ!」

 

 隣町に着いたが人がいる気配がない?何故だろう。

(いやいるな。だが何故誰も出てこない?)

「おい!おっさんと姉ちゃん」

 小声で呼ばれたのでその家に近付いていくとドアが開けられ早く入れと言われる。


「ふぅ、ふぅ、お前ら噂は聞いてないのか?」

「…人がいなくなる?」

「そうだ!この村はもうおしまいだ!」

「何故そんなことに?だって家に入ってるんだからそんなことにはならないんキャァァァァ」

「何だあいつ!」

 外に出て確かめると巨大な狒々が屋根から中を覗き込んでいた。

(知能は高いはずの猿が何故?人を食ったのか?)

『ウギャアァァァァァ』

 と鳴き叫ぶと飛びかかってくるので剣で応戦する。

 片腕を斬り飛ばしてやると、

『キィィィィ』

 と弱々しく鳴くと突然また飛びかかってくるので今度は右脚を斬り落とし最後に首を斬り落とした。

(でかい狒々だ。しかも刃物にも恐れなかったな)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る