第5話 冒険者


 次の日は朝飯を食ってから門兵のところへ行く。ルビーも一緒だ。

「おう来たな!ってルビー、治ったって本当だったんだな!」

「おう!あたいを治してくれたんだ!今日からパーティーさ」

「そうか!良かったな!」

「うん」

「…で?」

「おう、そうだったな。あいつらの首は晒し首になってる。まぁ盗賊にお似合いの末路だな。でこっちに入ってくれ」

 と、この前の小屋に入る。

「よし。んじゃ。まずは渡すものから渡すか」

 と言って袋を重そうに二つ机に乗せると、

「まずこっちが賞金首の代金で金貨150枚だ。内訳は大男が金貨100枚、デブが、金貨20枚、あとの3人が金貨10枚で計150枚だ」

「分かった」

「は?何の話かさっぱりだよ?」

「聞いてないのか?ケントは五頭族を倒して来たんだよ!」

「五頭族!?本当かい!そりゃビックリだよ」

 と顔を見合わせると赤くする。なぜだ?

「まぁ、先に進むぞ、でこっちが領主からの報奨金で金貨100枚だ。討伐証明書を作ったから冒険者ギルドに持ってけば討伐金ももらえるようにしてある」

「分かった、ありがとう」

 受け取りが終わると、真面目な顔で、

「あとは遺族から返して欲しいと願う者が出て来ている。こちらに記載したが、持ってるか?」

「…多分あるな」

「それ相応の代金と引き換えするか?出来れば返してやって欲しい」

「あぁ、形見なんだろ?返すぞ?」

「…あ、ありがとう」

 兵士は目頭を抑え泣くのを我慢する。

(別に守銭奴でもないからな)

 次々と書いてあるものを出していく。全て出し終わると、兵士が細かい内容を言いながら預かっているであろう金を出していく、それを確認しながら合わせて金貨12枚になった。

「これでいいか?」

「…別に構わない」

「ありがとう!必ず渡すと誓おう」

「後のものはこっちで処分していいのか?鎧なんかも返した方がいいんじゃないか?」

「あるのか?いや、でも金が」

「いらん。こっちも売るより返してやりたい」

「す、すまない。ありがとう」

「どれが誰のかわかるか?」

「だいたいわかると思う、普通は裏に名前が彫ってあるからな」

(あぁ、俺も彫ってもらったな)

 鎧を全て出すと相当な量だった。

「すまない!これは気持ちだ」

「いらん!返すと言っているだろ」

 全財産を渡そうとしてくる兵士につき返す。

「本当にありがとう」

「…別に」


 盗賊の件は後はギルドにいくだけ、

「すまない、待たせてしまって」

「いいさ!急ぐ旅でもないだろ?」

「そうだな」

 とギルドに行って討伐証明書を渡すとビックリされたが受理されランクが上がるらしい。

「ランクはDになります。それと討伐金が一名につき金貨10枚ですので、金貨50枚になります」

「分かった」

「それではこちらギルドカードと討伐金になります」

 金貨50枚を懐に入れるフリして収納するとギルドを出ていく。


「つけられてるね」

「そうか」

 裏道に入ると、

「おいそこで止まれ!んで俺らに金を渡せ」

「…はぁ、何故だ?」

「おめぇが大金持ってるのは分かってんだ、この人数に勝てると思うか?」

 10人ほどが集まっている。

「ふぅ、かかってこい」

「舐めやがって!」

「豚の餌にでもしてやる!」

「ウオォ!」

“シュパパン”

 と一気に3人が倒れた。

「ま、まとめていけ!」

「最初からこいっての!」

 

 最終的に残った1人はこちらを見て逃げ帰るがそこまで慈悲深くはないぞ?

「わ、悪かった!み、見逃してくれ!」

「…別に、今頃仲間は地獄だろうよ」

「み。見逃して、ぎゃー」

 最後の1人を斬って全員をギルド内に運ぶと何のこっちゃわからないような目をする受付嬢。

「お前がでかい声で喋るから狙われた」

「あ、あの、も、申し訳ありませんでした!」

「冒険者も結局は盗賊なんかと一緒なんだな」


「何の騒ぎだ!こ、これは?」

「ぎ、ギルド長」

 ギルド内には10数人が倒れている。

「受付が大声で金貨の話するからこいつらが群がって来た」

「そ、それは本当か?」

「す、すいませんでした?軽率でした」

「こっちは命を狙われたぞ?」

「まぁ。待て、こっちに非があるのは認めよう、だがそれだけだ。冒険者は冒険者なりのケジメの付け方があるだろ?」

「んじゃこれでいいんだな?」

「こ、これはやりすぎだが」

「…あ?」

「仕方あるまい、すまなかったな」

「いや、別に?これが冒険者の礼儀なんだろ?」

「悪かったと言っているだろ?これ以上何を望む」

「こいつらが死んだのはそこの受付嬢のせいだろ?クビにしろ」

「え…」

「すいません!もう致しませんので!」

「ギルドもスジを通せ」

「分かった、スミスはクビにする」

「そ、そんなぁー」

「…じゃあな」

 ギルド内は騒然としていた。


「よかったの?クビで?」

「まぁ、あれを聞いて襲って来たのはあいつらだしな」

「そうね」


 それからブーツの受け取りに行く。

「どうだい?」

「あぁ、ピッタリだ」

 いいブーツが手に入った。


 俺たちは門を出て盗賊のいた方向へ旅に出る。

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