第2話 盗賊
盗賊の死体を出す。全部で5体だ。
「な、な。こいつら五頭族じゃねーか!1人で全部やったのか!こりゃ驚いた」
中身を全部飲みきると竹筒を返して、
「…すまんな、全部飲んでしまった」
「いいぜ!それくらいのことして来てんだ!それよりも収納は隠して使えよ!じゃねえと目立つからな」
途中から小声になる兵士にこくりと頷き、
「それで?…どうなるんだ?」
「そりゃ、こんだけの快挙だ!賞金首だし、報奨金も期待していいぞ!お前のギルドカードは?」
「すまんが持っていない」
「持ってねーのかよ!はぁ、なら今から作ってこい!特別に入れてやる!そこの道をまっすぐ進むと冒険者ギルドがあるからそこで登録しろ」
「…ありがとう」
門を潜りまっすぐ進むと冒険者ギルドと書かれた看板が目を引く。だが日本語じゃないのになぜわかるのかが不思議だった。
中に入っていくと受付がある。
「…登録をお願いしていいか?」
「は、は、はい!ギルド会員登録ですね、こちらに書いて下さい」
簡単な名前と年齢、使用武器くらいだ。
「はい、ケント様で32歳で剣を使用ですね」
「…あぁ」
「それではこちらを触っていただけますか?」
ケントがそれを触ると緑色に輝く。
「…は!すいません!それではこちらがカードになります」
「あぁ、これはなんの役割だ?」
水晶を指さして聞くと、
「魔法が使えるか、属性はどうかと言うものです。ケント様は希少な「分かった」は、はい、ではランクFからですのでランクの説明は?」
「一応聞こう」
「ランクはギルドへの貢献度や依頼の達成度によって上がります。FからSまであってそれによって依頼内容なども変わって来ますのでわからないことがあればまた聞いてもらえますか?」
「分かった」
(ランクはいいとして、これで四つ目が使えることがわかったな)
カードを受け取ると、歩いて門に向かう。
もう人だかりができている。
「おう!こっちだ!道開けろ!そこ!」
「…どけ」
「ひぃ!」
前のやつが邪魔だったのでどかしたら悲鳴を上げられた。返り血で汚れているからだ。
「ギルドカードを見せてくれ、…ケントだな!じゃあ、あとはもうないか?」
「…弔う方法がなかったのでな。持って来ている」
「あ、あぁ、じゃあこっちに!おい!あとは任せたぞ!」
「おう!おらどけどけ!」
門兵は向かいに声を掛けてから中に連れ込むと、門の内側の小屋に入る。
「こっちで出してくれ」
「…あまりみれたもんじゃないぞ?」
「分かってる、だがそれでも仕事だからな」
「そうか」
出していくと3人目で兵士は吐き出し、こっちに手を振って早く出せと言っている。
全員出し終わると12人の亡骸が並んだ。
「よ。よく運んでくれたな」
「俺も」
と言って外に吐きに行く。
(今夜は夢見が悪そうだな)
と全て吐き終わると深呼吸してから、また中に入る。なるべくみないようにして取ってきていたギルドカードを渡す。
「外で話そう」
「…分かった」
兵士はギルドカードを数えて12枚以上あるのを確認すると、舌打ちをしてから、
「ありがとうな、俺の知り合いもいたみたいだ」
「大男の尻に敷かれていた。…酷いことをするな」
「くそ!俺にもっと力があれば!いや、助け出してくれてあいつもホッとしてるはずだ」
「もっと早く手は打てなかったのか?」
「打ってた…だが、返り討ちだ。悪いな、お前の手を煩わせて」
「…いや。打ってダメなら仕方なかった。俺が倒せて良かったよ」
「あぁ、これで被害が無くなるだろうな」
少し涙ぐむ兵士は気丈に振る舞っている。
「明後日には全ての処理が済むはずだ…いや、済ませる!だから明後日またここに来てくれ」
「…分かった。明後日だな」
「おう!ありがとう」
「あぁ、また明後日」
まだ昼時だ。
街をぶらつくと日用雑貨をあの盗賊のアジトから手に入れた金貨なんかで買っていく。金貨1枚あれば全て揃った。
(何も忘れてないよな?)
そしてもう一度街をぶらつき買い忘れがないか確かめると、剣がゴブリンからのものだったのを思い出し買いに行く。
「おう!お、おう、いらっしゃい!片手剣か?」
「あぁ…すまんがこれより重いのはあるか?」
「こりゃただの鉄の剣か、んじゃこっちはどうだ黒鉄の片手剣だ」
“ヒュヒュン”
「あぁ、いいかんじだな。2本もらいたい」
「ありがとうよ、金貨2枚だ!もちろん剣帯と手入れ用品もセットしておくぜ」
「悪いな」
「それよりあんた顔洗いな!返り血でベトベトだろ?」
「ん?…あぁ」
顔を触ると確かにべとついている。
「そっちに水場があるからな!行ってこい」
「すまない」
井戸から汲み上げた水で顔を洗うと、地面が赤く染まるほど返り血を顔に浴びていたようだ。ついでに石鹸を取り出し髪も洗っておく。
「ほう!いい顔してるじゃないか!それじゃあこれが2本で金貨2枚だ」
「すまないな、地面を汚してしまった」
「いいさ、すぐ消える」
「…そうか」
「おう!手入れの仕方分かるか?」
「教えてもらえるか?」
「まかせろ!」
そうして気のいい親父に手入れの仕方を教わる。
(悪くない街だな)
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