おっさん探訪記

あに

第1話 陽気な女神


タンタカターンタンタンタンタンタカターン!

「はい!というわけで決まりました!」

 うるさい女神のような格好の奴が喋っている。


「…あ?」

「あなたにこの世界に来てもらうことが決まったの!ほら喜んで!ウヒョーとか言って!」


「…あ?」

「いやーん、やめて!メンチきるとこわぁい!だ、か、ら、メンチはダメだぞ!」


「…なんで?」

「あーよかった。あ?しか知らないのかと思った!で今からダーツ投げてもらうから!パジェロ!フゥ!パジェロ!的な?」


「…それ古いから」

「いやぁ、知ってるってことはそれだけで嬉しいもんです!では1回目投げます!」


「…お前が投げるの?」

「遅い遅い!投げちゃうとこだったじゃん!そう!君がな、げ、る、の、さぁ!投げて!」


“トス”

「わお!真ん中、ど真ん中!えっ!もしかしてダーツ得意?って次の体勢に入って投げちゃうの!」

“トス”

「うわぁお…また真ん中じゃね?これはもしかしてーの!」

“トス”

「うおー!ハットトリック!決めちゃったのね!やっちゃってるし」


「…はぁ、で?何がもらえんの?」

「どうしようかな!本当はなんでもあげるってことになってるんだけど!ハットトリックなんて初めて見たし!じゃー三つ選んでちょもらんま!」


「…んじゃ、これとこれとこれ」

「迷いなし!凄い!普通は1日とかかけて選ぶもんなんよ?あなた凄い!うわぁ!こりゃ惚れちゃうぜ!ってことでもう一個選んでいいよ」

「…悪いな、じゃあこれで」

「ふぅー!クールですね!」


「…で?これ持ってどうしろって?」

「あ、楽に生きちゃってください!別にこれと言って使命とかないんで!」


(って言われて来てみたけど…これどうみても森の中だよな?まず一つ目が剣術極)

 走って来たゴブリンを手刀で斬る。

「…っふぅ」

(こいつの剣を貰えばいいか、つか、まんまゲームだな)


「…鑑定」

『鉄の片手剣』

(二つ目も良好か、三つ目は収納)

 ゴブリンがいなくなった。収納に入ったようだ。

(ふぅん、頭の中にあるのはわかるな)


「よし…行くか」

 道は山道が続いている。


「おっ!そこの兄さん!ここは通行禁止だぜ!」

「通りたかったら持ってるもの置いて行け」

「ぐぶぶ!でも、どられぢまうげどな」

(山賊?盗賊?まぁ、どっちでもいいか)

「…どけ」

「…どけ!じゃーねーよ!」

「ぐぶぶ!にでる」

「あはは、お前みたいなやついくらでもみて来てるって」

 3人のチビ、ノッポ、デブの盗賊は賞金首らしい。

(鑑定でここまでわかるんだな。まぁいいか)

“シュパパン”


「おご」

「げぇ!」

「いだっ!」

 のたうち回る3人のうちデブとノッポにトドメを刺すと収納する。

「…アジトはどこだ?」

「ヒェッ!こ、ここっちに」

 よく見るとここからそう遠くない位置に小屋が見える。

(相当腕が立ってここに立てたのか、それともバカなのか)

「あ、あの」

「…死ね」

 チビにトドメを刺すと収納する。


 道はデブが通った跡なのか草が左右に薙ぎ倒されている。

“ガギャッ”

 小屋の前に立つと扉を蹴り飛ばす。奥に立っていたやつまで一緒に蹴り飛ばした様だ。

(やけに重い扉だと思った…)

 饐えた臭いに敏感な鼻が反応するが構わず中に入って行くと、大男がそこで酒を飲んでいた。椅子に死体を使ってるようで気持ち悪さが強調されている。


「誰だテメェ?チビ達はどうした?」

「…死んだよ」

「あ?死んだか…おめぇが殺したんだろ」

「当たり前だろ?」

「殺されてえのか!」

 

 立ち上がると天井スレスレで本当に大男なのがわかるな。

(…やはり死体か)

 裸の訳のわからない死体を椅子にしていたようだ。

「どこみてやがる!おらぁぁ!」

 でかい大剣が振り回されると小屋が半分吹き飛ぶがそれより早く大男の首が飛ぶ。

「…はぁ、汚ねえな」

 収納に大男を取り込むと逃げていくドアの下敷きになってたやつに向かって剣を投げ、突き刺さるとトドメを刺しに行き収納に入れる。

 これで盗賊団が壊滅した。

(さて、物色しないとな)

 無言で物色していると金貨を大量に収納する。マジックバッグと呼ばれるものなども鑑定して収納していく。

 ご丁寧に脱がしてから甚振ったようで傷一つない防具など何着も出て来たので自分に合うものはそれに着替えていく。

 ギルドカードなどはまとめて置いてあったので収納し、他に人がいないか確かめるが、生きているものはいなかった。

 弔う方法がなかったので死体は収納にいれる。


 あまりにひどくてそこで吐いてしまうがこっちに来てから何も口にしていないので胃液しか出てこない。

(あぁ…胸糞悪いな)

 山道に戻り逆に向かって歩く。

 何故ならそちらの方に見せに行った方がこれからここを通る人が増えるはずだからだ。

 下り坂なので運動がてら駆けていく。


 早く口を濯ぎたいのだ。


 やはり近くに街があった。しかも結構立派な街だろう。石造りの塀が長くに渡って作ってある。真ん中に門が見えたのでそこまで行く。

「はぁ、はぁ、はぁ、」

「おう?どうした、走って来たのか?しょうがねぇな!っと!」

 水の入った竹筒を口に含むとうがいをして吐き出す。

「おまっ!ひでぇ奴だな!おい!」

 そのままゴクゴクと音を鳴らして飲むと。

「っは!…盗賊はどうすればいい?殺して来た」

「は?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る