大公開、マリアナ沖大海戦

全国の映画館で総天然色(カラー)の大海戦の映画が公開される。

旗艦大和のトップ登楼から撮影したトリック無しの実戦映画。


新開発のドルビーサラウンド効果で戦場に居る気分になれる。


序盤は新鋭機、零戦の敵機撃退。

見てる子供は「わぁ~~零戦だ、カッコイイ!!」と大喜び。

そして機内から撮影した撃墜シーンも鮮明な動画。

まるで戦闘機を操縦してるが如く。

4門の機銃がグラマンを破壊する様子を何度も見せられ、子供は興奮。

女性はウットリ。


グラマンが壊滅すると零戦は消え去り、援護機のみが残る。


数分の静寂が続くが、周囲は怒涛の進撃を続ける大戦艦大和型が

合計五隻、

後方には旧旗艦、長門と陸奥、伊勢や金剛などの高速戦艦部隊。


静寂時間でも観客は目を釘付け。


やがて水平線の彼方に米艦隊が見えると・・・。


大和型の艦砲射撃が開始。


蒼空を駆け上る砲弾は敵艦上空で分離し、ナパームの嵐を振りまく。


敵艦は全て炎上し反撃不可能。


後方部隊も全速で敵に接近し射撃開始。


巨砲が吠える、魚雷をバンバン発射する。

その轟音が映画館に轟き観客は魅了され誰も言葉を発しない。


そして轟沈する敵戦艦を見ると・・。


凄まじい火炎と轟音、噴煙。

今まで見て来た映画全てを否定する如く凄い迫力。


後に円谷英二監督が、吉田一カメラマンの技量に脱帽。

弟子入りしたと言う一コマも。


砲撃する大和型、長門型、その他全ての艦を余すことなく撮影し、

帝國の威容を国民に見せた海軍省に感謝と綴られ、軍艦マーチと共に映画は終わる。


観客は一言も言葉を発せず・・。


やがて拍手が沸き、全員が涙を流し拍手喝采。

映画館を出る観客は・・。


「少ないですが、コレで帝國の軍備や兵士の食事に・・。」と、

映画館の主に預ける始末。

もちろん彼も諸費用を除いて儲けは全て海軍省に寄付。


海軍省は有難く頂き、国民義援金号と題する零戦を新聞で公開。

性能諸元こそ明かさないモノの、新鋭機の精悍な姿に子供は大喜び。

大判写真(新聞の半分)の画像は子供の机のアイテムと化す。


中学生の子弟は予科練を熱望し、優秀な子弟が航空の道を歩む事になる。


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「長官、映画は思ったよりも好評ですね。」


「ウム、映画館も毎回入れ替えで終日満席と言う。」


前世の海軍は機密機密で大和は戦後まで機密。

零戦も終戦末期に公開。


コレでは国民の理解を得られない。

今回はそう言う点を反省し、一流のカメラマンに撮影を任せ、

国民に余す事なく公開。


後に海外にも修正済で公開する世界最大の大海戦映画として大ヒットする事になるのは別の話。

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