勇者、新鋭機零戦(れいせん)に試乗ス!

横空も拡大され、滑走路は未来のセントレアクラスまで拡大。

わざわざ霞ケ浦や各務原に遠征しなくとも良くなった。


「ヤマダ君、君のおかげで我が国は変わった。

世界からも陸軍の脅威が消えた事で畏怖の目が消えた。

そして国内も海軍主導で多くの事が変わった。

ありがとう。」


山本閣下から土下座の勢いで感謝されてたのだ。

三菱、川崎、中島が共同で開発してた零戦も未来の最終型、

並びに烈風や疾風、飛燕の設計図を元にF8Fベアキャットクラスの

化け物機に変貌。

急降下でも時速900kmまでは耐えてた。

最高速度も水平時速700kmを計測。

エンジンは栄をベースに18気筒、ツインターボ、インタークーラーを装備。

3500回転で2500psを発揮。

奇しくも実史の誉と同じサイズ、重量も800kgと誉よりも軽量。

最初から軸径も誉よりは大きく強度も上げてたので馬力アップにも耐えられるエンジンとして熟成。

そのパワーに耐えれる強靭な機体を再設計。

レシプロ機としては零戦が世界最強を誇る事になる。

もちろん主翼はベアキャットを模造して中程から大きく折り畳める油圧システムを装備。

急降下でも音速近くの速度でも操縦出来るパワーアシストシステムを未来の車から模造し、

電動パワーステア操縦かんにしておいた。

特攻機が垂直に急降下するとパワーアシストが無くて引き起こせず、

そのまま墜落するシーンは全技師に見せた。

彼等は絶句し、こんな事態にならない機にしますと必死に対策してくれた。

陸軍が消滅した事で全軍の航空機は海軍主導。

あ、源田実は除隊させました。

ヤツは空戦性能一本の石頭。

俺は大嫌いなので論破して海軍を退官に追い込みます。

名人だけが乗れる戦闘機なんざ戦時には不要。

100人のパイロットが扱える機こそが真の名機。


あ、日独伊同盟は陸軍消滅で破棄。

日本は独立国家として他国に関与せず。

言い値で多くの資源、ガソリン、マザーマシンを大量に導入するのみ。


欧米も陸軍が無い国なので金払うなら無問題とドシドシ出荷。

第二次世界大戦が始まるも、太平洋は平和なままである。


だがアメリカは何時牙を剥くか分からぬ。

我が国は仕入れた資源で大和級戦艦を5隻。

翔鶴クラス空母を量産。

駆逐艦は週刊駆逐艦で全て魚群探知機を装備。

この時代の潜水艦なら狩り放題確定。

完成した駆逐艦、戦艦は国境海域をパトロールし、原油輸送の護衛にと活躍。

魚群探知機の効用は凄まじく、海軍の伊号潜水艦も100%発見し、撃沈判定を連発。

例え海底に着底でも沈没船のデータも取ってあるのですぐに暴露。

駆逐艦は平時には日本周辺海域の沈没船のデータを全て揃え、敵が侵入したら即座に暴露出来る体制を整えつつあった。


そんなある日・・。


広く改築された横空審査部で俺は新鋭機、零戦21型のテストパイロットに就いてた。


「ヤマダ少佐(進級しました。)、ご指摘の欠点を全て潰しレシプロ機としては、

この零戦が究極となるでしょう。

次は噴射式(ジェットエンジン)にするしか無いです。」


充分な設計陣を全て集め、国内の総力を挙げて開発した零戦は未来を知る自分でも

グラマンやP51を超える戦闘機と実感してた。


「皆様のおかげで、この零戦は出来ました。自分は勇者なので如何なる事態でも生還可能です。

この零戦の限界を全て出して見ますので無電班は自分の発言の記録をお願いします。

限界領域なのでメモ取る余裕は無いと思います。」


既に未来の簡易無線機、並びにデジタル無線を海軍は取り入れ、艦艇にも搭載。

デジタル同士でないと傍受しても雑音にしか聞こえないので暗号要らず。


「こちらゼロ一号機、発進準備ヨシ。エンジン起動して良いか?」


横須賀管制塔の上部には新開発の電探(レーダー)がクルクル回り、周囲に航空機の飛行も無い事を確認。


「横空官制ヨリ。ゼロ一号機エンジン起動セヨ、周囲には飛行物体ナシ。」


許可を得て俺は外部電源が繋がってるのを視認。

外部電源付の整備士が親指を立て接続を確認。

コクリと頷き、大声で・・。


「エンジン起動ス!前離れ、機動!!」

そう叫びスターターボタンを押す。


クインクインと巨大なスターターモーターが回転し、栄18気筒エンジンのクランクを回す。


生ガスが流れ一瞬、エンジンから火を噴くが・・。


「コンタクッ!!」


の叫び声で点火レバーを回すと栄18気筒はペラを回し起動に成功。

噴いてた火はプロペラ後流で吹き消され、安定した排気煙でかき消される。


起動に成功すると即座に外部電源を切り離す。

そして操縦かんを手前に引き機首が下がらない様にする。

パワーがある栄だがアイドリング付近では500ps程度。

プロペラピッチをスローにして暖気を数分。。


「チョーク外せ。管制塔、離陸準備ヨシ!」


「横空官制よりゼロ1号。自由に離陸セヨ。

周囲空域は一切の航空機ナシ。」


離陸許可を得て滑走路末端を目指しタキシング。

末端でフラップを下げエンジンの回転に調子を見る。


ウム、良い感じだ。


「ゼロ一号、離陸!!」


管制官に告げ俺はスロットルを徐々に開き速度が乗ったら全開。

200m程度でフワリと零戦は離陸し低空を突っ走る。


>急上昇は速度が乗らないと危険と聞くので。


速度400kmまで出た所で横空に機首を向け急上昇を開始。


数分で5000mまで上昇。

まずは最高速を計測。


「ゼロ一号、コレより最高速度を計測ス。

地上でも計測を頼む。高度5000m、

現在速度300km。」


「「横空地上班ヨリ、ッテ~の合図でスロットルを入れヨ。」


「了解、合図を待つ。」


横空上空で地上班が望遠鏡でコチラを見てるのが分かる。


「321・ッテ~!!」


その瞬間、俺は零戦のスロットルを全開にし水平速度の計測に入る。


「400・・・500・・・・600・・・690・・・700・・・

主翼に皺はナシ、筒温正常。油温正常。

725・・・これ以上伸びナシ。最高速度メーターで725kmと思う。」


「横空地上班ヨリ、コチラでも724,5kmを記録。」


地上では全ての設計陣が躍り上がって喜んでた。


「次は上昇限度を目指す、計測を頼む。」


「リョ、こちら横空地上班。無理はするな。」


零戦はグングン蒼空を目指し駆け上る。

ツインターボに火が入り、馬力がグングン上がる。


「高度1万・・・1万2千・・・3500・・・・4000・・・

さすがに揚力が減りこれ以上は危険。14200で止める。」


「ありがとう、気を付けて降りろ。」


「リョ、コチラゼロ・・急降下にて降りる。」


地上は慌ててたが無視して降下角度60度で急降下開始。

目の前の風景がドンドン鮮明になって行く。

雲を抜けると東京湾が目の前に広がる・・・。

速度計は特別製の時速1200kmまである。

メーターはガンガン回り主翼は振動を開始。


「ザ・・・コチラゼロ。。。時速900・・主翼が震えてる。

高度6000・・・5000・・。」


「ヤマダ、もう止めろ!!」


指揮所からの無線を受け、スロットルを戻し徐々に機首を上げ・・

やっと穏やかな世界へと戻る。

メーターは目視速度で950を計測してた。

コレ以上はジェット機の世界だ・・。


基地上空で主脚を出し指揮所前で旋回。

ゆっくりと着地し、指揮所に帰ると・・。


整備士に担がれ神輿みたいにワッショイワッショイと大騒ぎしながら帰って来た。


「ヤマダ少佐、零戦一号機のテスト飛行完了。

詳細は無電でお知らせした通りです。機体に目視では異常ナシ。」


「ウム、御苦労であった。機体も無事持ち帰り新鋭機の限界も把握。

分解整備し問題なければただちに量産を開始出来るだろう。」


山本大将も指揮所で見ててくれたのだ。

お褒めの言葉を頂き、俺は自分の居室に帰る。


機は主翼に皺が少し出てたが、クラックは入らず。

重心も土肥博士の発明した機体のレール構造で簡単にバランスを取れる。

まあゼロ以後はジェット機なので、零戦はジェット機の前哨機となるであろう。


F86Fの設計図も渡してあるので、既に機体は完成してる。

エンジンはさすがに時間がかかるが二年あれば完成するであろう。


世界は欧州大戦が開始され独伊二か国連合で大戦に突入。

ヒットラー率いる独逸軍はMe109を主力とするルフトワッフェが怒涛の勢いで、

ポーランドを蹂躙。

伊太利(イタリア)も地中海からアフリカに向け進撃。

日本は大戦を無視し、独自の国作りに勤しむのである。


アメリカは大戦介入の様子見。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る