第2話 魔導機

 目の前にあるのは3種類の魔導機マナギレム。中型の2種と大柄な機種と。

 中型の内1つは、何やらランドセルみたいなモノを背負ってる感じで。


「右端のが基本種の『戦士フェーダ』。で左の大柄デカいのが『大楯ダンガル』。真ん中のは『戦士改』」

「アレってバーニア?」

「みたいなもんだ。その、魔結晶いれて風魔法を噴射して多少早く動ける様にしてるんだ。まぁ、その分魔力マナ消費も半端無くてな」


 よく見ると、脹脛辺りも少し太めで。


「先ずは、魔力マナの測定だ。問答無用で申し訳ないが、召喚が片道切符なのはピンときてると思う」


 エリックさんは何時召喚されたんだろ?

 開き直りに近い清々しさを感じてしまって。


「お嬢さんも大丈夫かい」

「まぁ。喜んでとはいいませんが、どのみち村を追い出されて家族もいない身ですので」


 ヤン・ファーレンって言ったか?少し歳上に見える。中国人って黒髪黒眼だけど、何て言うか、あまり親近感感じないな。


「そうか。前の召喚で来た娘さんが、召喚を現実のモノとして受け入れてくれなくてね。『親元へ帰る』『夢みたいな事言わずに誘拐ヤメテ』で、最後には発狂して自害しちまってね。あぁ。女性の召喚はやめてって言いたいの分かるんだ。だが、此処の領主には1人娘しか居なくってね。どうしても女性騎士が必要らしいんだ」

「娘さんの護衛?なら、少しは良い暮らし、させて貰えるのかしら?」

魔導機マナギレム躁機者パイロットは特権階級だ。ソイツは保証するよ」


 後で聞いた。

「日本人の貴方には、私達の貧困の苦しみは分からないでしょうから」

 母子家庭で、僕も裕福とは言えない環境だったけど、それでも餓死なんて考えられない暮らしだったし。その母も先日事故で亡くなっていて。天涯孤独の、生きる為の様々な手続きをしてる矢先だったんだけど。


「僕の事、行方不明者になってるのかな」

「いや、向こうじゃ死体がちゃんと有るんだとか」


 異世界ヴィルセニアへは記憶と感情のみが動くんだとか。で、コッチの世界で肉体の再構成を行い、それに記憶と感情を入れて定着させるらしい。


「コレ、飛べないんですね」

「何のアニメだよ、日本人ジャパニーズ。悪いけど現用兵器よりは少しマシって程度の動きしか無理だ。なので、此奴らは陸戦兵器でしかないよ」


 ヒカルとボビーは、人一倍魔力マナが多いらしい。僕は平均値の3倍近いって。


「ヒカル。『戦士フェーダ改』でヤレるか?それにボビーも」

 エリックさんが指示して、ランドセル付がもう一機運ばれてくる。

「それじゃ私は、コッチの『大楯ダンガル』ってヤツを試させてもらおうかな」

 ハインツさんが左端へ動く。

「じゃ私が、この『一般的フェーダで」

 ヤンさんが右端のヤツで。

 そこにエリックさんの愛機フェーダも運ばれてきて。


「コクピットは腹部だ。乗り込んだら、胸部の魔結晶に自分の魔力マナを登録する。登録と起動準備だ。うん、そうそう。皆、上手く出来てるじゃないか」


 振動?駆動音?

 何か、モーターが動き出した様な。


「先ずは立ち上がってみてくれ。ゆっくりと操縦桿ハンドルを引いていくんだ」


 乗り込む為に屈み込んでいて、開いた腹部の前に右手が、まるでステップの様に固定されてて。

 それが、ゆっくりと直立していく。


「前進は右ペダル、停止は左ペダルだ。振り向きや進路変更はハンドルで、基本的に左手で操作してくれ。右手は座席横の操縦桿スティックを握る。それが手の…基本右腕の動きに対応してる」


 ハンドルが小さめなのは、片手操作の為か。

 コレは、慣れるまでかなり大変なんじゃ?

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