第3話 魔導機に乗ってみて

 巨人機械ロボット兵器魔導機マナギレム

 その、躁機者パイロットとして、この世界ヴィルセニアに召喚された訳だけれど、召喚さ呼ばれし勇者だとしても、コイツの操縦は一筋縄ではいかなくて。

 特に、ヒカルとボビーの機体、『戦士フェーダ改』には、足元のペダルが1つ多くあるんだ。

 背中に有る移動用魔導具ランドセルの操作ペダル。コイツを踏み込む事で瞬発的な移動力を発揮出来るんだけど、魔力マナはゴリゴリ削られるし態勢は安定しないしで、動かし難いったらありゃしない。

 ボビーも苦戦してるみたいで、あ、また転んだ。


 こんな訳で、試運転は散々だった。


「馴れろ、としか言えなくてな。魔獣討伐は待ってくれないしね。悪いけど、近々実戦訓練って形になると思う」


 そう言うエリックさんも、召喚後3日程で討伐任務に駆り出されたんだとか。

 唯一の救いは、魔獣の牙も爪も魔導機マナギレムには通用しないって事。魔法攻撃してくる魔獣となると、かなり上ランクの魔獣みたいで、少なくともこの近辺にはいないらしい。

 そうなると魔導機マナギレムの敵は魔導機マナギレムでしか無いと言える。


「その場合でもどうだろうな。この『戦士フェーダ』にしても、此処の専用機オリジナルだし」


 魔導回路の設定は兎も角、機体設計はアランさんの独自開発らしく「この世界の初期量産型『巨人騎士ダルミェット』なんか目じゃないぜ」って豪語してるんだとか。


 考え過ぎかもしれないけど。

 この魔導機マナギレムは、本当に対魔獣用なのだろうか?


 漠然とした不安。

 でも、僕はまだ、自分を召喚したこの地の領主の事を詳しくは知らない。


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『戦士フェーダ改』を扱えると?」

「はい。あの2名の少年達は、得難い人材だと断言出来ます。特に黒髪の少年、そう、ヒカル=ヤマトは3倍近い魔力マナがある様で」

「ならば今開発中の機体にも対応出来そうですね。それは楽しみだ」


 兵員詰所。

 副団長エリックに開発技師アラン。


 そして、彼等2人から報告を受ける騎士団長バーン=フランクス。

 白髪ではあるが、まだ若く騎団生え抜きで、この世界ヴィルセニアの人間としては珍しく豊富と言える魔力マナを持ち、魔導機マナギレムをも躁機出来る稀有な人材。

 アランの試作改造を繰り返せたのも、彼が試運転テストをこなせた事が大きい。

 また異世界人エトランゼを騎団の長に据える必要がない事は、この地の領主にとっても都合の良い話である。


「得難い人材か。ならば、この地より動かぬ様にせねばな」


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 魔導機マナギレムの搭乗訓練、模擬戦が終わった。考えてみれば、僕等は異世界に召喚されて事情を説明された後、そのまま魔導機ロボット兵器に乗せられ訓練させられた訳で。


 まぁ、選択肢なんて無かったけど。


「これより宿舎へ案内します。とは言っても、貴方方は上位騎士扱いです。別館に個室が与えられており、専属侍女も付く事になっています。身の回りの世話等彼女達が行いますので」


 エリックさんやアランさんと別れた後、僕等の元にやって来た兵士に案内され、領主の館の隣、とても宿舎なんて思えない館へと。


「皆様は3階の部屋を御使い下さい」


 2部屋と言うか1Lと言うか。

 でも、多分20畳は有りそうな…。

 奥の窓際の方が寝室だね。ベッド在るし。


「どの部屋も同じつくりか。それじゃ僕は、この手前を使わせてもらおうかな」

「私は奥から2つ目にさせてもらえるかしら」

「では、最奥をもらおう」


 残るは、手前から2つ目。

 流石に疲れた。クツを脱いでベッドにひっくり返る。


 コンコン。


 この部屋だけでなく、他の部屋からもknockの音が響いてきて。そう言えば専属侍女がいるって言ってたな。



 

 

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