Vol.3 1cm

いつだったか 僕は忘れた

まぶたを閉じると

桜の樹の下で 君が花びらを見つめていた

「あれっ」って そう思っただけだった


気がつくと 視界の中に

いつも 君がいた

若葉を見上げた君は 何かにあいさつしてた

「誰だ?」って 僕はちょっと気になった


君の頬が輝いて 風がキスをしていった

君の長い髪の中 風は楽しそうにはしゃいでた

僕は風に嫉妬して 「このやろう!」って 砂を蹴り上げた


追跡 開始!

もう 目が離せない

いつも君を探してる

1㎝でも 近付きたくて

君の近くで

馬鹿を言って はしゃぐんだ

心臓 バクバク 汗 ダラダラ


君が笑ってくれたなら

それだけで 僕のからだは

床から1㎝ 浮き上がる


いつだったか 覚えている

落葉樹の下で

ただ 静かにたたずむ君が 両手を広げていた

枯葉が舞い落ちて 君は「くすぐったい」って 笑った


僕は通りすがりの振りをして

君に 近付いた

君は初雪に 右手を差し出してつぶやいた

「天使の羽 今日は上等な気分で帰れそうよ」


接近 成功!

僕の体温は 急上昇

君の微笑みに 熱は上がり

僕のまわりの雪が 消えちゃう

心臓 バクバク 汗 ダラダラ


君が好きな天使の羽を

僕が消してしまっている

君の横で 地面にめり込みたくなる


いつか 君に言うんだ


君だけを 守るため

僕は穏やかな大気になるって

1mmだって 危険なものは

君の肌には 触れさせないよ

だから 笑って いつも 見つめて


季節の中で ずっと君が 

上等な気分なら

僕も毎日 最高の気分さ


ふわ……ってね

からだは1㎝ 床から浮いている



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