第48話:…1人じゃ無理なんだって

今日の夜21時、mmみりと通話をする約束をしている。

というよりはmm話しがあるとのことだ。

昨日のこともあったためかなり億劫おっくうでいる。

内容はおそらく、友達なんだからその辺ははき違えないでね、といったあたりだろう。


アパートに着きソファに腰をつくと同時にスマホが鳴った。


ラ〇ン♪

まりさん…からだ。

そういえばこの前LI〇E交換したのすっかり忘れてたな。

えーっと…。



―――― LI〇E【まりさん】 ――――

『やっほーきょーたろうくん』

―――― LI〇E【まりさん】 ――――



昨日いざこざがあったばかりにも関わらず随分のん気なもんだな。



―――― LI〇E【まりさん】 ――――

『ども、どうしたの?』

『仕事手伝ってよー、人足りないんだよねー』

『えー、また?どうせまた給料ケチったんでしょ』

『ど、どうしてわかった!?』

―――― LI〇E【まりさん】 ――――



前科があるからすぐに分かるさ。



―――― LI〇E【まりさん】 ――――

『でさ、今回はきみ1人じゃきついと思うんだ。だからもう1人連れて来てねー。じゃあまた連絡するよー』

『え!?もう1人!?』

―――― LI〇E【まりさん】 ――――



いつもの如くその後まりさんから返事がくることはなかった。

LI〇Eを無視するなんて余ほどマイペースだな。

それにしてもう1人かあ、雪弥は接客断固拒否だから瑛人に明日頼むか。


レポートをしているうちに時計の針は21時を差していた。

やべ、もう時間になってるじゃん。

急いでPCを起動しmmみりに通話をかけた。



ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『もしもし?』

『もしもし、おつかれロキ』

『ああ、mmもおつかれ』

『急に通話なんてごめんね』

『いや、おれも用があったというか…まあ』

『そうなの?先に言ってもいいよ?』

『いや、mmの話しから先に聞くよ』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー



昨日の通話が荒れてしまったことを謝らないと。



ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『じゃあ私から先にロキに伝えるね…』

『うん』

『昨日はさ、あんな風に言うつもりなかったんだ』

『あんな風?』

『……ロキのことを好きだなんて思ってない、とか…』

(え…これってもしかして…)

『あ、え…えーっと、あのね…私…』

(落ち着け…落ち着けよ、おれ)

『私ロキのこと好きだよ、好きじゃないとコラボとか大会出場なんてしてないよ』

『…それっておれのことを好き?ってこと?』

『え、あ!違うよ!げ、ゲーム仲間としてね??昨日言いたかったのは、そ、そういうこと!』

『つまり、おれのことはゲーム友達として好きってこと?』

『え…、うん…』

(やっぱり思ってた通りだ。mmみりにとっておれはゲーム友達でしかないんだよ)

『まあでもおれもそう思ってたから、これからもよろしくね』

『う、うん…』

(めちゃくちゃ気まずいな…)

『そういえばロキが言いたかったことって何??』

『あー、いやなんでもないよ。ちょっと用事あるから落ちるね、話せてよかった。ありがとね。じゃあね』

『…あ…あの…ごめんねロキ。ばいばい』

ー♢ー♢ー♢ー通話終ー♢ー♢ー♢ー



完全に一線を引かれたな。

まあでも一緒にゲームができなくなったわけでもないし。


少し物思いにふけた後、気分転換に配信で視聴者とポケ〇ンバトルを始めたが、通話終わりのmm”ばいばい”という言葉が頭から離れなかった。


♦♢♦


「なあ瑛人」


「…ん?なに」

おれの真剣な眼差しに気づいた瑛人は炒飯を食べるのを止めた。


「あのさ、バイトを手伝っ…」


「ムリムリムリ」

口を開いた瞬間再び炒飯を食べ始めた。


「は?なんで」


すると瑛人は、はぁ、とため息をつきスプーンの先を向けてきた。

「おれは今インドカレー職人なの。はい、これだけ」


「いや別に少しくらい手伝ってくれてもいいじゃん、人手が必要なんだよ」


「じゃあ言わせてもらうけどさ、そのバイトってお前がよく話してる古着屋のことだろ?しかもそこ給料も安いって言ってたじゃねーか」


ぐ…返す言葉が無いというのはこういう時に使うのだろう。

「頼む!給料のことはおれからちゃんと言っておくから」


「てか嬌太郎ってそこで働いてるわけじゃないよね、なんでそこまで肩入れするんだよ」


はっ、そういえばそうだ、まりさんの頼みとはいえ断る権利はおれにだってある…、でもなんでおれは。


「…悪いけど今回は手伝えないな」

話し終えると瑛人は残りの炒飯を一気に平らげた。


♦♢♦


講義が終わり今晩の動画製作に備えスーパーに夜食を買いに来た。

店内をブラブラと歩いていると電話がかかってきた。


ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー

『もしもーし!!!!』

『ぅわ!!…も、もしもし?どうしたの瑠美ちゃん』

ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー



鼓膜が破れるって…、心の準備をしてからとるべきだった。



ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー

『今度遊びに行くんだけどさ、…あのさ…あの…』

『あー、雪弥?』

『はあああ!?!?何言ってんの!?バカじゃないの!?』

ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー



うわー、分かりやすいなあ…。



ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー

『また2人で会ってみたらどう?』

『そんなの無理!!』

ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー



無理なのか。



ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー

『おれも付き添おうか?』

『いいの!?』

『うん』

『たまには役に立つじゃん!嬌太郎!』

ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー



うぜぇ…。

ん?待てよこれって利用できるんじゃないか?



ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー

『その代わりと言っちゃなんだけど、1つ頼みを聞いてくれない?』

『はあ?なんであたしが嬌太郎なんかの指図を受けなきゃならないの』

『ふ~ん。じゃあ雪弥のことは検討、ってことで』

『えー!!ちょっとちょっと!!頭おかしいんじゃないの!?』

ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー



どうとでも言ってくれ、おれにはどうしてやらなければならないことが。



ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー

『頼むよ、そしたら雪弥とのことをこれからも全力でフォローするから』

『ふぉ、フォローって一体何を…?』

『まあそれはあとで、かな?』

『嬌太郎のくせに生意気!んで、なんなの頼みって?』

『えーっと、あのさ、バイト手伝ってほしいんだよ』

『はー?バイトお?』

ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー



そう、頼みというのは他でもない、まりさんからのバイトの増員だ。



ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー

『うん、知り合いが困っててさ。瑛人にも断られちゃっておれも困ってたところなんだよ』

『それで、あたしがちょうど電話したわけか』

『そういうこと、頼むよ』

『……雪弥くんとのことちゃんと応援してくれるなら…別に…』

『するする!なんでもするよ!』

『なんでも!?バカ!変態!』

ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー



何を勘違いしてるんだ?

瑠美ちゃんは本当に雪弥のことが好きなんだな。



ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー

『で!?なんのバイト?』

『ああ、古着屋だよ』

『え!?古着屋!?いいじゃん!』

『いいの?』

『うん!あたし働いてみたかったんだよね!』

ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー



でも瑠美ちゃんが古着着てるところみたことないんだけど…てかいつも真っ黒な感じだし…。



ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー

『近々連絡くるからその時また連絡するね』

『うん!待ってるよ!じゃ!』

ー♢ー♢ー♢ースマホ電話ー♢ー♢ー♢ー



なんか終盤は雪弥のことより古着屋に夢中になっているように感じたけど…まあいいか。




―――― こうしておれは瑠美ちゃんとの異色のコンビでまりさんのバイトを手伝うこととなった。




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