第47話:元カノの恋愛相談
―――― SNS【mmみり】――――
『ちょっと話してみたいかも』
『え、本気で言ってる?』
『だめかな?』
『だめじゃないけど』
『そまりさんがどんな人なのかもっと知りたい』
『あの人結構無神経なところあるけど大丈夫?』
『うん、平気だよ』
―――― SNS【mm】――――
困ったな…ここまで言われると呼ばざるを得ないよな。
―――― SNS【mm】――――
『わかった、ちょっと準備して待っててね。もう少ししたら呼ぶから』
『うん、ありがと』
―――― SNS【mm】――――
どうして2人ともノリ気なんだよ
頭痛がひどくなるのを感じた。
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
『えーっと』
『どうだったー??』
『…話してみたいって』
『やったー!わーいわーい』
(そんなに嬉しいのかよ)
『今呼ぶから』
『はーい』
〈mmさんがログインしました〉
『あ…もしもし、mmです。はじめまして…』
『mmちゃんやっほー、来てくれると思ったよ。あ、ウチそまりだよー』
『え?あ、はい…よろしくお願いします』
『ねえ、いきなりそのテンションにはついて行けないから』
『えー、大丈夫だよー。ね?mmちゃん』
『あ、はい!』
(温度差ひどいな…)
『そまりはmmと何か話したかったの?』
『そりゃーもちろん。いっぱい聞きたいことあるよー』
『え、なんですか??』
『まずさ、どうしてロキくんとコラボしたの?これがすごく気になってたんだよねー、この子コラボなんてしないからさあ』
(この子って…)
『ろ、ロキが誘ってくれたんですよ。私は何も…』
『そうだよ、おれが誘ったんだよ』
『え?そうなの??ロキくんってそんなコミュ力あったー?』
(う、うぜぇ…)
『あーるーよ』
『へー、じゃあどうしてmmちゃんにしたの?』
『視聴者に薦めてもらった…からだよ…』
『んー?それだけー?』
『…あとは、実況が面白かったしジャンルが似てるからいいなって…』
『だってさ、mmちゃん』
『え!?あ!はい…私も同じです…』
『なーんだ、ウチも誘ってくれればよかったのにー』
『そまりは音信不通だし、実況もやめてたじゃんか』
『あー、そっか』
(なんか危なっかしいな…変な爆弾落としたりしないといいけど)
『ねえmmちゃん』
『はい?』
『ロキくんのこと好きなの?』
(はあ!?おいおいおいおい!何聞いてんだよ!)
『あああ!切ろう、通話切ろう!』
『なーに焦ってるのー?ロキくん』
(こ…いつ…楽しんでるな…)
『…私は…』
『なに?mmちゃん』
『私はロキのことがす………きとかはないです……』
(え……?)
『んー、そうなの?』
『……はい』
(…だよな、そりゃそうだ。何自分一人で浮かれてたんだろう)
『そうなんだあー、じゃあロキくんはウチがもらうね。問題ないよね?』
『は?な、なに言ってるんだよ』
『だって、ウチロキくんのこと好きだもん』
(何言ってるんだよ…よく分からなくなってきた)
『…』
『mm、気にしなくていいから!そまり酔ってるみたいなんだよね』
『え?お酒なんて飲んでないよー?言ったからね。ウチがもらうよ、ロキくんは。じゃ、おやすみー』
『あー、ちょっと!』
〈そまりさんがログアウトしました〉
『えーっとさ、そまりの言ってたこと気にしなくていいから。あれ全部冗談だよ』
『…』
『mm?どうした?』
『ううん、なんかごめんね。おやすみなさい』
〈mmさんがログアウトしました〉
『…最悪だ』
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
♦♢♦
翌朝。
あれだけ昨日頭を悩ませたの割にすんなりと起きることができたことに驚いた。
…フラれたのか?
いやそもそもおれはmmを好きだったのか?
それにまりさんは…またおれのことを。
あの人にとって恥ずかしいという感情はないのだろうか?
先日、まりが初めて告白した際に彼女は赤くなった顔を隠すため遠くへ走り去ったことに嬌太郎は今も気づいていなかった。
mmみりとは友達止まりって感じなのかな。
まりさんとは…よく分からないな。
でも前のことも踏まえると本気で言ってくれてるんだろうけど…。
大会前には安定していた嬌太郎の気持ちは、mmとまりの間で再び揺れ始め少しずつそれは傾いてきていた。
♦♢♦
大学の教室へ着くと瑛人が先に席を取り机に突っ伏して寝ていた。
おれよりも早くから講義があったから睡眠不足なのだろうと極力音を立てず隣りに座った。
この講義は莉未りみも履修している。
ソシャゲをしながら講義開始の時間を待っていると莉未が教室へ入ってきた、が、どうやら元気がない様に見える。
何かあったのだろうか。
気になるが元カレのおれが出しゃばって相談に乗りに行くのもおかしな話だと思いソシャゲを再開した。
「なんか莉未ちゃん元気なくね?」
ふあ~あ、と大きなあくびとともに瑛人が伸びあがる。
「え?ああ、まあ」
「なんだ知ってたのか?声かけてやればいいのに」
「バカか、元カレが毎回声かけてたらおかしいだろ」
「ん、なに?よく話すの?お前ら」
しまった口が滑った。
まあでも研究絡みのことが大半だしいいだろ。
「たまにね」
「そうなんだ、まあ気が向いたら話し聞いてみたら?」
もう一度大きなあくびをした瑛人にハイハイと答え、配られた出席カードに名前を書き講義に入った。
♦♢♦
「おつかれ、んじゃおれバイトあるから急ぐわ」
前はホストでその前は寿司屋、そして今はインドカレー屋。ホストはまあ瑛人にとって天職だろうと思っていたがそこからインドカレー屋にジョブチェンジするとは予想だにできなかった。
じゃあな、と手を振りガムを買いに売店に行くと後ろから莉未がついて来ていることに気が付いた。
「あれ、どうしたの?」
「え!?…別に…」
明らかに様子がおかしい。
てか無言でつけるのはちょっと怖いのだが。
「売店に用?」
「そ、そうだよ」
「何買うの?」
「えーっと…あの、ジャ〇プ発売日だからさ!」
「発売日って月曜だよ、今日は木曜」
「え?あー、えーっと…」
恐らく用があるのは売店ではなくおれのようだ。
「よかったら食堂行かない?次の講義まで時間あるからさ」
「うん、私も」
♦♢♦
売店で買ったコーヒーを莉未に渡す。
「……おれで良かったら聞くよ?」
「…え、……いいの?」
彼女は、はっとした表情の次に上目遣いを向けてきた。
「あ、うん。何かあったんでしょ。…好きな人と上手くいってないの?」
恋愛相談を受ける元カレは存在するのだろうか。
「…うん。振っちゃった…のかもしれない」
「へ?なんで?」
「分からない、動揺してて気づいたらそんな感じのこと言っちゃってた」
莉未は俯き黒い髪で目元を隠した。
「訂正したらいいんじゃないの?」
「どうやって??今更無理だよ…」
「あっちも傷ついてた感じなの?」
「うーん…傷ついてたというか、私の発言をきっかけに違う女の子に取られそうになっちゃった…」
何をしてるんだよ…。
てかそいつモテモテだなあ、おい。
「でもまだ間に合うと思うよ、早めに弁解した方がいいって」
「そう?…そうだよね、今メッセージ送ってみるね」
莉未はバッグからスマホを取出し急いでメッセージを送った。
「送ったよ…これで上手くいくといいんだけど」
「大丈夫だよきっと…」
ピピピ、言い終える前におれのスマホが鳴った。
ん?mmみりからだ。
―――― SNS【mm】――――
『昨日のことで少し話したいことあるんだけど夜通話できる?』
―――― SNS【mm】――――
昨日のこと…か。勘違いしないでね、って感じに釘でも刺されるのかな。
―――― SNS【mm】――――
『了解、じゃあ夜ね』
―――― SNS【mm】――――
「メール?」
「ああ、友達からちょっとね」
ピピピ、今度は莉未のスマホが鳴る。
「返事来た?」
「うん、連絡とれることになったよ。ありがとね嬌太郎」
「いやいいよ、また何かあったらいいなよ」
バッグを肩に掛け立上り、じゃあねと手を振った。
―――― はあ、何言われるのかな、mmに。
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