第35話:駅前で会おうか!
後ろめたい?
mmに対して?
まあ数少ない実況者仲間だけども…。
超が付くほど鈍感な嬌太郎には、1ヶ月以上共にコラボ動画を撮っていたことでmmへ感情が動いていることに気づきはしなかった。
いやないない、そんなことよりもさっさと編集しないと自分の分もあるし。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
数日後
そろそろそまりとのコラボ動画投稿しようかな。
mmとのコラボ動画完結からそこそこ日が経ったし。
雪弥の忠告通り、mmに嫌な思いをさせないよう時間を置いてそまりとの動画を投稿することにした。
よし、…投稿完了!
===ロキ+そまりコラボ===
「どうも、ロキです。今日は先日配信にて急遽乱入してきたそまりさんとコラボします!」
「はーい、そまりだよー。よろしくねー」
「自己紹介ありがとうございます。えーっと、コラボするゲームはこのマリ〇メーカーっていうゲームですね、まあみなさん知っているでしょう」
「うんうん、知ってるー」
「あなたは知ってて当たり前だよ。で、今回はおれが作ったステージをそまりさんにクリアしてもらいます!」
「よゆーだと思うなー。だってロキくん下手だし」
「はいはい、じゃあやってもらいますよー、クリアできなかったらちゃんと謝罪してね」
「ういー」
「じゃあはじめます!」
タタタッ、プイーン、ピコンッ、プヨーンプヨーン……
「はーい全部くりあー」
「……」
「おーい、ロキくん?」
「あ、え?もう終わっちゃったの??」
「うむ。かんたん過ぎだよー」
「は、ははは…ごめんなさい」
「ま、次はもうちょっと凝ったステージを作ってくれることを期待してるねー」
「はい…今度はもう少し気合入れます!」
「うんうん、じゃあまたねー」
「って待て待て、一応おれのチャンネルなんでおれが締めますよ!」
「そっかそっか、忘れてたー」
「じゃあ、えー、今回はそまりさんとのコラボでした。ご視聴ありがとうございました!よければチャンネル登録お願いします!」
「まったねー」
===============
いいのかな、こんなので…。
でもまあ投稿しちゃったし手遅れか。
ピピピ。
―――― SNS【そまり】――――
『投稿ありがと、えらいねー』
―――― SNS【そまり】――――
随分反応が早いな。
―――― SNS【そまり】――――
『見るの早いじゃん』
『まあ今日は休みだしさー』
―――― SNS【そまり】――――
今日って平日だよな、ってことはそまりも学生か?
―――― SNS【そまり】――――
『ねえロキくん』
『ん?』
『明日ひま?』
『んー、まあ18時以降なら』
『おー、いいねいいねー』
『何がいいんだよ』
『明日会おうよ』
『え?ああ、通話ってこと?』
『ちーがうよ。19時に横浜駅前。よろしくねー』
『は!?ちょっと待ってよ!ねえ返事返してよ!?』
―――― SNS【そまり】――――
早朝までそまりからの返事を待っていたが一向に返ってくることはなかった。
おいおいおい、なんで急に会うなんてことになるんだよ…!
ソファに座り頭を抱えた。
♦♢♦
その日の昼
瑛人と雪弥と学食で昼食をとっていた。
「どうした、元気ねえな。それ食っていいか?」 瑛人はおれのから揚げを箸で差した。
「…いいよ」
「嬌太郎くん本当にどうしたの?午前のテストも上の空だったし」
この二人にそまりに会うなんて言っていいのだろうか。
そもそも女性実況者とリアルで会うなんてことは絶対にしないと自身に誓っていた。
…あまりいい噂を聞かないからだ。
「はあ…」
「おいおい、大丈夫か?腹いてえのか?全部食ってやるぞ?」
どうやらこいつはおれの心配などしていないらしい。
「なあ瑛人、女の人と話すときって何を話せばいいんだ?」
「は?あ~、そういうことね。まあその子の外見を褒めることから始めるんだよ。それであとは相手の話しを聞いてあげる、まあ聞き上手になるってことだ。こっちが一方的に話してると女の子は疲れるからな。話題としては…」
「あー、了解了解。ありがとな」
止めないと話しが長くなりそうなので断ち切った。
「嬌太郎くん、女の子と会うの?」
雪弥はコーヒー缶を置いた。
「ん…まあ」
「嬌太郎…お前なら大丈夫だ。今日だけは莉未ちゃんのことを忘れて楽しんで来い!」
言ってることがめちゃくちゃだな…莉未と復縁させたいのか次へ進めさせたいのか。
「すごいね、僕にはとてもできないや。頑張ってね」
「あ、ああ、うん」
何をどう頑張ればいいか分からないが二人に背中を押され少しだけ気が楽になった。
「じゃあ午後のテストも頑張ろうね!」
…そうだ午後もテストあったんだった…。
♦♢♦
全講義が終わった。
「じゃあがんばれよー!朝帰りは禁止な!」
瑛人がハハハ、と笑いながら手を振った。
「しないよ、すぐ帰るから!」
はあ、気が重い。
さっさと会って少しお茶でもして帰ろう。
どこだったかな待ち合わせ場所。
メッセージを見て再確認後、横浜駅前に向かった。
駅までにはここから30分くらいで着くから余裕だな。
時間前行動を心がけているおれはその辺もしっかり気にかけ電車に乗った。
…あれ、待ち合わせるのはいいけどどうやってお互いを見つけるんだ?
「そまりー!!」なんて大声で呼ぶなんてごめんだぞ。
聞いてみるか。
―――― SNS【そまり】――――
『駅前に着いたらどうすればいいの?』
―――― SNS【そまり】――――
まあ19時までには返事がくるだろう、まだ45分もあるのだから。
―――― 腕時計を何度も確認する。
今19時だよな??
どうしてそまりのやつメッセージ返して来ないんだよ…。
それから30分が過ぎる。
はあ…会うっていうのも嘘だったのか?
でも流石にこれはやりすぎだよ…。
諦めて改札へ向かう途中後ろから女の人の大きな声が聞こえた。
「おーーーーーい!ローーーーーキーーーーくーーーーーん!」
なに?
「おーーーーーーーーーーい!!いないのーーーーーー!?」
この声、この喋り方、そして呼び名…。
最悪だ。
もっとマシな探し方があるだろ…ッ!
おれは声のする方へゆっくりと近づいた。
「ロ・キ・くーーーーーーーーーん!」
居た…。
周囲の人が避けている為その声の持ち主を特定するのは容易だった。
でもこれじゃ近づけないじゃないか。
どうする、どうする…。
あ!これなら…。
バッグからレジメを取出し紙飛行機の形に折りそこへ飛ばした。
足元に着陸したその紙飛行機に気づいた彼女はそれを拾い紙を広げ、辺りを見渡しショッピングモールの方へ走った。
急げ、おれは彼女よりも早くそこへ着かなければならなかった。
20メートルほど息を切らしながら走り、到着するのを待っていると数秒後に彼女も着いた。
人が沢山いるので声を大にして彼女に声をかけた。
「あの!」
すると彼女はキョロキョロと見渡した後にこっちを向いた。
……あれ?
「あーー!きょーたろうくんじゃーん。どうしたのーこんなところでー」
青いキャップをかぶった茶髪の彼女がおれを指さした。
「…ま、まりさんこそ何してるんですか??」
どうしてまりさんがこんなところに?
てかさっき『ロキくん』って呼んでたよな…。
聞き間違いか?
いや……。
「えー、人探しだよー。待ち合わせしてたのにその人がなかなか来ないからさー。バックレたのかな?」
ちょっと待てよ…
まりさんが”そまり”の可能性ってあるのか?
ここで誰を待っているのか、なんて聞くのも野暮だしな…。
「まあいっかー、きょーたろうくんご飯でも食べに行かない?」
「え?誰か待ってるんじゃ…」
てかおれもそまりを待ってるんだよなあ。
「だって来ないしさー、奢ってあげるからいこうよ!」
「え!?でも」
「あ、ほらファイナ〇ファンタジーの話し聞きたいしさー」
ああ、そういえばあの時まりさんの店でバイトした時もらったな。
「あ、はい。まあこっちも待ってる人来ないみたいなんで」
「おー、奇遇だねー。じゃあ行こー」
どいてどいてー、と人混みをかき分けズカズカと進んでいった。
…マイペースな人だよな。
「ここでいいかい?」
まりさんが立ち止ったのは焼き肉屋さんの前だった。
「え、焼肉は高いっすよ」
「だーいじょーぶ。こう見えて店長様だよー」
あー、そうだ。こう見えて店長さんだったな。
「はい、いっくよー」
「え、ちょっちょっと…」
腕を引っぱられ店内に入った。
席に着きザックリと注文し届いた肉を焼きながらゲームの話しをした。
「あー、でもウチはクロノ〇ロスが好きかなー。この前もやってたよー」
「クロノ〇リガーも良くないですか?」
「どっちも好きだけどねー」
おれ達はゲームの話しで盛り上がっていった。
「いやーでも聖剣〇説はLEGEND OF MANAが至高だよねー」
「まじすか、おれは4やってました」
「4推しはなかなか珍しいなー」
「よく言われます」
「でもやったことないから今度実況でやってみようかなー」
「そうそう、やったことないゲームって実況とかでやりたいですよね」
「おー、きょーたろうくんも実況者なんだー」
「そうなんですよー、楽しいですよね実況って……え?」
「ウチも実況者なんだー。ほんと奇遇だねー、待ち合わせ場所も一緒だったし」
まりさんはいい感じに焼けたハラミを取り皿に分けた。
「…」
「んー?あ、もうちょっと食べたかった?」
「いや…もしかしてまりさんって”そまり”っていう実況者さん?」
「あれー、なんで知ってるの?すごいねー」
モグモグと肉を口に含んだ。
「あの…さっき探してた人って”ロキ”って人?」
「おー、なんでわかったの。きょーたろうくんってエスパー?」
次はホルモンを焼き始めた。
「えーっと、おれがその”ロキ”なんですよ…」
「……」
引いてるのか…?
「あ、ごめん今肉飲み込んでたー。へえー、きょーたろうくんがロキくんだったのかー、なるほどねー」
彼女はホルモンの焼き加減を確認した。
―――― 肉じゃなくておれの方を向く場面じゃない…!?
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