第31話:そまりさんってどんな人?

今なんて言った?コラボがどうのこうのって…。

驚いたおれは振り向いたが莉未は窓の隙間から吹く風に髪を揺らしグッスリと眠っていた。

な、なんだ寝言かよ…。

って最近コラボという言葉に敏感すぎるよなおれ。

寝言だとしたら何かのアニメとか漫画のコラボの方が現実的だろう。


「…おい嬌太郎…莉未ちゃんが起きちゃうから早く先に行けよ…」


「あ、わりぃわりぃ…」

そうだなおれの勘違いだ。


席に着くと隣りに座った雪弥が声をかけてきた。

「ねえ今日もあれやらない?」


「あれ?ああ、あれね」

21時でいいか、と聞くと雪弥は少年のように嬉しそうに笑った。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦



===ロキ配信===

「どーも、ロキです。おつかされさまです。今日もまたス〇ブラをやっていくのですが…またまた先日の挑戦者がいます。じゃあどうぞ。」

「こんばんわ。廃リバーです。えっとこの前に引き続きロキさんと戦うことができるということで今回はしっかりと鍛えてきました」


(雪弥のやつ、この前おれのことボコしておいて…オーバーキルするつもりか?)


「いやいやあれ以上ボコられるとおれの立場ないっすよ」

「ロキさんも強いので!」


(本気で言ってるのか、煽っているのか…。まあ雪弥は前者なのかな)



―――チャット欄 ―――

『こん』

『おー、スマ〇ラか』

『廃さんこんばんわ』

『はいさんの声好き』

『ロキの声もいいよ』

―――チャット欄 ―――



「ありがとうございます。僕配信とかしないので本当緊張します」

「慣れるから大丈夫ですよ」

(やっぱり敬語で話すの違和感あるよなあ)

「じゃあ早速やっていきましょうか廃リバーさん。今部屋作りますね」

「わ、わかりました!」



―――チャット欄 ―――

『廃リバーさん可愛い』

『視聴者とられるぞ』

『ごめんねロキ』

―――チャット欄 ―――



「おいおい、それはやめて。これからちゃんと勝つから」



―――チャット欄 ―――

『ロキは負ける』

『フラグ立ててるやん』

『まあがんば草』

―――チャット欄 ―――



「うわー、絶対勝つ!じゃあおれはロ〇使いますよ」

「僕はヨ〇シー使うね。久々だから厳しいかもですけど」



―――チャット欄 ―――

『ロキがロ〇ってガチやん』

『確かにロ〇で負けたのあんま見たことないな』

『ヨ〇シーって上級者向けなイメージ』

『廃リバーさんはなんでも強そうなんだよなあ』

―――チャット欄 ―――



ステージを終点にし、戦闘が始まった。

ボコッ、バシッ、ペロンッ、グルリンパッ



―――チャット欄 ―――

『草』

『まじかよ!』

『うおお』

―――チャット欄 ―――



「……まあこんなもんっすよ」

「ロキさん強いですね!」



―――チャット欄 ―――

『おれ悲しくて見てられなかった』

『3タテはちょっと…』

『廃さんつっよ』

『これがゲームセンスの差か』

―――チャット欄 ―――



「あのさあ、特訓しなくていいんだよ?廃さん」

「え?ヨッシーは練習してないですよ」

(……こいつ)

「じゃあ勝つまでやってやりますよ!」

「わーい、よろしくお願いします」

「じゃあステージは…」



―――チャット欄 ―――

『ウチと勝負しない?』【スパチャ:5千円】

―――チャット欄 ―――



「あ、スパチャありがとうご…ぇ…え?」

ピピピ、スマホの通知音だ。



―――― SNS ――――

『やっほーロキくん。ウチと戦おうよー』

―――― SNS ――――


そまりか、このスパチャは。


―――― SNS ――――

『なんでだよ』

『ほら早くしないと視聴者さん困っちゃうよー?』

―――― SNS ――――



―――チャット欄 ―――

『誰だ?こいつ』

『5千円って』

『早く進めろよー』

―――チャット欄 ―――



―――― SNS ――――

『ほらほらー』

―――― SNS ――――



ったく…。


「えーっと…そのスパチャの人、おれの実況仲間です。ちょっと相手してもいい?廃さん」

「え?僕は大丈夫ですよ」

「じゃあ今繋げますね…」


―――― 「あ…ぁ…あー。あれ聞こえてるかな?」


「あ、はい聞こえてますよ。では自己紹介どうぞ」

「はーい、ウチはそまりって言いまーす。むかーしむかし実況やってた者です」



―――チャット欄 ―――

『そまりってあのそまり?』

『そまりって実況辞めたんじゃないっけ?』

『おー、復活なん?』

『ロキと友達だったのかよ』

―――チャット欄 ―――



「僕ははじめましてですね。よろしくですそまりさん」

「はーい、こっちこそよろしくねー廃くん。ささ、ロッキーくん勝負しようじゃあないか」

「はいはい、じゃあさっさとボコしましょうか」

「わー、煽るの禁止なんだよー」

ステージを戦場にし、おれはリ〇ク、彼女はリトル〇ックを選んだ。

正直マックには負けたことはない。

それにそまりがス〇ブラをやってるところなんて見たこともない…これは勝ち確だ。



―――― 「わーい、勝った勝ったー」


「すごい、そまりさん強いね!」

「いやーそれほどでも、あるんだなーそれが」

嘘だ…リ〇クもおれの持ちキャラだったのに…。

「まーまー、ロキくん。そう気を落とさずに。筋はいいんだからさー」

こいつに言われるとすげーむかつくな。

「今日はゲストを招いてってことなのでおれも本調子は出しませんでしたよ!」



―――チャット欄 ―――

『ロキ涙拭け』

『大丈夫、おれらが居るから…』

『なんか草』

―――チャット欄 ―――


視聴者に励まされるおれ。


「じゃあ今日はここまでで!ありがとーございました」

「あ、ありがとうございました」

『じゃーねー、みんなー。おやすみ」



==========


放送後


容赦なくおれをボコってきた雪弥はともかく、問題はこの乱入女だ。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

「おい、そまり」

「ん?どったのー」

「どったの、じゃないよ。何したか分かってるのか?せっかく廃リバーが来てくれて楽しくやってたのに」

「まあまあロキくん、僕は三人で配信してて楽しかったよ?」


雪弥が二人を取り持つように慌てて声を出した。


「そーそー、楽しかったらそれでいいの。実況って楽しむのがモットーじゃん?」


全く悪気のない表情をしているのが目に浮かぶ。


「だとしても、段取りとか必要だろ?急にスパチャで声掛けた上でメッセージ使って早くしろって脅すしさ」

「おどしー?なんのことかサッパリわからなーい」

「あ…あはは、そまりさんって面白いね」


雪弥も流石に引いている。


「じゃウチ寝るねー、おーやーすーみー」


プツッ


「あ!おい!」

言い返す間もなく通話が切れてしまった。


「切れちゃったね…。そまりさんって何者?」


「ただの迷惑人間」


「そっかあ。でもさ、ロキくんすごく楽しそうだったよ」


「いやそれはないよ、ほんと迷惑なんだよ昔からずっとあんな感じでさ」


「へえ、まあいっか。また今度スマ〇ラしようね」

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


雪弥は笑混じりに通話を切った。

おれが楽しそうだった?なに言ってるんだか。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦


翌日


研究室で向かいに座っているのは別れた彼女の莉未。

だが前回とはまた表情が違う。

この前は何故か頬を赤くし俯いたままだったが、今回は明らかに落ちている。

失恋でもしたのか?


「…じゃあ始めようか」

重い空気を必死にかけ分けた。


「あ、うん。えーっと何するんだっけ…」


莉未本当に大丈夫か?いつもは率先してリードしてたのに。


「大丈夫か?なんか、その…調子悪そうだけど」


「ううん、大丈夫」


「そっか。じゃあ今日はこれから~、あれをして~、それで」

と今日もおれが一方的に進め一日が終わった。


ピピピ、帰り際にスマホが鳴る。mmからだ。



―――― SNS(mm) ――――

『ロキ、おつかれさま。今日動画撮らない?』

『おつかれ、そうだね撮ろうか』

―――― SNS(mm) ――――


mmと通話か、かなり久しぶりな感じだな。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦



ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『お疲れさま』

『ロキもね』

『あれ、なんか元気ない?疲れてる?』

『え?ううん!大丈夫!』


(この前までは異常にテンション高かったのに、何かあったのかな)


『あ…あのさ!』

『なになに?』


(いきなり声でかくて焦ったぁ…)


『この前の配信見てたよ。すごく楽しそうだった』

『あー、廃リバーさんとそまりの?』

『うん、羨ましいなって思った』

『どの辺が?二人とも煽ってくるしめんどくさかったよ』

『そういうところがいいなって思った』

『え?』

『そまりさんと話すときのロキが素で居るように感じてさ』

『あー、まあ付き合いが長いからね』

『そっかあ。すごく面白くて優しそうな人だと思って見てた』

『そうかなあ』

『どんな人なの?教えてほしいな。そまりさんのこと』

『どんな人…って』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー ――――


ピピピ、SNSの通知だ。


―――― SNS ――――

『明日マ〇オ撮ろー!そんじゃ』

―――― SNS ――――


…こいつ。



ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『電話?』

『あ、いや、そまりからコラボのことでちょっとね』

『あ、そうなんだね』

『あれ、何話してたっけ?』

『ううん、もう大丈夫だよ。狩りに行こうよ!』

『いこっか』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー



なにかがあやふやなままだったが無事、mmとモ〇ハンの録画を終えた。


♦♢♦


録画が終わり通話を切ったおれは座ったまま手足を伸ばしあくびをした。

明日か……何年振りだよあいつとのコラボなんて。


よし!鬼畜ステージ作るぞー!



―――― その夜おれはマリ〇メーカーでステージを5個作り、ベッドに倒れ込んだ。




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