第24話:アンチ
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
『私ゲーム実況辞めようと思うの』
『え…どうしたの?なにかあった?』
『……うん』
『おれで良かったら相談に乗るけど』
『いいの?私相談できる人ロキしかいなくて』
『なんでも聞くよ』
『ありがとうロキ。……実はね、最近すごくアンチが増えてきちゃって。私耐えきれなくて…』
『mmにアンチ?最近なにかあった?』(おれとコラボしたことがキッカケか…?)
『特に何をしたとかじゃないんだけど……人気実況者のマネをしてるってよく言われるの』
『マネ?でもそんなこと言ったらおれだって人気実況者を参考にしたりすることあるけどなあ』
『そうだよね、だから最初は流してたんだけど最近配信するとアンチの人がすごく増えてきて…』
『mmは配信がメインだもんね。出禁にしたらいいんじゃない?』
『してるんだけど、どんどん増えてきて…。もうどうしていいか分からないの』
『そんなにひどいのか…わざわざ配信に来てコメントしていくなんて相当だね』
『うん…、もう疲れちゃったし配信もできないから休止しようかなって。コラボしてくれてるロキには本当に申し訳ないけど』
『おれは別にいいけどさ、mmが実況を辞めちゃうのはもったいないよ』
『でもどうしようもできなくて…』
(もったいない、アンチなんてごく一部の存在だ。そのせいでmmが実況を辞めるなんてことはあってはならない。何かいい方法はないか……待てよ、これなら…)
『ねえ、おれに一つ考えがあるんだけどいいかな?』
『え?なに?』
『今は言わないでおく。mmはきっと止めるだろうしね』
『え、大丈夫なの??』
『大丈夫だって!とりあえず明日配信やるから見てよ』
『配信?どういうこと?無理なことはしないでよ?』
『そう、配信でね。大丈夫だよ。なんか打合せって感じでもなくなったから今日はここで終わろっか』
『あ、ご…ごめんね私のせいで』
『気にしないでいいから、じゃあ明日。おやすみ』
『うん、おやすみ』
ー♢ー♢ー♢ー通話終ー♢ー♢ー♢ー
元気がないと思ったらそういうことか。
今の今までアンチがいなかったってのは驚いたな。
やっぱりおれの影響もあるのかもなあ。…その考えはよそう。
―――― とりあえず明日の作戦を考えるか。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
翌日21時。昨日の夜、通話を終えてすぐにSNSで今日の配信の告知をしたので少なからず視聴者は集まってくれるはずだ。
よし、やるか。
===ロキ配信===
「こんばんわー、ロキです。みんなおつかれー」
―――チャット欄 ―――
『おーっす』
『こん』
『ひさびさやん』
『今日はなにするのーーー』
―――チャット欄 ―――
「ほんと久々だね。今日はちょっとみんなに報告があります」
―――チャット欄 ―――
『報告?』
『やっと彼女できたか』
『たいしたことないんだろ、どうせ』
―――チャット欄 ―――
「彼女はできてないんですよね、残念ながら…。ってそういう話しじゃないんですよ」
―――チャット欄 ―――
『んじゃあなに?』
『ドキドキしてきた』
『はよ』
『なんか草』
―――チャット欄 ―――
「あのー、おれ今mmさんとコラボさせてもらってるんですけど、ちょっとそのことで話そうかと」
―――チャット欄 ―――
『mmさんのこと?』
『mmと付き合ったのか?』
『ケンカしたん?』
―――チャット欄 ―――
「いやそういうのじゃなくて、一つ言わせてほしいことがあるんですよ」
―――チャット欄 ―――
『だからなんやねん』
『なになに?』
『はよ言えええええええええええ』
―――チャット欄 ―――
「…あの、おれがさせたんですよ」
―――チャット欄 ―――
『?』
『なにが?』
『させた(意味深)』
―――チャット欄 ―――
「ごめんごめん、ちょっと説明が足りなかったっすね。最近mmさんに大勢のアンチが付き纏ってるのは知ってますか?」
―――チャット欄 ―――
『知らん』
『あー、なんか見たかも。配信がすごく荒らされてた』
『なんだっけ、誰かの真似だろー。みたいなこと言われてたな』
『ちょっとかわいそうだった』
―――チャット欄 ―――
「そうそう、誰々の真似じゃん。みたいなことを結構言われたんですけど、あれ、おれのせいなんですよ」
―――チャット欄 ―――
『は?』
『どういうこと?』
『なにしてん』
『ちょっとよく分からない』
―――チャット欄 ―――
「おれがmmさんに人気実況者さんっぽくやってみてって言ったんです」
―――チャット欄 ―――
『だからなんで』
『よーわからん』
―――チャット欄 ―――
「つまり、おれとmmさんのコラボ動画を伸ばすには二人の知名度をもっと上げなきゃいけなかったんですよ。だからmmさんに真似してもらって目立ってもらおうとしたらそれが裏目に出ちゃった感じです」
―――チャット欄 ―――
『ロキやば』
『何させてん』
『んー、ちょっとミスったね』
『悪いのロキやん』
『mmちゃんに謝れ』
―――チャット欄 ―――
「うん、ちょっとミスったね。この場を借りて謝ります。本当にすみませんでした」
(これでアンチの標的はおれに変わり、mmについていたアンチは徐々に減っていくだろう)
―――チャット欄 ―――
『オレは別に気にしないけど』
『わたしも気にしないけどアンチ押し寄せてきそう草』
『不器用』
『ばっかだなー、まあスマ○ラで勝ったら許してやるよ』
―――チャット欄 ―――
「ほんとごめん!じゃあスマ○ラでみんなに勝ったら許してもらうことにしますね。10分後には許されてると思いますよ」
―――チャット欄 ―――
『おーい、調子のんなよ』
『ロキ雑魚やん』
『早くやろう』
『いきなり煽ってきたな』
―――チャット欄 ―――
「よし、じゃあサクッと片付けますか!」
開始2時間後、おれはようやく視聴者からお許しをもらえた。
ふう、これで一件落着…かな?
―――― プルルルプルルル
ソファに横たわり休憩していると、PCの通話ツールから着信音が聞こえた。
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
『もしもし、ロキ!』
『あ、見てくれた?さっきの配信』
『見たよ、でもどうしてあんなこと言ったの?あんなの全部ウソじゃん…』
『確かに嘘だよ。でもおれがそうしたかったんだよ』
『…どういうこと?』
『だっておれとコラボを初めた時期からアンチが増えたんでしょ?だったらおれが責任をとらないと』
『でも……』
『mm、おれも昔アンチに付き纏われて実況辞めようと思った時期があったんだよ』
『え、ロキにもそんなことがあったの?』
『うん。でもね、その時辞めちゃだめだってフォローしてくれた人がいたんだよ。それで辞めずに地道に投稿していくうちに耐性もついてきて実況ってやっぱり楽しいなって思えるようになったんだ』
『…私もそう思えるようになるかな』
『きっとなるよ。mmがまた実況や配信を楽しくできるようになるまでおれが支えるよ』
『…どうしてそこまでしてくれるの?』
『だっておれにとってmmは特別な存在だからね』
『…え…それって…』
『あ!ごめん大学のレポートやってなかったんだ!…ん?あれ、今なにか言おうとした?』
『ううん、なんでもない!』
『ならよかった。ごめんね、続き話すのまた今度でいい?』
『うん、いいよ。今日は本当にありがと…ロキ』
『感謝なんていらないよ、おれがしたかったことをしただけなんだから。じゃあまたね』
『ありがとう…またね』
ー♢ー♢ー♢ー通話終ー♢ー♢ー♢ー
やっべー、夕方レポートやっておけばよかったあああ!
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
通話を終えた莉未。
ヘッドセットを頭から首元に下げ、PC画面のロキのサムネを見つめる。
21時から配信を見始めていた莉未はロキのでまかせを聞き、すぐに通話をして止めなければいけないと思い通話を試みたが、ロキがオフラインにしていたためその声を届けることはできなかった。
バカ…、ロキのバカ…
―――― 私、ロキのことを……
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