第25話:彼女いる?
(私…ロキのこと、す、好きに…。いやいやだめだめ、コラボしてるんだからそんな風に思っちゃだめ)莉未は自分の危機を救ってくれたロキに惹かれていることを隠せずにいた。
(普段通りに…これからも普段通りに接していかないと。少しでも感づかれたりしたらもうコラボしてもらえないかのしれない。気をつけないと……でも今日はくらいは浮かれてもいいよね)
と言いながらベッドに行き、枕を抱きしめた。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
また居た…。
講義を終えて一人食堂に向かう途中に彼女が視界に入った。どうしていつも行き先が被るのか、こんなにも校内は広いのに。
嬌太郎きょうたろうは今が昼飯時だということを忘れていた。
ん、笑ってるのか?
後ろから莉未りみの視野に入らないようにこっそりと様子をうかがう。
yo○ubeだ。莉未はyo○ubeで何か見ている。
……何を見てるんだ、ちょっとだけ気になる。
付き合ってた頃、莉未は頑なにおれの前でyo○ubeを開こうとはしなかった。
何か隠していたのか?…まあおれも見せなかったけど。万が一ゲーム実況者なんてことがバレたら莉未の目に映る〈嬌太郎〉像が崩れてしまうからな。
っと、そんなことより莉未は何を見ているんだ?ニヤニヤしちゃってさ。
画面が見えつつバレないように距離をとりスマホを覗いた。
えーっと、なんだ?ゲームか?莉未はスマホを横持ちし、実況動画のようなもうの見ていた。
なんのゲームだ?
あれってポケ○ンXYじゃないか?
今まさにその実況動画を撮っている嬌太郎はそれがXYだということを即座に識別できた。
へえ、莉未ってポ○モンに興味持ってたのか。意外だな。
……一緒にやっておけばよかったな。
莉未が歩く道から外れ、違う道から食堂にあるくことにした。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「嬌太郎くん、あのさちょっと話しがあるんだけど…」
カチカチとマウスのクリック音が鳴り響くゲームサークルの部室で雪弥ゆきやがバツが悪そうに口を開いた。
「ん?どした?…あ!うっわ、やられた」
だからVALO○ANTは苦手だって言ったんだ。
「あ、僕もやられちゃった…えへへ」
「えへへ、はいいけど、話しって何??」
「僕達の研究室と嬌太郎くんと瑛人くんの研究室で合同研究するじゃん?それでさ教授が組合せと研究テーマを決めたんだよ」
「あー、そういえばまだ言われてなかったね。……えーっと…なんかさ、雪弥…おれ今すっごく嫌な予感がするんだけど」
「う…うん、つまりそういうこと。あ…あのさ、言っておくけど僕は悪くないからね!」
雪弥はPCをシャットダウンし走って逃げた。
雪弥の研究室には雪弥の他に女子が4人、そのうちの一人が莉未だ。
変えてもらう…なんてことはできないもんなあ。
はあ…。
PCを落しおれも帰ることにした。
翌々日
今日は合同研究のテーマの発表と打合せの日だ。
「嬌太郎、大丈夫か?」
「はあ…」
これから莉未の待つ研究室に行かなければいけないと思うと心底気が滅入る。
「大丈夫じゃないみたいだね…」
「まあ元カノとペアで研究なんて地獄だよなあ。教授は分かってて組み合わせたのか?」
「さすがにそこまで性格悪くないと思うけど」
「いきたくねーよー、やだよー」
「なんだよガキじゃあるまいし。まあ気持ちは分かるけどよ、でも流石にこれは行かないと卒業できなくなるぜ?」
「…知ってるよ」
学内恋愛、職場恋愛…その二つとも別れた後に待っているのは地獄だ。
同じ学科故にほとんどの講義を同じ教室で受ける。
そして問題なのがおれと莉未は円満に別れたわけではなくケンカ別れしたということ。
視線が合う度に緊張が走る。
こんなことになるなら付き合わなければよかったとさえ思ったこともあった。
抵抗も虚しく、おれは瑛人と雪弥に研究室へ連行された。
ガチャ 、雪弥が先陣をきりドアを開くと中には莉未を含む4人の女子生徒、そしておれを失意のどん底に突き落とした憎き教授様が待っていた。
席に着くと心構えをする間もなく悪夢のチャイムが鳴った。
「みんな席に着いたね。じゃあこれから各々テーマに基づき研究を始めてもらいます。おそらく交流の少ない人同士になるんじゃないかと思いますが気兼ねなく意見を交わし進めてくださいね」
交流の少ないだと?こっちは交流どころか交際をしていたんだぞ、こんなの絶対上手くいくわけないだろ。
研究室の広さは高校の通常教室と同じと言ったところだろうか。四人掛けの机が5つほどあり、それぞれにホワイトボードが置かれている。
机に移動すると後ろからip○dを2台持った莉未が来た。
「よろしくね」
「あ、うん」
あれ?いつもみたいにトゲトゲしていないな。
「えーっと私達のテーマは〈マーケティングの広告における視覚的影〉ね。マーケティング関係は嬌太郎の得意分野だね。私も足を引っ張らないようにするね」
「え?…あ、はい」
なんだなんだ、なんか怖いんだけど。この前三桑園で会った時はあんなに怒ってたのに。
「嬌太郎?どうしたの?」
「あのさ…なにかあったの?なんか変だぞ」
「変?そうかな。私は普段通りだよ」
普段通りだったらもっときつい目つきしてるんだよ。絶対なにかウラがあるな。
「なにか企んでるのか?もしくはなにか隠してるのか?」
「え?なにも企んでないよ。隠し事かあ…隠し事も…ないよ」
…なに考えてるのかよく分からないな。まあ機嫌が悪いよりはいいか。
「そっか、じゃあ始めようか。まず方針だけどさ、それぞれで資料を集めて後日集計してみる感じでいいかな」
「うん、そうしよっか」
大まかな範囲を決め、その日は解散することとなった。
順調な滑り出しだけど、すごく気持ちが悪い…。
まだ打合せに時間のかかりそうな瑛人と雪弥をおいて先に研究室をあとにした。
莉未…変、だったよな。
帰り途中コンビニで買い物をしているとスマホのバイブが鳴った。
SNSの通知だ。
開いてみるとそれはmmみりからのものだった。
―――― SNSメッセージ ――――
『ロキ、お疲れ様。あのさ、今日通話できるかな…?』
―――― SNSメッセージ ――――
通話?あー、コラボ動画の打合せか。
―――― SNSメッセージ ――――
『mmもおつかれ。いいよ、何時頃にする?時間合わせるよ』
『私はロキに合せるよ!』
―――― SNSメッセージ ――――
おれに合せるなんて珍しいな。まあいいか、20時くらいにしよう。
―――― SNSメッセージ ――――
『じゃあ20時でいい?』
『分かった!待ってるね』
『うん、じゃああとでね』
―――― SNSメッセージ ――――
んー…なんだろうこの違和感は。
ポテチとジンジャエールを会計し、店を出た。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
よし、今日は先にレポート終わらせたぞー。
最近後回しにすることが多かったから修正していかないと。
お、ちょうど20時だな。
PCの電源をつけmmに通話をかけた。
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
『こんばんわ、おつかれさま』
『ロキもお疲れ様!20時になるの待ってたよ!』
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
…なんでこんなにテンション高いんだ?
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
『えーっと、どうしたの?なんかテンション高いけど…』
『え?…あ!ごめんなさい…』
『いや、謝ることじゃないんだけどさ。ちょっといつもと違うなあって思っただけ』
『ふぅ…。ごめんねロキ。じゃあコラボ動画の打合せしよっか。どこまで進んだ?私はイヴェ〇カーナまでいったよ』
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
急にいつものmmに戻ったな。
テンションの振れ幅が激しくないか?
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
『おれもそこまで進めたところだよ。じゃあもう動画撮っていこうか』
『うん、そうだね。武器なにでいく?』
『おれボウガンでいこうかな、mmは?』
『私はチャージ○ックスでいくね』
『うん、じゃあ部屋作るからいつものパスで来てね』
『はーい、がんばろうね』
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
その後3回目でようやく倒し動画編集について話し合うことにした。
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
『編集はおれやっておくよ。何か要望とかある?』
『ありがとね、要望は特にないよ。ロキが編集した動画は全部面白いもん!』
『え…あ、うん。わかった』
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
なーんか変だよなあ、狩りの時もいつもみたいにガツガツいってなかったし。
まるで時間を長引かせているようだった。
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
『やっぱなんか今日変だよmm。どうかしたの?』
『え!?…なにもないよ…』
『なんか隠してるよ、言ってみなよ』
『…』
『あ、なんかごめん…』
『…ロキって…ぃま…かの…ぃるの…』
『え?なに?ごめんよく聞こえなかった』
『だから…ロキって今彼女いるの…?』
『彼女?いやいないけど。この前別れたからさ』
『ほんと!?』
『あ、うん…』
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
なんだよ急に、いないって言ってなかったっけ?
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
『どうしたの急に』
『あ、ごめんね。ちょっと気になって…』
『別にいいけど、言ってなかったっけ?』
『再確認っていうか…』
『変なのー』
『あー!笑ったなー!』
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
その後はいつも通りゲームのことについて話し通話を切った。
mm…変、だよな。
椅子に座ったまま天井を見上げた。
―――― にしてもこのPCの通話ツール、音質が悪すぎる。
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