第21話:不本意な待ち合わせ



===ロキ配信===


「こんばんわー、みんな今日もおつかれです」



―――チャット欄 ―――

『こんばんわ』

『来たよー』

『おつ』

『間に合ったー』

『今日は何するん?』

『雑談希望』

―――チャット欄 ―――


「そうだなぁ、今日は久々にゲームしましょうか。何がいいかな?」


―――チャット欄 ―――

『おー!』

『スマ○ラ一択』

『VA○ORANTやってみようよ』

『AP○X』

『ポケ○ン』

―――チャット欄 ―――


「ふむふむ、最近スマ○ラ多かったから…久々にポケ○ンでもやりますか!いろいろ育ててたんで結構自信ありますよー」


―――チャット欄 ―――

『ロキ弱くなかったっけ』

『おれ三タテしたことある』

『なんかいっつもカイ○ュー入ってるイメージ』

『勝っちゃったらごめんな』

―――チャット欄 ―――


「めっちゃ煽ってくるねー。マイナーポケ○ンでいくから大丈夫。負けても文句なしっすよ。じゃあパスワード貼るから来てね」


―――チャット欄 ―――

『パーティ組むわ』

『おけ』

『ロキ何回負けるんだろ』

―――チャット欄 ―――



~~~~~~

「おいおいおい!ガッサはやめろって」

「ちょ、何!?なんで状態異常かからないの!?」

「イッカ○ズミに対してでゴ○メはやめろよ…」

「は?うずしお?アンコール?面倒だってまじで!」


―――チャット欄 ―――

『ロキ可哀想』

『残当』

『ロキのリザー○ン何か仕事した?』

『みがわり対策はしないと』

『持ち物オボ○の実ばっかじゃねーかよ』

『なんか草』

―――チャット欄 ―――


「あああああああ、はい。やめます。メンタルがもちません。もうポケ○ンはやりません。はい、今日はありがとうございました」


―――チャット欄 ―――

『泣くなて』

『すまんな』

『おつ』

『雑魚すぎ』

『勉強不足すぎ』

―――チャット欄 ―――


============


はあ…疲れた。

おとなしくスマ○ラにすればよかった。


…編集するか。


ピコンッ

SNSのメッセージ音か、mmみりかな?



―――― SNSメッセージ ――――

『配信おつかれさま、ロキ』

―――― SNSメッセージ ――――



(げ、見てたのかよ…)



―――― SNSメッセージ ――――

『見てたんだ…』

『うん(笑顔)』

『最悪だあ(泣)』

『結構ボロボロだったね~』

『たまたまだよ!』

『そういうことにしとこうかー』

『ほんとだって!あれ、そういえば何か用あったの?』

『いやただ、コラボ相手だし少しは親睦を深めた方がいいと思ってさ』

『それも必要かもね』

―――― SNSメッセージ ――――



(親睦…まあたまにはこういう機会を設けてもいいかな)



―――― SNSメッセージ ――――

『まあ、たまにはいいかもね』

『でしょ?私実況者の友達いないからさあ、なんか話し相手ほしかったんだよね』

『おれもいないから助かるかも』

『ならよかった!これからもたまに打合せ以外のことも話していいかな?』

『大丈夫だよ、でも今日みたいな配信は見なくていいから…』

『いやいや、それもばっちし見ます(笑顔)』

『うわあ、まあいっか。じゃあまた今度ね』

『じゃあね、ありがとー』

―――― SNSメッセージ ――――



打合せ以外の話しか…まあ仲良くなるに超したことはないよな。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦


ん?なんだ?

朝講義の前の待ち合わせ場所に珍しく雪弥ゆきやと瑛人えいとが先に着いていた。


なにかヒソヒソと話し込んでいる。


「おーい、二人とも早いなあ。何かあった?」

後ろから声をかける。


「あ、きょ嬌太郎きょうたろうくん。おはよ」


「え…あ!嬌太郎いたの?」

二人ともビクっと肩を浮かせゆっくりと振り向いた。


「そりゃ居るでしょ。待ち合わせてるんだから」


「そうだよねー、うんうん」


2人とも様子がおかしいな。


「なあ嬌太郎」


「なに?」


「あ、あのさー、今日三人で街行かねーか?」


ほう、イケメンもこんな不細工な笑顔を作れるもんなんだな。


「三人で居るのは嫌なんじゃなかったのか?」


「あ、あれはほら、口が滑ったというかなんというか…」


「まあいいや。飲みに行くの?明日休みだからいいけどさ」


「うんうん、僕も行きたかったんだよね」


そういえばまだ雪弥とは飲んだことが無かったな。


「じ、じゃあさ、今日の19時に ”三桑園” 前な!」


え、三桑園…って。


「なんで三桑園なんだよ。駅から遠いっていうか飲みに行くようなところじゃねえよ」


「そう思うだろ?でも近くめちゃくちゃコスパのいい飲み屋があるってイン○タで話題なんだよ。雪弥が飲むなら絶対そこがいいって言うからさー。せっかく雪弥との初めての飲みだからよ、美味しい店に行きたいじゃん?…な、雪弥?」


「……え?あ、うんうん!行ってみたいんだよね」


なーんか怪しいなあ。


「まあ雪弥がそこまで言うならいいけど。飲みに行くだけだからな。三桑園には行かねえよ。」


「おう!じゃあ今日はおれと雪弥は早めに終わるから先に行ってるな!」


「え、まあ…うん。わかったよ」

………三桑園か。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢


一方、莉未りみのアパートでは。


「ねえねえ莉未ねぇ!」


「どうしたの?瑠美るみ。てか学校は?」

午後の講義に行く為着替えながら話しを聞く。


「今週は休みなんだよ!だから遊びに来てるんじゃん」

瑠美は時間があればいつも莉未のアパートに来ている。


「本当に大丈夫なの??」


「大丈夫だって!そんなことよりさ、ウチ行きたい居酒屋あるんだよね!」


「居酒屋~?なんでまた居酒屋なの??」


「イン○タで話題の店なんだって!」


「なんていう店?」

着替えが終わり化粧を始める。


「え!?あー、えーっとね…行ってからのお楽しみ?てきな?」


元よりそんな店など存在していないので瑠美は相当焦ったが、


「ふーん、じゃあ楽しみにしておくね」


莉未はチョロかった。


「やったー!じゃあウチちょっと街に用あるから現地集合でもいい?」


「え?そうなの?まあいいけど…。どこで待ち合わせる?」


「三桑園前で!」


「え…どうして、どうして三桑園なの?」

化粧中の手が止まった。


「その近くにあるんだよ!ウチ絶対行きたいんだよね。あとしばらくこっちに来れないかもだしさ!」


「三桑園は嫌かな…」

莉未は寂しげに視線を落とす。


「一生のお願い!だったらウチ一人で行ってもいいの??」


「それはだめ!危ないよ…。分かった、でも三桑園には入らないからね」


「ありがと!莉未ねぇ大好き!」


「はいはい、”一生” のお願いだもんね」


莉未もまた今夜三桑園前に行くこととなった。



♦♢♦♢♦♢♦♢♦


三日前、嬌太郎が帰った後のスター○ックスにて。


「じゃあ作戦決行日は金曜日でいいな?」


「うん!」


「僕たちはいいんだけど瑠美さんは大丈夫?…えっと高校生だよね?」


「え!?すごい、雪弥くん。ちゃんと見てくれてるんだ…」

瑠美は両手で顔を覆った。


「いや、あの、さっき嬌太郎くんがこっそり教えてくれたから…」


「…ちッ…嬌太郎ッ!」


「まあまあ瑠美ちゃん。とりあえず金曜日にやるとして、大事なのはその場所だよな。おれデートの内容とかちゃんと聞いたことないんだよ」


「これに関しては僕は何も役立てないなあ…」


「あ、ウチ知ってるかも!!」


「え、どこ?」


「三桑園!」


「三桑園??なんでまたそんなとこに」


「一昨日さ、化粧品借りて化粧してたんだけどね。引き出しを引いた時、莉未ねぇと嬌太郎が写った写真があったんだよ!」


「おー!それってかなり有力な情報じゃねえか!」

二人は立上りハッピーエンドを迎えたかのようなほどに喜んだ。


「でもさ…なんで莉未さんはその写真を引き出しに入れてるのかな…」

雪弥がポツリとつぶやいた。


「だから…莉未ねぇはまだ嬌太郎のことを…」


「好きなのかもしれねえな…」


「…ならこの作戦が上手くいけば復縁するかもしれない、すごいことになってきたね」


三人は心の底から上手くいくことを祈った。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦


そして金曜日。


三人は各自二人を現地に誘導するために動いた。



18時半過ぎ

嬌太郎は最寄駅から三桑園まで歩いていた。


三桑園までは駅からニ十分程度…、莉未と二人で何度も歩いたこの道を今おれは一人で歩いている。

長い、こんなにこの道は長かったのだろうか。


二人で歩いていたから短く感じたのだろうか。


……もう考えるのはやめようって決めたじゃないか。

くそ…。


見えてきた、あそこが三桑園への入口。


分かりにくいが人影が幽かに見える。

もうあいつら来てたのか、こういう時は早いのな。



ん?…いやでも一人だけか?瑛人のやつまた遅刻かよ。


おれは目を疑った。



ゆっくりと近づきそこに見えてきたのは雪弥でもなく瑛人でもない……莉未だった。




「…莉未、どうして」


「え…嬌太郎…?」




―――― 18時50分。二人は三桑園前で目を合わせた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る