第18話:元カノと元カレ
「雪弥ゆきやくん、付き合ってほしいんだけどいい?」
「え、はい。莉未りみさんが良ければ…」
―――― 「ぉ……い、……嬌た……お…ぃ」
ん……
「おい!!嬌太郎きょうたろう!!」
「はい!!え!?!なに!?」
バンッと机を叩きつける音と怒号で目を覚ました。
「お前大丈夫かー?いつまで寝てんだよ」
周りを見るとすでに講義が終わり誰一人残っていなかった。
「一緒に飯食うって約束してたろ?」
どうやらなかなか来ないので、しびれを切らし迎えにきてくれたらしい。
「…わりぃ」
「はあぁ、まあいいけどよ。嬌太郎がこんなに寝過ごすなんて珍しいな。気絶でもしたのかと思ったわ」
気絶……はっ、そうだ。おれは雪弥と莉未の会話を聞いてそのあと…。
「なあほんとに大丈夫か?帰って休むか?」
「いや大丈夫だよ。…そういえば雪弥見かけた?」
「雪弥?あー、いたな。おれ漫画読むのに忙しかったから話しかけなかったけど」
「一人で歩いてた?」
「んー、そうだ!隣に莉未ちゃんが居たよ。なんか話し込んでたみたいだったなー」
「そっかあ」
「…なにお前…もしかして妬いてるのか?」
「ちげーよ。ただ気になったんだよ」
「気にしてるってことはさ、はあ……まあいいか」
「なんだよ」
「なんでもねーよ」
妬いてない……に決まっている。
~~~~~~
午後の講義が終わった所で雪弥からLI○Eが届いた。
----LI○E----
『講義おつかれさま。申し訳ないんだけど、サークル行くの明日でもいいかな?先延ばしにしてばっかりでホントごめん!』
----LI○E----
ああ、今日この後雪弥は莉未と出かけるんだもんな。
----LI○E----
『おつかれ。別にいつでもいいって!気にしなくていいよ(グッド)』
『ありがとう(お辞儀)』
----LI○E----
……すっごくモヤモヤするなあ。帰って酒でも飲みながら配信するか。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
===ロキ配信===
「こんばんわ、ロキです。みんなおつかれ」
生ビールの気分…だがビールを飲んだおれは、今日は特に正気を保っていられそうにないので梅酒を選んだ。
―――チャット欄 ―――
『こん』
『ロキだ』
『おつかれさん』
『来てやった』
―――チャット欄 ―――
「えーっとですね。今日は雑談とちょっとした告知をしていこうかと思います」
―――チャット欄 ―――
『なになに?』
『ついに顔出しか』
『コラボ』
『改名かな』
―――チャット欄 ―――
「顔出しはしないから。そそ、コラボですね」
―――チャット欄 ―――
『またmmと?』
『mmとのやつおもろかった』
『違う人とでもいいんじゃね』
『弟○とやって』
―――チャット欄 ―――
「さすがに分かるかー。またmmさんとコラボさせていただきます」
―――チャット欄 ―――
『もうカップルやん』
『仲良いな』
『なにやんの?』
『イン○スター』
―――チャット欄 ―――
「仲はいいけど付き合ってないから、mmさんに絶対そういうこと言わないでね??あとイン○スターは二人じゃできないよ」
―――チャット欄 ―――
『まあmmも彼氏いるかもしれんしな』
『mmって21歳だっけ?絶対彼氏いるっしょ』
『ロキ可哀想』
―――チャット欄 ―――
「いやいや、彼氏さんが居ても全然大丈夫だから。むしろおれなんかとコラボしてていいのかなってくらいだよね」
mmだって彼氏が居てもおかしくないよな…。
~~~~~~
1時間半程度雑談したところで配信を止めた。
莉未は雪弥とデートか、mmだって彼氏が居てもおかしくないよなあ。配信をしたら少しはこのモヤモヤが晴れるのではないだろうかと思っていたが、孤独感が更に増した。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
翌朝
講義前に売店で瑛人と雪弥が来るのを待つ。
瑛人はいいが雪弥と顔を合わせるのがきつい…。
昨日の夜何があったんだ。
…くっそ、おれは何考えてるんだ。
莉未が誰と付き合おうと莉未の勝手だろう。
「おはよ、嬌太郎くん。少し待った?」
最初に来たのは雪弥だった。
「え、ああーおはよ。別に待ってないよ」
「そっか、それならよかった」
気になる、気になる、気になる…。
「あ、あのさ。昨日の夜は何してたの?」
「え、昨日の夜?普通に家に居たよ」
…家、だと?
「でも、ほら用事があるって言ってたじゃん?」
「あー、そうだったね。でも家で済む用事だったから」
家で済む!?!?それって……。真っ黒じゃねえかよ。
「どうかした?昨日はごめんね。今日は絶対行くから!」
「え、あー、うん」
少し吐き気がする。
そこでようやく瑛人が来たのか、雪弥がおれの後方に元気よく手を振っていたから振返った。
「おい瑛人おせぇy…」
そこに居たのは瑛人ではなく莉未だった。
莉未はおれのことを軽くスルーし、雪弥のもとへ行った。
「雪弥くん、昨日はありがとね。ほんと楽しかった!また今度付き合ってくれる?」
「莉未さんが良ければ僕はいつでも大丈夫だよ!」
「ありがと!」
莉未は教室の方向へ向かう前におれを横目に、ふんっと鼻を鳴らし歩いて行った。
またよろしくってなんだよ、絶対付き合ってるじゃねぇか。
ちょっと雪弥に探りを入れてみるか。
「莉未と仲いいんだね」
「そうだね、研究室も一緒だからね。最近は特に仲良くしてもらってるかな」
雪弥は照れくさそうに下を向いた。
「そういえば嬌太郎くんは莉未さんの元カレって聞いたけどほんと?」
え、知ってるのかよ。
「そうだよ。でも何も気にしなくていいから」
雪弥に気を遣われるのは不本意だ。
「え?別にそんな風に思ってないけど…」
なんだ、もうおれのことは置去りだったのか。それはそれで寂しいな。
「おーい!雪弥!嬌太郎!」
「遅い」
「ごめんて。ちょっとおばあさんを助けてたら遅れちゃってさ」
「え?そうなの?瑛人くんは優しいんだね」
「だろ?だから許してな」
「雪弥、これ冗談だから付き合わなくていいよ」
「おいおいおい!ひでぇよ、嬌太郎~」
雪弥との気まずさを残したまま教室へ向かった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
―――― SNSメッセージ ――――
『mmお疲れ様』
『ロキおつかれ~』
『モン○ンどこまで進んだ?』
『えっと、ドス○ャグラスまで進んだよ!』
『うんうん、じゃあその辺で一回撮ろうか』
『そうだね、今夜はどう?』
『うんいいよ!20時くらいでいい?』
『おっけ、じゃあまたあとでね』
―――― SNSメッセージ ――――
メインクエストの初期ボスまで進んだので二人で討伐する動画を撮ることになった。
~~~~~~
講義が終わり帰ろうとした時、少し前に莉未が立っていた。
雪弥でも待っているのか?残念ながらこの講義は雪弥は履修してないぞ。
「雪弥はこの講義受けてないぞ」
「え?」
スマホを見ていた莉未は驚く。
「待ってたんだろ?」
「なに?私別に雪弥くんを待ってるわけじゃないんだけど」
「へー、そっか。まあ仲良くやりなよ」
「ほんと何言ってるの?」
「別にぃ。じゃあね」
眉間にしわを寄せている莉未を他所に帰路に着いた。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
その日の20時
通話する時間なのだがこっちからかけるのは、なにか下心を持っているのではないかと思われてしまうのも嫌なので、PCの前でかかってくるのをジっと待っていた。
きた、通話音が鳴った
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
『おつかれ~』
『mmもおつかれさま』
『えーっと、ドス○ャグラスからでいいんだよね?』
『あ、うん。早速やる?』
『そだね、頑張るよ』
ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
(なんだ?mm、元気なさそうだけど…。てか意外とmm上手いじゃん)
~~~~~~
動画は無事撮り終えた。
♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー
『mm何かあったの?なんか元気ないけど』
『え?そうだった?』
『うん、なんとなく』
『…ちょっと大学で友達になんか含みのあること言われてモヤモヤしてたんだよね。ごめんね』
『そうなんだあ、どんなこと言われたの?』
『うーん、ちょっと伝えるの難しいかも』
『なんか立ち入っちゃってごめん』
『ううん、全然大丈夫だよ』
『そういえばおれも最近友達関係で一方的にぎくしゃくしてることあるなあ』
『なになに?』
『友達がさ……おれの知ってる人と付き合い始めてなんか気まずいっていうか』
『え?それのどこに気まずさがあるの?』
『……えーっと。おれの元カノなんだよね、友達にできた彼女が』
『あらら…それは気まずいね。ロキがそこまで話してくれたから言っちゃおうかな。今日私に話しかけてきた友達って実は元カレなんだ』
『そうなの?なんかお互い元カノと元カレに右往左往されてるね』
『ホント困るよ』
―――― 元カノ・元カレの存在なんて…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます