第15話:イケボが憎い




Sh○3のやり込み系動画はいつ見てもすごい、とてもじゃないけどおれには真似できない。

あと初見でのゲーム配信がその作品に対して失礼だという信条もかっこいいよなあ。


最近は参考のためいろいろな実況者さんの動画を見漁っている。


えーっと、次は……ん?廃リバー、誰だこれ。


目についたのは登録者数50万人のゲーム実況者。


おれと同じくらいの登録者数だなあ。

まあちょっと見てみるか。


再生リストは、ダーク○ウルとディア○ロ、バイ○ハザードに龍が○とく…か。

おれとはだいぶ異なるジャンルだな。


試しに龍が○とくでも見てみるか…あ、ジャッ○アイズあるじゃん、これちょっと気になってたんだよなあ。見てみよっと。


~~~~~~~


ふむ……


あまりアクション要素の多いゲームじゃないけど操作に無駄がなく見ていてストレスの溜まらない感じがあるなあ。

セリフの多いゲームだがそこもいい感じに吹き替えできている、


しかもイケボ。


でもなんだろう…感情移入しずらいなあ。


喜怒哀楽の表現が固いのか?


うーん……


それでもおれと同じ登録者数。

比べるのはあまり良くないがどうも気になってしまう。

ちょっとだけSNS見てみるか。


えーっと【廃リバー】っと


サムネは…そのまま廃リバーって書いてるだけか。

プロフィールは…【ゲームやってます】…だけ…?

宣伝要素が皆無だな。


なんでこんなやつが人気あるんだ?


廃リバーのコメント(=ツ○ートorポ○ト)を見てみると、女性視聴者からの返信で溢れていた。


うっわ、そういうことか。


なるほどな、多少トークが薄くてもあの声の虜にされているファンが多いのか。



おれはイケボに生まれてきたかったとひどく悔やんだ。


…まあ他所は他所。うちはうち、コツコツ頑張ろう。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦



「よっ!嬌太郎!」


「うす」


「なんだ元気ないなぁ。そんなんじゃ一生彼女できねーぞ?」


「そんな心配いらないよ」


焦ってはいないが、このままでは本当に彼女なんて作れないことは悟っていた。


「そういえばさ、そろそろ研究室の合同研修あるじゃん?組合せ決まったらしいよ?」


大学3年のおれ達は研究室に配属されている。

ちなみにおれと瑛人は同じ研究室だ。


「へー、おれらはどこと一緒なん?」


「莉未ちゃんのとこと一緒!すごくね?」


ゲッ!なんでだだよ…


「…まじで?」


「大まじ、よかったじゃん!」


「全然、全く、よくねーから!」


急なことだったが明後日顔合わせと研究内容の確認をするとのことだ。


気が重くなる。


今晩は配信かなー。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦



夜21時


机の右奥にハイボールを置き配信をスタートする。


===ロキ配信===


「こんばんわー、ロキです。みんなおつかれー」



―――チャット欄 ―――

『おいーっす』

『こんばんわ』

『今日は何飲むの?』

『なんかやろうや』

『雑談希望』

―――チャット欄 ―――



「今日はハイボールだよ。何やろうかなぁ、でも最近結構ゲームしてるから雑談かな?」



―――チャット欄 ―――

『お、いいね』

『ちゃんと拾ってね』

『最近の社会情勢について一言』

『ハマってるゲーム教えて』

―――チャット欄 ―――



「社会情勢?無理無理。ハマってるゲームかあ。あ、そういえばこの前実況者さんのジャッ○アイズ見てて面白そうだなーって思ったよ」



―――チャット欄 ―――

『誰?』

『キム○クのやつか』

『誰のやつ見たの?牛○?』

―――チャット欄 ―――



「えっと、【廃リバー】って人だね。初めて見たけどいい実況者さんだったよ」



―――チャット欄 ―――

『廃リバか』

『廃いいよね』

『あー、あのイケボか』

『最近よく見てるかも。あ、ロキごめんね』

―――チャット欄 ―――



「あれ、やっぱり有名なの?女子ウケしそうな感じはしたけど」



―――チャット欄 ―――

『視聴者の大半は女子じゃないかな』

『ゲームのジャンルはハードなの多いのにな草』

『おれの彼女も見てたわ』

『まあ人気出るなあ、とは思ってた』

―――チャット欄 ―――



(そんなに勢いのある人だったのか…)

「へぇ~なんかおれと真逆な感じがしたよ」



―――チャット欄 ―――

『ロキは特別イケボってわけじゃないしね』

『普通に面白いよ、ロキも』

―――チャット欄 ―――



「ありがとねー…」



===ロキ配信===


やっべ、なんか視聴者に慰められちゃったよ。


この配信を通じて廃リバーに対する明確な劣等感が生まれた。


そういえばこれからもmmとコラボ動画を出していく話しをしてたな。

彼女は本気でそう考えてくれてるのだろうか。



―――― SNSメッセージ ――――

『おつかれ、ちょっと動画のことで話しあるんだけどいい?』

―――― SNSメッセージ ――――



待つこと15分と少し



―――― SNSメッセージ ――――

『おつかれさま!どうしたの?』

―――― SNSメッセージ ――――



お、きたきた。



―――― SNSメッセージ ――――

『前にさ、今後も少しコラボしてくれるって話ししてくれたじゃん?それ覚えてくれてるかなって』『話したね。ロキがいいなら私もコラボしたいな!』

『まじで?』

『まじ!』

『嬉しいな、次はマイ○ラじゃない何かやろうか!』

『うーん、モン○ンとか??私ワールド好きなんだよねー』

『おれもワールド好き!そっちの方向で考えてみようか』

『そうだね!』

『お互いに案考えておいて今度意見出しあって決めていこうか』

『うん!じゃあいろいろ考えておくね!』

―――― SNSメッセージ ――――



やった!これからもコラボしてもらえるぞ!モン○ンかぁ、どうしようかなー。


嬌太郎はこれからもまたmmと交流できることに胸を躍らせた。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦



研究室の合同研修会当日。

うちの研究室は男が5人という言うまでもなくむさ苦しい班ではあるが、瑛人がいるのでちょいちょい女子が出入している。


合同研修は相手方の研究室で行う事になっており、瑛人はその女子達にキラキラとした笑顔で、またね、と手を振った。


莉未の居る研究室か、なんでこんなことに…。

誰が好き好んでで元カノと合同研修なんて…。


イケメン瑛人に続いて歩くパっとしないおれ達男子4人はその研究室に着いた。


うちの研究室とは違い室内は綺麗に保たれている。


中へ入ったのはいいが誰もいなく、おれ達がキョロキョロとしているところにすぐ生徒達と教授が入って来た。


1,2,3、……あっちもおれ達と同じ5人……なんだが。


「…嬌太郎、なんであっちは女子4人なんだ?…」

隣りに居た瑛人がこそこそと話しかけてきた。


確かに、莉未を含めて向こうは女子が4人…で男子が1人。


ハーレムじゃないか。


「じゃあ自己紹介していこうか」


教授は向かい合わせに立たせおれ達を指さした。


「あ、おれからですか。えーっと伏見嬌太郎です。企業人キャリア開発関連について研究しています」


次は瑛人だ。


「君島瑛人です!彼女はいません!よろしくお願いします!」


こいつ…合コンじゃないんだぞ。


続きの3人も終わり、莉未達が自己紹介を続ける。


「星莉未です。グローバル市場で活動している企業の事業戦略に関する研究をしています」


前にお互いに研究内容について話し合ったこともあったな。進捗状況はどのくらいなのだろうか…。


莉未に続く3人の女子の自己紹介が終わり、最後のハーレム堪能野郎の番に回って来た。


「……僕は【灰川雪弥】です…。研究対象は…」


「え?」


「え?…あの…どうかしました?」




―――― だってこの声…




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