第14話:カップルじゃないから




―――― 莉未は大丈夫なのか?



大学を飛び出し400メートルほど離れた駅まで立ち止まることなく足を回した。

ホームに着くとすぐ電車が着き無理矢理乗り込んだ。


~~~~~~~


4つ目の駅で降り、莉未のアパートへ向かう。

ここへ来るのは以前瑠美を送って以来だ。

あの角を曲がった通りに莉未のアパートがある。

小走りでそこへ向かう。


はあ、はあ、えーっと201号室だったな。

息を切らしながら階段を登り、部屋の前まで来た。


って…おれ何してるんだ?


彼氏でもないのに。

それに莉未にもう彼氏ができていて、この中で看病でもしてもらっていたらどうする。


だめだ、このドアを開けることはおれにはできない。



―――― 「え…嬌太郎?」



ビクっと肩を浮かせ後ろを振り向く。


「何してるの?こんなところで」


「あ、え…だって、ほら…。瑠美から莉未がピンチだから行ってって言われて…それで、だよ」


「え?瑠美が?ピンチって…最近頭痛がひどいんだよねって話しただけなんだけど…」


「へ?それだけ?じゃあどうして今日休んだの?」


「休むも何も私今日全休だから」


は?


「でもあの講義いつもうけてたじゃんか」


「…はあ、前回出席してた?前回のテストで及第点取った人は次回不参加でいいです、って講師の人が言ってたじゃん」


そうだっけ、おれ…寝てたんだな。


「そ、そうなんだ。でも元気そうでよかったよ。じゃあおれ帰るね」


心配して損した。

瑠美のやつ…今度あったらただじゃおかないからな。


「コーヒーならあるけど…」


「え?何?」


「…いや…なんでもない」


「そっか、じゃあまた。お大事に」


その後莉未は特におれに声をかけることはなかった。


~~~~~~~


帰りの電車に乗っているとLI○Eの通知音が鳴った。


ん…あ!瑠美じゃねえか!


―――― LI○E ――――

『おーい、莉未ねぇどうだった?』

『いや少し頭痛があるってだけだったけど』

『だよねー』

『だよね??』

『だって、ウチが莉未ねぇのところに嬌太郎を行かせたかっただけだもん』

『は??嘘だったのか?』

『嘘じゃないよ、頭痛があるってのは聞いたからさ』

『あのさ、もしかしてわざと行くように仕向けたのか?』

『正解!嬌太郎のくせに冴えてるじゃん!』


(呆れて言葉も出ない)


『そっか、もう次は行かないからね』

『でも本当にピンチの時は行ってあげてね。嬌太郎のこと待ってるかもしれないよ?』

『へいへい』


(なんだよ瑠美のやつ…)

―――― LI○E ―――― ――――



あ、講義どうしよう。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦



今日は遂にコラボ実況動画の投稿日。

二人で何度も入念にチェックもした。投稿する動画は2本、いずれもマイ○ラ動画だ。

お互いに実況しているゲームなので最初のコラボゲームの題材としては無難であろう。と、投稿前に再度確認の打合せをすることになっている。


いつも待っているばかりだから今回はこっちからかけよう。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『もしもし?mm。今大丈夫?』

『うん』


(なんだか元気がないか?)


『どうしたの?具合悪い?』

『少しだけ頭痛がね、でもだいぶ良くなったよ』

『ならよかった。薬飲んだの?』

『ううん、お見舞いに来てくれた人がいたから少し元気になった』

『優しい人が居てよかったね』


(彼氏だろうな)


『うーん…そうだね、ほんとは優しい人』


(本当は?…まあいいか)


『どう?打合せできそう?』

『大丈夫だよ』

『わかった、えーっとこの動画とこの動画はどっちを先に投稿するべきかな?』

『うーん、こっちじゃないかな?視聴者さんが入りやすい方が最初かなって、~』

『ふむふむ…~』

『…あ、でも~』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


1時間ほど話し合い投稿する順番と時間帯を決め、翌日投稿した。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦



翌日


===ロキ配信===


「こんばんわー、ロキです。おつかれー」

(コラボ実況動画投稿後の初配信だ)



―――チャット欄 ―――

『おつ』

『きたよー』

『おつかれ~』

『動画見たよ』

―――チャット欄 ―――



「あ、動画見てくれた人いるんだ。mmさんとマイ○ラでコラボさせてもらいましたー」



―――チャット欄 ―――

『みたみた』

『なんか初々しい感じあったな』

『面白かった』

『mm下手すぎてワロタ』

『ロキはそこそこできてたな

―――チャット欄 ―――



(あー、この反応はなんとなく予想できたな)

「見てくれてありがとうね。mmさんとコラボできてすげー楽しかったよ」



―――チャット欄 ―――

『楽しそうだったよー』

『てか呼び捨てだったよな?』

『”できてる”のかと思ったわ』

『あー、うちもそう思った』

『これを機に、ってやつか?草』

―――チャット欄 ―――



「いやいやいやいや、それはないから。通話だって最小限しかしてないからね」



―――チャット欄 ―――

『ふ~ん』

『なんか怪しくね?』

『最小限で何を話しているんでしょうね草』

―――チャット欄 ―――



(うーわ、最悪だあ。どうにか払拭しないと)

「ほんとに打合せのことだけだよ、プライベートのことも話したことないなあ」



―――チャット欄 ―――

『…ジー』

『まあ許してやろう』

『進展あったら報告よろしく』

『付き合ってほしくないなあ』

―――チャット欄 ―――


「何もないから!まじで!とりあえずさ、スマ○ラでもやろうよ!」


===ロキ配信===


その日は遅くまで視聴者とスマ○ラに明け暮れた。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢


一方、莉未(mm)


(あ、さっきロキ配信始めてたんだ。ってことはコラボ動画の話題も出たのかな?)


同日莉未は嬌太郎が配信が始めた1時間後から配信をする予定でいた。


(私もそろそろ準備しないと)


帰宅後レポートと家事を済ませた莉未は配信の準備にとりかかり予定時刻に配信をスタートした。



===mm配信===


「みんなこんばんわー、今日もお疲れ様」



―――チャット欄 ―――

『みりー!』

『mm待ってた』

『mmちゃんもお疲れ様です!』

『今日もいい声』

―――チャット欄 ―――



「待たせてごめんね、なかなかタイミングが無くてさ」



―――チャット欄 ―――

『動画撮ってたの?』

『あのマイ○ラコラボ?』

『ロキってやつだっけ』

『一応見たよー』

―――チャット欄 ―――



「結構見てくれた人多くて嬉しいな!」



―――チャット欄 ―――

『でもさー』

―――チャット欄 ―――



(でも??)



―――チャット欄 ―――

『なんかカップルみたいになってたよ?』

『そうそう、かなり親し気だった』

『おれ虚しくなったわ』

『途中で見るの止めたくなった、まあ見たけどね』

―――チャット欄 ―――



(え?え?どうして??カップル??)



―――チャット欄 ―――

『でもロキはさっき配信で全否定してたよ』

『あー、そうだったね』

『まあ確かにそんなにすぐできるのも変だしね』

―――チャット欄 ―――



(へぇロキ、そんな風に言ってたんだ)


「そうだよ!ただ仕事上の付き合いって感じ! 」



===mm配信===


(まあ、どう思われてようと関係ないよね。うん)



♦♦♦♦♦♦♦♦♦



「嬌太郎、なんでコーヒー二つも持ってんの?」

両手に缶コーヒーを手に持つおれに瑛人が肩を組んできた。


「おれもそれを知りたい」


瑛人が来る少し前、ベンチに腰を掛け待ち合わせをしているところに莉未が現れ、無言で缶コーヒーを 渡しに来たんだが、おれがすでに同じ物を持っているのを見て気まずそうにしながらも、ん!とおれの胸にコーヒーを押しつけ、受け取るのを確認し次第どこかへ行った。


「それ1個くれよ」


「いや、自分で買えよ」


「え~、ケチだなぁ」




―――― 買ったコーヒーはバッグに入れ、もらったコーヒーはそのまま手に持ち教室へ向かった





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