親子の絆

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。

 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。

 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。

 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。

 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。

 服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。

 南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。

 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。

 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。


 愛宕寛治・・・悦司の父。警視庁警部。

 物部一朗太・・・喫茶店アテロゴマスター。満百合の父。

 辰巳一郎・・・アテロゴのウエイター。

 大文字学・・・おさむの父。


 ==============================

 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 午前10時。喫茶店アテロゴ。

 物部のスマホが鳴動した。満百合だ。物部は、習慣でスピーカーをオンにした。

「お父さん、大変なの。」「何が大変なんだ?今、どこだ。」

「モールの外の川。」

「マスター。俺、ちょっと行って来ますよ。」と辰巳が言った。

 物部は、「ああ。頼む。満百合。今、辰巳のお兄ちゃんが行くからな。」「分かった。」

 午前10時10分。モールの外の川(溝)。

 辰巳が、息せききって自転車で走ってきた。

 おさむ、悦司、健太郎が、溝の奥を覗き込んでいる。

「どうしたの?」「満百合ちゃんが、誰かが助けを呼んでいる、って。」と、おさむが言った。

 そこへ、モール入り口にある交番から、駐在の巡査と愛宕警部がやって来た。

「悦司。どうした?」「パパ。この奥から悲鳴が聞こえたって言うんだけど、暗くて何も見えない。」

 それを聞いた巡査は、「懐中電灯をいくつか持ってきます。」と、言って交番に戻って行った。

「皆でセミ採りに行こうとしていたら、悲鳴が聞こえた、って言うんです。入らないと分からないし、暗いから入らない方がいい、って言ってたんです。」と健太郎が代表して言った。

「賢明な判断だな、健太郎君。大人でも屈めば何とか入れそうだな。ここ、元は下水道からの水が出る所だったんだ。でも、付け替え工事してね。もう泥も乾燥してない。」

 巡査が戻ってきて、愛宕、巡査、辰巳が入って行った。

 30分後。3人は戻って来た。

「30メートルほど先の下水道管に、この子がいたよ。満百合ちゃん。」

 愛宕が抱いていたのは、子猫だった。

 みゃーみゃーと鳴いている。

 おさむが叫んだ。「お迎えが来たよ!」

 少し離れた所に、猫が佇んでいる。

 愛宕は、すぐ側までではなく、少し離れた場所に、抱いていた子猫を離した。

 愛宕がその場を離れると、猫は、子猫に近づいていき、体中を舐めてから、口に咥えて、走って行った。

「パパ。やっぱり、親子だったんだね。」「ああ。結果的に、いいことをしたな、ミラクル9。」

 愛宕親子は笑った。

 満百合はスマホを取り出した。

 午後7時。久保田家。

 健太郎と、健太郎の母あつこ、健太郎の父誠は執事の給仕で夕食を採っていた。

「よくやったね、健太郎。区の下水道課に言って、確認した上で閉鎖することにさせたわ。編み目の柵だと破られるからね、動物か人間かに。」

「訳分からないまま入って行くのは、冒険じゃないからな。相変わらず、お前の判断は正しい。」と誠は言った。

「とうちゃんと、かあちゃんの子だから、頭いいんだ、俺。」

「自分で言うんじゃない!」と、あつこは健太郎を小突いた。

 午後7時。伝子のマンション。

「父さん、洗濯物、全部収納したよ。」「ああ、ご苦労さん。そういうことです、副部長。」と言って、学は電話を切った。

「今、母さんにもメールしておいた。オムライスでも作ろうか?ご褒美に。」

「ありがとう、父さん。あの子猫、里親捜ししなくて済んで良かったよね。」

「ああ。そうだな。やっぱり猫って、子供を咥えて運ぶんだ。聞いたことはあったけど。」

「あれが、愛情なんだよね、親子の。」

「ああ。猫はオムライス作れないけどな。」

 ここにも、親子の愛情、いや、絆があった。

 ―完―


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