先走り
====== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
物部一朗太・・・満百合の父。モールの喫茶店アテロゴのマスター。
物部栞・・・満百合の母。
大文字(高遠)学・・・おさむの父。
久保田あつこ・・・警視庁警視正。健太郎の母。元EITO副隊長。
福本英二・・・めぐみの父。アマチュア劇団主宰。普段は、非常勤建築士として、建築事務所で働いている。
佐藤先生・・・町内鼓笛隊指導の小学校音楽教師。
鈴木栄太・・・小学校校長。
尾津優子・・・めぐみのクラスメート。
持田あかり・・・めぐみと優子のクラスメート。
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==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午後1時半。喫茶店アテロゴ。
「どうだった?」と、健太郎は、めぐみ、悦子、美玖に尋ねた。
「美玖ちゃんの誕生日ってことにして、私と悦子ちゃんで、お茶の準備を手伝って、悦子ちゃんが部屋中を探して見つけたの。」と、めぐみは健太郎に写真を見せた。
「何か、書きかけの紙切れが沢山あるね。メモみたいだ。」
健太郎は、めぐみに相談を受けた。めぐみのクラスメートの、持田あかりが、急に男の子みたいな髪型になり、男の子のような格好をしだしたと言う。同じクラスメートの尾津優子が、泣いているあかりを何度も見た、と言う。めぐみは、見かねてミラクル9で解決する、と約束をしてしまった。
健太郎は、男の子が急に訪ねると怪しまれるから、と自分やおさむ、悦司は行かず、女の子達に、あかりの部屋で手掛かりを探すように依頼した。
その成果が数枚の写真だった。
ふいに、手を伸ばして写真を見る人物がいた。めぐみの父、福本英二だった。
福本は、自分の設計した家の内見に見学者を案内した帰りだった。
「これ、健太郎君の言う通り、メモだ。戯曲か小説か?出来上がってものを見ないと分からないが、『お話』のネタのメモだ。小説家の高遠に復元して貰うのも一つの方法だが、あかりちゃんのお母さんがやった行為の原因だと推測は出来る。そうですよね、副部長。」
福本が、副部長と呼んだ、この店のマスターは、大学時代の部活の副部長だった。未だに後輩達は副部長と呼んでいる。
「詰まり。お母さんは、勘違いしたんだ。ビリビリに破いているし。あかりちゃんが『男の子になりたい』って思っている、とメモを読んで思い込んでしまった。そして、願いを叶えようとした。健太郎。今でも校長先生は鈴木先生か?」
「うん。来年辞めるらしいけど、まだ校長先生は鈴木先生だ。」
「よし。鈴木校長に、あかりちゃんのお母さんを会わせるんだ。で、事の成り行きをお前達で説明して、その上で、校長に説得して貰おう。」
物部は、そう言うと、どこかへ電話していた。
午後3時。鈴木邸。リビング。
鈴木校長と持田あかりの母が座っている。ミラクル9は全員立っている。
「1人なので、お茶も出せませんが。学校だと、何かと人の目がありますから。おおよその事は、この探偵団ミラクル9から聞きました。結論から申し上げると、お母さんの勘違いです。お先走りです。」
「はあ?」「お母さんは、あるとき、娘さんのメモを発見された、そのメモを読んだあなたは、悩んだ挙げ句、娘の願いを叶えようとした。それは、『男の子になること』だった。でもね、それは日記では無かったんです。日記でも空想を書くことはありますけれどね。福本君。」
めぐみは言った。「私の父は建築士です。でも、アマチュア劇団もしています。母とは演劇で知り合いました。父は、あかりちゃんのメモを見て、戯曲のアイディアのメモかも知れないと言いました。後で、おさむ君のお父さんにも見て貰いました。おさむ君のお父さんは小説家です。同じことを言っておられました。」
「そんな・・・。私は、余計なことをしたの?」
あかりの母の言葉に、鈴木校長は、「その通りです。まだ引き返せます。10数年前、LGBTの関連法案が国会を通りました。でも、曖昧で不完全な法案だった為に犯罪が多発しました。勝手に女子トイレを改造した地域もありました。国家議員達は不勉強でした。そして、遅すぎました。周回遅れです。お手本である筈のアメリカでは、一部の州で反LGBT法案が成立していました。それは、悪いお手本として犯罪が多発していました。政治思想活動に利用された犯罪もありました。最たるものが、若い孤独な女の子を洗脳して、『男の子になりたいんだ』と思い込まされて、性〇の改造までやらせれ、法外なオペ代を請求された、というものでした。ある女医が、ジャーナリストでも為し得なかった調査をし、告発しました。世界の各言語に翻訳された本の日本語版を刊行しようとした出版社は、強烈な妨害を受け、脅迫されました。その告発本が正しいからこそ、思い込ませてまでLGBTを利用した犯罪が真実であったからこそ、妨害や脅迫を受けたのです。志田総理の頃に出来た、出鱈目法案は、市橋総理なってから、正しい方向に導く為に超党派で議論され、修正法が閣議決定されました。関連法案も出来ました。元々は、『性のあり方に悩む一部の人達への差別忌避』の草の根運動だったのです。アメリカは、今でも〇人差別が根強いです。あまり、衆知されていませんが、アジア人差別もです。LGBTも差別のターゲットだったのです。少数派への差別はいけません。でも、その少数派を持ち上げて優遇することは、公平でも公正でもありません。〇〇差別のように、『逆差別』を産みます。今は、ジェンダーの考え方も対処も歪んだ方向が修正されています。お母さんが恐れたのは、あかりちゃんが『男の子になりたい』と願っているのに、聞き入れなかった母親のレッテルを貼り、虐待した親として、活動家の人に狙われ、お母さんも、あかりちゃんも追い詰められる、という考えだったのでしょう。学校という『学び舎』は、単に知識を詰め込む組織ではありません。人間と人間の出逢いの場でもあり、社会に出てからの自分の立ち位置を確認する経験を積む場でもあるのです。ある子は、部活で、ある子はクラス仲間で友情を育て、成長して行くのです。この子達は、部活ではありませんが、お互いを見つめ刺激しあって、それを実戦しています。あかりちゃんは、もう彼らの友達です。孤独じゃありません。あの子を守るのは、お母さんでもあり、友達でもあるのです。話が長くなりました。学校の責任者として、頭髪に見合うウィッグを提供させて頂きます。出てお出で。」
隣の部屋から、あかりが出てきた。あかりは、めぐみのスカートを履いている。
「あかりちゃん、似合う!」と千香乃が言った。
「あかりちゃん、似合う!」と満百合が言った。
悦子も千香乃も未玖もみどりも、めぐみも言った。
そして、みどりが言った。「校長先生。母は美容師で、ウィッグも扱ってます。」
「商売上手だね、山城君。じゃ、山城君のお母さんに頼もう。」
「校長先生。あかりちゃんの家はボヤが出て、服と髪の毛が燃えちゃったっていうのは、どうですか?」と、健太郎は言った。
「あ。今、それ言おうと思ったのに。」と、おさむが言い、鈴木家は笑いに包まれた。
―完―
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