最後の弟子

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。

 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。

 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。

 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。

 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。

 服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。

 南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。

 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。

 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。


 物部一朗太・・・満百合の父。モールの喫茶店アテロゴのマスター。

 物部栞・・・満百合の母。

 大文字(高遠)学・・・おさむの父。

 久保田あつこ・・・警視庁警視正。健太郎の母。元EITO副隊長。


 久保田誠・・・警視庁警部補。健太郎の父。

 久保田嘉三・・・警視庁管理官。健太郎の大叔父。

 蔵前・・・久保田家執事。


 渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。


 大場謙吉・・・元大工棟梁。今は、木工所経営。仲間と共に、定期的に『木工品フェア』を開催。木工品作りを来場した親子に指導している。


 ==============================

 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==



 午前11時。喫茶店アテロゴ。

「健太郎が誘拐された?落ち着け、満百合。泣いてちゃ分からない。」と、物部が言うと、スマホの向こうで満百合が泣いているのが聞こえる。

 見かねた栞が物部からスマホをひったくって言った。

「順番に行こうか。今日、木工品フェア、行ったのよね。悦子ちゃん、千香乃ちゃん、みどりちゃん、めぐみちゃん、未玖ちゃんが、ここに誘いに来たよね。開場には間に合ったのかな?」

 午前11時。浅草。木工品フェア会場。

 満百合が、栞の誘導で経緯を話している。

「うん。おさむ君達と併せて9人で行ったの。人が一杯だった。お父さん、お母さんと来てた子も多かったよ。会場広いから、みんな、別々に行動して、出口で待ち合わせたの。そしたら、健太郎君だけ来ないの。スマホに電話したけど、繋がらなかった。警備員のオジサンに聞いたら、知らないって言うの。おさむ君達とは、一緒にいなかったの。迷子センターありますかって警備員のオジサンに聞いたら、ない、って。捜索願い、要るの?」

「あつこ警視正に相談してみる。満百合。しばらくそこを動いちゃダメよ。」

 喫茶店アテロゴ。

 栞は、警視庁のあつこ警視正、つまり、健太郎の母に電話したが、仕事中なのか、繋がらない。

 そこで、自宅にいることが多い高遠に電話してみた。相手はすぐ出た。

「ああ、先輩。どうしたんすか?」

 伝子のマンション。

 高遠は、台所のコンロの火を止めた。

 事情を聞いた高遠は、すぐに「じゃ、渡さんに探して貰いますよ。」

 高遠や物部達はDDバッジという、所在地がすぐ分かるバッジを持っていたが、子供達のDDバッジはない。だが、追跡ガラケーなるモノが、靴の裏側に仕込んである。誘拐防止用だ。

 EITO用のPCを起動して、高遠は渡を呼び出した。

 事情を聞いた渡は、上野の住宅地の地番を言った。

「浅草に上野。すぐ近くですね。スマホの電源繋がらないのが気になりますが、地元の警邏に動いて貰いましょう。」

 EITO東京本部のエマージェンシーガールズの面々は、陸自の見学会に行って、留守だ。

 正午。久保田邸。

 執事の蔵前が、家の電話にでた。

 不審に思った蔵前は、録音機のボタンを押し、スピーカーをオンにした。

「久保田健太郎君は預かっている。明日の夕方返す。」短い通話だった。

 大叔父に当たる久保田管理官は叫んだ。「何だとぉお!」

 午後1時。伝子のマンション。

 おさむから、高遠のスマホに電話があった。「父さん。誘拐じゃなかったよ。」

「そりゃ良かった。じゃ、何だったんだ?」

「健太郎は、自分からついて行ったんだ。木工品フェアは、11人の高齢者出品者が共同開催していて、協賛は芦屋開発。他の出品者の人が、大場さんが健太郎と出て行くのを見たって言うんだ。じゃ、連絡取ってください、って頼んだら、すぐに大場木工所に繋がった。本人が出たよ。鋸の使い方、習っている内に、時間を忘れて取り組んでいる内に僕らと待ち合わせしていること、すっかり忘れていたらしい。酷いだろう?」「ああ、酷いな。待てよ。脅迫電話は?」

「大場さんの悪戯だよ。大場さんって人は、元大工の棟梁で、引退後、趣味で木工品作り出して、そこそこ注文が入るから会社組織にしたらしい。休憩が終ってから、改めて連絡する積りだったらしい。健太郎が、僕らのこと言わなかったのと、作業着貸して貰ったから、上着のスマホが繋がらなかったのが真相だね。もし、捜索願い出てるなら、取り下げて貰ってよ。」

「僕から話しておくけど、健太郎君には、警視正の『お仕置き』、覚悟するように言っておいて。」「了解。」

 午後4時。大場木工所。

 大場謙吉が、倒れたので、会社の人が救急車を呼んだ。

 午後5時。久保田邸。

 帰って来た健太郎に、あつこは平手打ちをした。そして、抱きしめた。

 久保田警部補がやって来て、あつこと健太郎に言った。

「大場さんは、大丈夫だそうだ。一時的に血圧が上がったらしい。今、点滴打っている。明日退院だ。健太郎に、『最後の弟子、よく頑張った』と伝えてくれってさ。」

「最後の弟子?」「木工品作ってみたい。って頼んだんだ。そしたら、切れない鋸、渡されて・・・よく見ると、刃こぼれや錆のある部分があった。だから、それ避けて鋸引いたら、切れた。よく気がついた、って褒めてくれたよ。」

「うん、でも、『お仕置き部屋』行きな。それと、おやつ10日間禁止。お小遣い1ヶ月禁止。分かったな。」「はーい。」

「ま、覚悟することだな、色んな人に迷惑かけたから。」と、久保田管理官は言った。

 ー完ー


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