分水嶺(ぶんすいれい)
====== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
物部一朗太・・・満百合の父。モールの喫茶店アテロゴのマスター。
辰巳一郎・・・物部が経営する、喫茶店アテロゴの従業員。
辰巳泰子・・・物部が経営する、喫茶店アテロゴの従業員。
久保田あつこ・・・警視庁警視正。健太郎の母。
藤井進・・・大文字伝子の区切り隣のマンションの住人藤井康子の孫。救急救命士をしている。
村山悦子・・・小学校教師。
瀬田えりこ・・・健太郎達の同級生。
道上由起夫・・・小学校教師。
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ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。
小学校の遠足。
「もう、ダメ。」「ダメなことなんかない。ゆっくり歩けばいいのよ。」村山は励ましている積もりだった。
「先生。そこの自販機で水、買いたい。」「ダメ。『買い食い』と同じよ。ドラ焼き売ってる、お店の前を通ったら、ドラ焼きを買うの?みんな、我慢しているのよ。しっかりしなさい。休憩したら、歩くのよ。」村山は、すぐに歩き出した。
えりこは、泣き出した。
満百合とめぐみが追いついて来た。
「どうしたの?えりこちゃん。」と、めぐみが尋ねた。
えりこは、めぐみに水筒を差し出した。
めぐみは気がついた。えりこの水筒が小さい。そして、軽い。そして、水筒に付いている名札の名前が違う。『瀬田りりこ』と書いてある。
めぐみは、えりこに尋ねた。「えりこちゃんの、妹の名前、りりこかな?」
えりこは、こくりと頷いた。
健太郎達、ミラクル9が追いついて来た。健太郎達の親の世代が同僚や仲間な為、同級生になった彼らは自然と仲良くなった。1番誕生日が早く来る健太郎は、リーダーとなり、グループをミラクル9と名乗った。
満百合は、健太郎に尋ねた。「どうする?健太郎。」
「自販機ダメって、非常事態じゃないか。えりこちゃん、顔が赤くなってきたぞ。」
「健太郎。熱中症の症状が、あ、脱水症状が出てるんだ。」と、悦司が言った。
「健太郎。僕らの水をあげよう。それが一番いい。」と、知恵袋役の、おさむが言った。
「私、あげてもいい。」と千香乃が言い、「私も。」と、未玖が言い、「私も。」と、みどりが言った。
「遠足。どうする?どうやって帰る?帰るまで、熱中症にならない?」と、悦子が心配そうに言った。
「理科で、液体の測り方、習ったよね。健太郎、分け合うんだ。」と、おさむが言った。
「そうかあ。『分身の術』だ。みんな、僕の蓋(コップ)に少しずつ入れてくれ。」と、健太郎が言うと、「分身の術!」と言い、満百合が自分の水筒から水を少し注いだ。
「分身の術!」と言い、おさむが自分の水筒から水を少し注いだ。
「分身の術!」と言い、めぐみが自分の水筒から水を少し注いだ。
「分身の術!」と言い、悦子が自分の水筒から水を少し注いだ。
「分身の術!」と言い、千香乃が自分の水筒から水を少し注いだ。
「分身の術!」と言い、未玖が自分の水筒から水を少し注いだ。
「分身の術!」と言い、みどりが自分の水筒から水を少し注いだ。
「分身の術!」と言い、悦司が自分の水筒から水を少し注いだ。
「分身の術!」と言い、最後に健太郎が自分の水筒から水を少し注いだ。
満百合が、えりこの口元に、健太郎の水筒の蓋の水を含ませた。
息の荒い、えりこは、少し微笑んだ。
そこへ、隣のクラスの担任教師である、道上が走って追いついて来た。
誰かが、道上に報せたのだ。道上は、すぐにスマホで119番した。
「村山先生は、どうした?」と、道上は健太郎に尋ねた。
「この子を放り出して、先に行きました。『未必の故意』ですね。」と、おさむが替わりに答えた。道上は、顔をしかめた。
救急車が到着した。「あれ?健太郎君じゃないか。」
救急隊員の藤井は、他の隊員にえりこを任せ、健太郎から事情を聞いた。
救急車には、道上が付き添いとして、同乗した。
午後3時。モールの喫茶店アテロゴ。
「分身の術か、よく考えたな、健太郎。はい、オジサンから、『分身の術』。」
物部と、辰巳と泰子は、ミラクル9のメンバーにスペシャルジュースを出してやった。
健太郎のスマホが鳴動した。「母ちゃん。」「健太郎。どこで、油売ってるの?家に帰るまでが遠足でしょ?・・・なんてね。えりこちゃんは、入院したわ。健太郎達が『命の水』をあげなかったら、亡くなっていたかも知れない、って。それから、鈴木校長から連絡があって、早速『懲戒解雇』したらしいわ。」
「懲戒解雇?」と首を捻った健太郎に、そっと、おさむが「クビ!」と言った。
その後、えりこの入院先のお見舞いの話が暫く続いた。
―完―
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