第5話 タブレットは宝の山
俺はネカフェで夜まで過ごし、午後11時を過ぎたくらいに帰宅した。
すでに嫁と子供は寝室で寝静まっていた。
早速俺は子供のバッグの中を確かめる。
特に隠す感じでもなく、子供のタオルやパーカーの間にタブレットは挟まっていた。
大胆不敵と言うべきか、家捜しした時は全く見向きもしなかった場所だ。
電源を入れると案の定ロックが掛かっている。
一旦タブレットを置いて俺はリビングに仕掛けたカメラの映像を見た。
帰ってきた際の嫁の様子を見ながら暗証番号を確かめる。
画面は映っていなかったが、手の動きから何度か試すとロックは解除された。
中身は証拠、いや宝の山だった。
以前やり取りしていた卑猥な画像を含め、二人の不貞の画像や動画が山ほど入っていた。そしてやはり、連絡は他のチャットアプリを使っていたようだ。
俺は自分のスマホにも同じアプリを入れ、嫁のアカウントでログインする。
向こうが小細工を仕掛けるなら、こちらも同じく汚い手を使わせてもらおう。
間男の電話番号もあったのでそれも控えておいた。
そして画像や動画データを全てコピーしてから俺はタブレットを元の場所に戻した。
◆ ◆ ◆ ◆
翌朝、今日も残業だと伝えてから俺は家を出た。
その日は普段通りに仕事をしたが、明日から三日間有給を使いたいと上司に申し出た。急な事だったので上司は少し驚いていたが、俺の顔を見てなんとなく察したのか
あっさりと了承してくれた。
「深くは聞かんがあまり無理するなよ。あと食欲がなくてもなんでもいい、なんか食っとけ」
そういえば昨日の昼から何も食べてなかった。
今朝も食欲がないと言って朝食に手は付けなかった。
嫁が作った料理を見ると吐き気がしてしまったのだ。
「これやるよ。味わって飲めよ」
そう言って上司はいつも飲んでる栄養ドリンクをくれた。
少しお高めのやつだと以前聞いた事がある。
「ありがとうございます。いただきます」
何気ない優しさが妙に心に染みる。
泣きそうになった顔を見られまいと、俺は頭を下げて自分のデスクに戻った。
そういえば上司も奥さんの浮気が原因で離婚したはずだ。
全ての片が付いたら一度飲みにでも誘ってみよう。
◆ ◆ ◆ ◆
仕事を終え、俺は昨日と同じネカフェへと入った。
昨夜コピーした画像や動画を確認してみる。
そこには情欲に溺れる二人の姿が数多く収められていた。
確認作業の間、俺はなんどもトイレに駆け込んだ。
せっかく上司からもらった栄養ドリンクも便器に流れていってしまった。
最新の動画は昨日撮ったもののようだった。
嫁がベッドの上で電話している様子を間男が撮影したものだ。
電話の相手はもちろん俺。
嫁は何度も人差し指を立てながら「しー」と声に出さずに言っていた。
後ろから間男が嫁の体に触る。
その度に嫁は体をくねらせながら嬉しそうに笑っていた。
そして間男のカメラが近づくと嫁が慌ててタブレットを枕の下に滑らせる。
次第にカメラが揺れ始め、嫁の押し殺すような声が聞こえ始めた。
間男のにやついた顔が目に浮かぶ。
間抜けな旦那を嘲笑ってさぞかし愉快だろう。
動画の中には二人の顔がはっきりと映っているのもあった。
こんな証拠を残すなんて、俺から言わせればおまえらの方が間抜けなんだがな。
俺は全ての動画を丁寧にDVDに焼いていった。
コピーをしている間、嫁達のチャットを確認する。
やはりやり取りはどれも、子供を保育園に送った後から俺が帰宅するまでの時間帯だった。今日も日中は盛んにやり取りをしていた。
『昨日は大丈夫だった?旦那は怪しんでなかった?』
『特になんも言われなかったよ~帰った頃には疲れて寝てたし 笑』
『昨日も激しかったしねw次はまた来週にする?』
『そうだね~でも明日とかでも平気だよ♡』
『ほんとに~?じゃあ明日外回りで時間調整してみる』
どうやら早速、有給を取った甲斐があったようだ。
俺はまた家電量販店に寄って結構高いカメラを購入した。
このところ散財しっぱなしだが、いずれあいつらからきっちりと回収してやろう。
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